近年、機械学習や深層学習を利用した様々な医療機器が販売されている。
AI医療機器の上市には、PMDAによる製造販売承認(いわゆる薬事承認)が必要となる。2018年に内視鏡画像診断支援ソフトウェアが国内初承認を取得してから、現在に至るまで計23点の機器が承認されてきた。
本記事では、これらを承認年とモダリティから5群に分類し、概要・承認日・発売日・クラス分類・解析技術・モダリティ・製造販売業者について紹介する。
表形式のものについては、こちらをご覧いただきたい。
2018年 国内初の薬事承認を取得したAI医療機器は、内視鏡画像診断支援ソフトウェア
内視鏡画像診断支援ソフトウェア EndoBRAIN / サイバネットシステム
概要:大腸粘膜のポリープの画像において、非腫瘍・腫瘍の存在確率を出力する。
備考:2020年には「EndoBRAIN-EYE」「EndoBRAIN-Plus」「EndoBRAIN-UC」も認可されており、本ソフトウェアとセットで内視鏡検査に役立てられている。これらのソフトウェアは、オリンパス株式会社製の超拡大内視鏡「Endocyto」で撮影された大腸の高精細内視鏡画像情報を基に、病変の診断予測を補助している。
承認日 | 2018.12.06 |
発売日 | 2019.03.08 |
クラス分類 | クラスⅢ |
解析技術 | 機械学習(SVM) |
モダリティ | 内視鏡 |
製造販売業者 | サイバネットシステム株式会社 |
2019年 脳MRA画像から診断支援、CT画像から画像検索支援を行うソフトウェアが承認
医用画像解析ソフトウェア EIRL aneurysm / エルピクセル
概要:頭部MRA画像を対象とし、動脈の瘤状の変形に類似した候補点を検出することで、脳動脈瘤の診断を支援する。
承認日 | 2019.09.17 |
発売日 | 2019.10.15 |
クラス分類 | クラスⅡ |
解析技術 | 深層学習 |
モダリティ | MRA |
製造販売業者 | エルピクセル株式会社 |
類似画像症例検索ソフトウェア FS-CM687型 / 富士フイルム
概要:CT画像の注目領域(肺結節, びまん性疾患, 肝臓腫瘤)を解析し、使用施設のデータベース内で類似画像の検索を支援する。
承認日 | 2019.12.25 |
発売日 | 不明 |
クラス分類 | クラスⅡ |
解析技術 | 深層学習 |
モダリティ | CT |
製造販売業者 | 富士フイルム株式会社 |
2020〜2022年(1) 内視鏡画像診断支援ソフトウェアが複数承認
内視鏡画像診断支援プログラム EndoBRAIN-EYE / サイバネットシステム
概要:大腸内視鏡検査中に、リアルタイムで病変検出を支援する。AIが病変を検知すると、音・画面上の色・矩形表示で警告する。
承認日 | 2020.01.24 |
発売日 | 2020.05 |
クラス分類 | クラスⅡ |
解析技術 | 深層学習 |
モダリティ | 内視鏡 |
製造販売業者 | サイバネットシステム株式会社 |
内視鏡画像診断支援ソフトウェア EndoBRAIN-UC / サイバネットシステム
概要:大腸内視鏡検査で得られた腸管画像において、潰瘍性大腸炎の炎症の存在確率を出力する。
承認日 | 2020.04.27 |
発売日 | 2021.02.05 |
クラス分類 | クラスⅢ |
解析技術 | 深層学習 |
モダリティ | 内視鏡 |
製造販売業者 | サイバネットシステム株式会社 |
内視鏡画像診断支援ソフトウェア EndoBRAIN-Plus / サイバネットシステム
概要:大腸内視鏡検査で得られた大腸粘膜の病変の画像を対象とし、非腫瘍、腺腫・粘膜内癌、浸潤癌、それぞれの確率を出力する。
承認日 | 2020.07.15 |
発売日 | 2021.02.05 |
クラス分類 | クラスⅢ |
解析技術 | 深層学習 |
モダリティ | 内視鏡 |
製造販売業者 | サイバネットシステム株式会社 |
内視鏡検査支援プログラム EW10-EC02 / 富士フイルム
概要:内視鏡画像を対象とし、大腸ポリープなどの病変検出支援機能と疾患鑑別支援機能を提供する。
承認日 | 2020.09.02 |
発売日 | 2020.11.30 |
クラス分類 | クラスⅡ |
解析技術 | 深層学習 |
モダリティ | 内視鏡 |
製造販売業者 | 富士フイルム株式会社 |
WISE VISION 内視鏡画像解析AI / NEC
概要:内視鏡画像から大腸前がん病変・早期大腸癌の病変候補部位を検知し、通知音とマーキングで示す。肉眼型が隆起型である病変の診断を支援する。
承認日 | 2020.11.30 |
発売日 | 2021.01.12 |
