富士フィルム社が米ベンチャーのAtara社の細胞治療薬製造拠点を1億ドルで買収を発表
1月26日に富士フイルム株式会社は、米国バイオベンチャーAtara Biotherapeutics(アタラ バイオセラピューティクス), Inc.の細胞治療薬製造拠点を買収することを発表した。買収金額は1億ドルである。
富士フィルム、買収でバイオ医薬品の開発・製造受託事業のさらなる拡大を目指す
富士フィルムはAtara社の細胞治療薬製造拠点を買収で、遺伝子改変細胞治療薬をはじめとする細胞治療薬の受託ビジネスに本格参入し、バイオ医薬品の開発・製造受託事業をさらなる拡大を目指す。買収完了時期は2022年4月を予定している。買収完了後、Atara社の細胞治療薬製造拠点は富士フィルムのグルーブ会社であるFUJIFILM Diosynth Biotechnologies(FDB)の新たな拠点としてスタートする予定だ。
遺伝子改変細胞治療薬について
体外に取り出した細胞に治療用遺伝子を導入し作製した細胞を用いる細胞治療薬。
バイオ医薬品について
バイオテクノロジー(遺伝子組み換え技術、細胞培養技術等)を応用した医薬品。
FUJIFILM Diosynth Biotechnologies(FDB)について
FUJIFILM Diosynth Biotechnologies(FDB)は、英国・米国・デンマークに拠点を有し、抗体医薬品やホルモン製剤、遺伝子治療薬、ワクチンなどあらゆる種類のバイオ医薬品の開発・製造受託を行っている。FDBは、英国のFUJIFILM Diosynth Biotechnologies UK Limited(FDBK)、米国のFUJIFILM Diosynth Biotechnologies U.S.A., Inc.(FDBU)とFUJIFILM Diosynth Biotechnologies Texas, LLC(FDBT)、デンマークのFUJIFILM Diosynth Biotechnologies Denmark ApSで構成されており、FDBKとFDBUは三菱商事株式会社より20%の出資を受けている。
拠点買収により3つのポイントを実現。バイオ医薬品の開発・製造受託事業の成長を加速させる。
富士フィルムのプレスリリースによると、今回の買収により3つのポイントが実現すると考えられている。
1.細胞治療薬分野における一貫した受託サービスを提供
細胞治療薬分野において、プロセス開発から治験薬製造・商業生産まで一貫した受託サービスの提供が可能。Atara社パイプラインは、研究開発が加速している遺伝子改変細胞治療薬などの開発・製造を幅広い顧客から受託することで、迅速な事業拡大を図る。
2.幅広い細胞ニーズに対応した細胞治療薬の受託が可能
富士フィルムの子会社のFUJIFILM Cellular Dynamics(フジフイルム セルラー ダイナミクス)では、iPS細胞由来の細胞治療薬の受託ビジネスをすでに展開。今後は、iPS細胞以外の細胞、自家・他家細胞など、顧客の幅広い細胞ニーズに対応した細胞治療薬の受託が可能になる。
3.最先端治療薬の受託体制をさらに強化
2014年に米国テキサス拠点で遺伝子治療薬CDMO事業を開始し、その後、米国ボストン・英国拠点でも同事業を展開。今回の買収拠点を通じて、大手製薬会社・バイオベンチャー集積地である米国西海岸地域にて細胞治療薬CDMO事業も本格的にスタートさせ、最先端治療薬の受託体制をさらに強化する。
CDMOについて
Contract Development & Manufacturing Organizationの略。生産プロセス開発や安定性試験、治験薬の開発・製造、市販薬の製造まで幅広いサービスを製薬企業などに提供する。
富士フィルム株式会社について
富士フイルムは、写真フィルムなどで培ってきた技術を生かし、「ヘルスケア」「マテリアルズ」「イメージング」の3つの領域で幅広い事業を展開している。特に、ヘルスケア事業ではトータルヘルスケアカンパニーとして「予防」「診断」「治療」の3領域で幅広い事業を展開。アンメットメディカルニーズへの対応や疾病の早期発見、画期的なワクチンや医薬品の開発・製造支援などを通じて、世界の人々の健康に貢献している。
法人名 | 富士フィルム株式会社 |
所在地 | 東京都港区赤坂9-7-3、東京都港区西麻布2-26-30 |
代表(CEO) | 後藤禎一 |
設立 | 2006年10月 |
事業内容 | 医薬品の開発・製造支援 |
HP URL | https://www.fujifilm.com/jp/ja |
Atara Biotherapeutics Inc.について
Atara Biotherapeutics Inc.は「先駆的な科学、チームワーク、卓越性へのコミットメントを通じて、重篤な疾患を持つ患者さんの生活を変革する。」ことをミッションとして掲げており、固形癌、血液癌、自己免疫疾患などの重篤な疾患の患者に革新的な治療法を開発することを目的としている。
法人名 | Atara Biotherapeutics Inc. |
所在地 | 611 Gateway Blvd, Suite 900, South San Francisco, CA 94080, US |
代表 | Pascal Touchon |
設立 | 2012年 |
事業内容 | 創薬(細胞治療薬) |
HP URL | https://www.atarabio.com/ |