MiROHA eConsentがリリース、治験支援のeConsentサービスの現状にせまる

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MiROHA eConsentがリリース、治験支援のeConsentサービスの現状にせまる

2022年4月22日、株式会社MICIN(本社:東京都千代田区、代表取締役CEO:原聖吾、以下MICIN)は、臨床開発における新しいデジタルソリューションを提供する、de-centralized clinical trials(以下、DCT)支援システムMiROHA(ミロハ)の新機能として、MiROHA eConsentをリリースした。(PR times)
この記事では、その他のeConsentサービスや法規制についても調査した。

eConsentとはデジタルツールでの同意取得ツール

eConsent とは、FDA のガイダンスによれば、テキスト、画像、音声、ビデオ、生体認証 デバイス等、複数の電磁的なツールを使用し被験者へ情報を提供し、同意を得る手順のことである。(参考)
eConsent の活用方法として、「eConsent を用いて治験の説明及び同意の署名(電子署名) を行う」場合と「eConsent を用いて治験の説明を行い、同意の署名は紙媒体で行う」場合の2つがある。

MICIN社が新しくMiROHAというeConcentツールを提供開始

MiROHAは、株式会社MICINが提供するオンライン診療機能とeSource(Electronic Source Data:臨床試験の原資料となり得る電子原データ)機能を搭載したDCT支援システム*である。これまで20以上の連携企業・アカデミアとの取り組みにおいて、100施設以上の医療機関および500名以上の被験者が導入し、多くのDCTの実績を重ねている。

今回、被験者中心の臨床試験を実現するための更に価値のあるサービスへの拡充を目的とし、MiROHA eConsentのサービスを開始した。

*DCTとは
DCTとは、分散化臨床試験(Decentralized Clinical Trials)の略である。医薬品の開発の際に医療機関への来院に依存せず臨床試験を行う手法である。DCTは、「患者中心」の概念の浸透やデジタル技術等を活用の浸透により普及しつつあり、DCT支援システムにも注目が集まっている。

MiROHA eConsentは治験の同意取得に使用され、ターゲットは製薬企業やCRO、アカデミアである

MiROHA eConsentは、治験の同意取得を目的としたオンライン上のインフォームドコンセントサービスである。
ターゲットとしては大きく分けて、治験や臨床研究等を行う製薬企業、医薬品の開発を支援するCRO、またはアカデミアの3つを対象に提供されことを想定している。

MiROHA eConsentの導入によりインフォームドコンセント(治験の同意取得)のデジタル化が可能となる

このシステムを導入することにより、診療だけではなく説明同意の遠隔化も可能となるため、臨床試験における遠隔コミュニケーションの手段を広く柔軟に提案し、被験者、医療機関および治験依頼者における価値のあるDCT推進を行うことができる。

MiROHA eConsentの提供するバリューとは?

MiROHA eConsentは治験における説明同意プロセスを医療機関外にいる患者にも実施可能であり、そのため大きく分けて以下の3つのバリューを提供することが期待できる。

  1. 説明同意のための来院負担軽減:治験に参加する際にまずハードルとなるのは、説明同意を行うための来院負担である。説明同意のデジタル化/遠隔化を行うことがで、患者とその家族の都合に合わせた日程調整、遠方からの来院負担の軽減に貢献できる。
  2. 質の高い説明同意のプロセスを実現:患者の理解度を確認できる理解度チェック機能、患者の理解度促進に繋がる補助説明動画のアップロード機能を搭載しており、これらの機能の活用により、質の高い説明同意プロセスの実現をサポートできる。また、版数管理機能により最新の同意説明文書が容易に判別できることも、質の維持に貢献する。
  3. 効果的な被験者組み入れへの貢献:来院負担の軽減により遠方の被験者も含めて、参加可能な被験者層の間口を広げられ、被験者の組み入れの促進に貢献する。

eConsentのサービスは他にどんなものがあるのか(競合事例)

その他のeConsentサービス及びオンライン・インフォームドコンセントのサービスにはどんなものがあるのだろうか。以下に列挙した。

1. 「eConsent」(Caster)

Caster社のeConsentは、臨床試験に用いられるインフォームド・コンセントサービスである。
Caster社が提供するアプリを使用することで、ビデオ通話でオンライン上で説明を受けるところから、署名、アンケート回答まで完結しており、参加する患者の負担が軽減される。
本サービスでは、募集ポータルで参加者を募集し、アンケートで事前スクリーニングを行うことで適切な参加者を選別することができる。同意を受けた後、登録された参加者の患者データは自動的に「Castor EDC」で更新されるため、使用する施設側の負担も大きく軽減される。

2. 「Veeva eConsent」(Veeva Systems)

Veeva社が提供する、「Veeva eConsent」も臨床試験における同意取得を電子化するサービスである。
参加する患者は、「MyVeeva for Patients」アプリケーションを使用することで、自分のデバイスで直接、便利に試験文書にアクセスすることが可能である。治験実施側は、すべての試験で1つのeConsentシステムを使用することで、施設や研究チームの管理負担軽減を望める。

3. 「Medidata eConsent」(Medidata)

Medidata社のeConsentも、臨床試験に用いられる電子的インフォームド・コンセントサービスである。
オンサイト、リモートを問わず患者の同意プロセスを簡素化し、登録プロセスをデジタル化する。さらに、同意取得後は同社が提供する、堅固かつ安全性の高い最先端のEDCシステム「Rave EDC」に被験者データとして反映することで、同意追跡管理全体を改善する。これにより、インフォームド・コンセントのエラーを減らし、施設や研究チームの管理負担を軽減することが可能になっている。

4. 「SmartSignals eConsent」(Signant Health)

Signant Health社のeConsentサービスも、臨床試験をサポートするサービスである。研究内容に合わせてシルバー、ゴールド、プラチナの3つの段階のサービスが選べることが特徴をもつ。
それぞれのサービスに合わせて、同意プロセスは簡素化されたPDFベースの同意書から完全に双方向性のあるマルチメディアまで選ぶことができ、オンサイト、バーチャル、またはハイブリッドなども選択可能になっている。

eConsentに関する国内の法規制について

現状、厚生労働省、経済産業省、文部科学省が定めた「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」に、医学研究等における患者への説明 及び同意取得プロセスについて、電磁的方法(デジタルデバイスやオンライン診療等)を用いることが可能であること及び留意すべき事項について言及されているものの 、治験における該当指針は現時点ではない。

しかし、医薬品の承認申請等に電磁的記録・電子署名を利用する場合は「電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)」、「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律(e 文書法)」、「厚生労働省の所 管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令(厚生労働省令 44 号)」、「医薬品等の承認又は許可等に係る申請等における電磁的記録及び電子署名の利用について(ER/ES 指針)」を、eConsent の利用範囲に応じて留意する必要がある。

上記をまとめると、現状法規制に関して定まった指針がないため、eConsentサービスのターゲットである製薬企業やCRO、アカデミアが採用しずらい状況であるといえる。

京都府立医大6年生。アイリス株式会社のインターン業務、USCPA受験、研究室で論文執筆など医ンタープレナーとして楽しい日常を送ってます。趣味は、F1観戦とサイクリング。グルテンフリー6年目です。(Twitter:@Ogu_Yasuhiro6、Researchmap:https://researchmap.jp/OGURA-Yasuhiro)