クラス分類 | クラスⅡ |
解析技術 | 深層学習 |
モダリティ | 内視鏡 |
製造販売業者 | 日本電気株式会社(NEC) |
内視鏡検査支援プログラム EW10-EG01 / 富士フイルム
概要:上部消化管内視鏡検査時に、胃腫瘍性病変や食道扁平上皮癌が疑われる領域をリアルタイムに検出し、枠と報知音で知らせる。
備考:EW10-EC02 (2020年承認) に使用された内視鏡診断支援機能「CAD EYE(キャドアイ)」の対象領域を、さらに拡大した形。2022年度グッドデザイン賞受賞。
承認日 | 2022.09.28 |
発売日 | 2022(年内予定) |
クラス分類 | クラスⅡ |
解析技術 | 深層学習 |
モダリティ | 内視鏡 |
製造販売業者 | 富士フイルム株式会社 |
2020〜2022年(2) COVID-19(★)流行下、胸部画像の異常検出プログラムが複数承認;モダリティはCT→X線
2020年以降、新型コロナウイルス流行の影響もあり、胸部画像から異常所見を検出するAI医療機器が複数承認されている。当初は胸部X線CT画像を解析するソフトウェアが多かったが、徐々に単純X線画像を解析するプログラムが増えてきた形だ。
なお、全ての機器がCOVID-19に対応しているわけではない。本記事では、SARS-CoV-2感染時の画像所見である可能性を表示する機器には★印を付した。他の機器は、結節影・腫瘤影などの検出を支援している。
肺結節検出プログラム FS-AI688型 / 富士フイルム
概要:CT画像を対象とし、肺結節様陰影候補の検出を支援する。
備考:SYNAPSE SAI Viewer向けアプリケーションとして発売。
承認日 | 2020.05.08 |
発売日 | 2020.06.01 |
クラス分類 | クラスⅡ |
解析技術 | 深層学習 |
モダリティ | CT |
製造販売業者 | 富士フイルム株式会社 |
★COVID-19肺炎画像解析AIプログラム InferRead CT Pneumonia / CESデカルト
概要:CT画像を対象とし、COVID-19肺炎に見られる画像所見を有する可能性を 高 / 中 / 低 / 0% の4段階で提示し、関連する領域をマーキングする。
備考:開発企業は、2015年に中国の深圳で創業した医用画像AIエンジン開発会社のInfervision社。
承認日 | 2020.06.03 |
発売日 | 不明 |
クラス分類 | クラスⅡ |
解析技術 | 深層学習 |
モダリティ | CT |
製造販売業者 | 株式会社CESデカルト |
AI-Radコンパニオン / シーメンスヘルスケア
概要:CT画像を対象とし、COVID-19肺炎に見られる画像所見を有する可能性を 高 / 中 / 低 / 0% の4段階で提示し、関連する領域をマーキングする。
承認日 | 2020.06.19 |
発売日 | 2020.06.29 |
クラス分類 | クラスⅡ |
解析技術 | 深層学習 |
モダリティ | CT |
製造販売業者 | シーメンスヘルスケア株式会社 |
★COVID-19肺炎画像解析プログラム Ali-M3 / MICメディカル
概要:CT画像を対象とし、COVID-19肺炎に見られる画像所見を有する可能性を High / Mid / Low の3段階で提示し、関連する領域をマーキングする。
備考:Ali-M3は、Alibaba Cloud社の協力を得て開発された。なお、株式会社MICメディカルは、2021年に株式会社メディサイエンスプラニングに合併された (エムスリー株式会社の子会社どうしの合併)。
承認日 | 2020.06.29 |
発売日 | 2020.06.29 |
クラス分類 | クラスⅡ |
解析技術 | 深層学習 |
モダリティ | CT |
製造販売業者 | 株式会社MICメディカル |
医用画像解析ソフトウェア EIRL X-Ray Lung nodule / エルピクセル
概要:X線画像から肺結節様の疑いがある候補領域を検出する。
備考:製品名は「EIRL Chest Nodule」。
承認日 | 2020.08.20 |
発売日 | 2020.08.28 |
クラス分類 | クラスⅡ |
解析技術 | 深層学習 |
モダリティ | X線 |
製造販売業者 | エルピクセル株式会社 |
★COVID-19肺炎画像解析プログラム FS-AI693型 / 富士フイルム
概要:CT画像を対象とし、COVID-19肺炎に見られる画像所見を有する可能性を 高 / 中 / 低 の3段階で提示し、関連する領域をマーキングする。
備考:SYNAPSE VINCENT向けアプリケーションとして発売。
承認日 | 2021.05.26 |
発売日 | 2021.06.10 |
クラス分類 | クラスⅡ |
解析技術 | 深層学習 |
モダリティ | CT |
製造販売業者 | 富士フイルム株式会社 |
胸部X線画像病変検出(CAD)プログラム LU-AI689型 / 富士フイルム
概要:X線画像から肺結節, 腫瘤影, 浸潤影, 気胸の候補領域を検出し、ヒートマップで表示する。
承認日 | 2021.07.07 |
発売日 | 2021.08.12 |
クラス分類 | クラスⅡ |
解析技術 | 深層学習 |
モダリティ | X線 |
製造販売業者 | 富士フイルム株式会社 |
肋骨骨折検出プログラム FS-AI691型 / 富士フイルム
概要:CT画像上で肋骨の骨折領域・骨折候補領域をマーキングする。2次元画像から3次元画像を構成し、立体的に観察できる機能を提供。
備考:SYNAPSE SAI Viewer向けアプリケーションとして発売。
承認日 | 2021.09.01 |
発売日 | 2021.10.07 |
クラス分類 | クラスⅡ |
解析技術 | 深層学習 |
モダリティ | CT |
製造販売業者 | 富士フイルム株式会社 |
画像診断支援ソフトウェア KDSS-XR-AI-101 / コニカミノルタ
概要:X線画像から結節影, 浸潤影の検出を支援する。
備考:製品名は「胸部X線画像診断支援ソフトウェア CXR finding-i」。従来からコニカミノルタが提供している画像処理「Bone Suppression処理(胸部骨減弱処理)」および「Temporal Subtraction処理(胸部経時差分処理)」との併用が可能。
承認日 | 2021.10.11 |
発売日 | 2021.11.04 |
クラス分類 | クラスⅡ |
解析技術 | 深層学習 |
モダリティ | X線 |
製造販売業者 | コニカミノルタ株式会社 |
★胸部X線肺炎検出エンジン DoctorNet JLK-CRP / ドクターネット
概要:X線画像を対象とし、感染性肺炎に見られる画像所見を有する可能性を3段階で表示し、関連する領域をマーキングする。
備考:ドクターネットは株式会社JMDCの子会社。
承認日 | 2021.12.09 |
発売日 | 2021.12 |
クラス分類 | クラスⅡ |
解析技術 | 深層学習 |
モダリティ | X線 |
製造販売業者 | 株式会社ドクターネット |
★HOPE LifeMark-CAD 肺炎画像解析支援プログラム for COVID-19 / 富士通Japan
概要:CT画像を対象とし、COVID-19肺炎に見られる画像所見を有する可能性を3段階で表示し、関連する領域をマーキングする。
承認日 | 2021.12.24 |
発売日 | 不明 |
クラス分類 | クラスⅡ |
解析技術 | 深層学習 |
モダリティ | CT |
製造販売業者 | 富士通Japan株式会社 |
★COVID-19肺炎解析ソフトウェア SCO-PA01 / キャノンメディカルシステムズ
概要:CT画像を対象とし、COVID-19肺炎に見られる画像所見を有する可能性を 高/低 の2段階で表示し、関連する領域をマーキングする。
備考:製品名は「COVID-19 Analysis」。
承認日 | 2022.06.02 |
発売日 | 2022.09.01 |
クラス分類 | クラスⅡ |
解析技術 | 機械学習 |
モダリティ | CT |
製造販売業者 | キャノンメディカルシステムズ |
2020〜2022年(3) 新たな疾患を対象とするAI医療機器が承認;国内初となる"新医療機器"(☆)も
乳がん診断支援プログラム RN-デカルト / CESデカルト
概要:乳房超音波画像から病変候補領域を検出する。
備考:CESデカルトは、テラ株式会社との間でこのシステムの販売を合意。独占販売権及び権利譲渡を報告していたテラ社であったが、2022年8月に破産手続きを開始した。
承認日 | 2020.11.24 |
発売日 | 不明 |
クラス分類 | 不明 |
解析技術 | 不明 |
モダリティ | 乳房超音波 |
製造販売業者 | 株式会社CESデカルト |
☆nodoca(ノドカ) / アイリス
概要:咽頭画像と体温や自覚症状等をAIが解析することで、インフルエンザに特徴的な所見や症状等を検出する。
備考:AI医療機器の中では国内初の「新医療機器」としての承認例である。
承認日 | 2022.04.26 |
発売日 | 2022.12(予定) |
クラス分類 | クラスⅡ |
解析技術 | 深層学習 |
モダリティ | 新医療機器 |
製造販売業者 | アイリス株式会社 |