(2022.07.21) Buzzreach社がシリーズA総額6.6億円の資金調達を発表
2022年7月21日, 治験領域の業務効率化に取り組むBuzzreach(バズリーチ)社がシリーズAとして総額6.6億円の資金調達を行ったことを発表した。グロービス・キャピタル・パートナーズをリード投資家として、既存のモバイル・インターネットキャピタル株式会社、株式会社ANOBAKAを引受先とした第三者割当増資による調達とのこと。今回の調達により、創業後の累計調達額は10億円を超えたとしている。
Buzzreach社について
Buzzreach(バズリーチ)社は、2017年創業の治験業務効率化に取り組む企業であり、治験業務の中でも医療機関での治験実施のフィジビリティ調査から始まり、治験プロジェクトマネジメント, 被験患者募集, ePROツール, 被験患者の来院スケジュール管理など、治験業務全体を幅広くカバーする事業を手がけている。
(HPより)Buzzreach社は治験業務全体の幅広くカバーする事業を展開している。
創業者の猪川氏はBuzzreachの創業以前は、治験患者募集という類似領域の事業を手がけていたクロエ社(現3Hクリニカルトライアル社)を2009年に共同創業者として立ち上げている。その後2017年に独立するまで同社の成長を推し進めてきた人物である。(*3Hクリニカルトライアル社含む3Hグループは2022年1月にエムスリーに買収されている)
Buzzreach社は直近のコロナ禍でのコロナワクチンの治験・臨床試験需要の拡大に合わせて、コロナワクチン治験の参加患者の募集や、コロナワクチン接種後の副反応情報や健康情報を収集するPHRアプリの展開なども手がけている。2022年7月1日には大阪大学との共同プロジェクト実施の発表・記者会見も行っている。
治験支援市場について
国内ヘルスケア市場の中で治験支援は数少ない収益性が期待できる成長市場
治験支援市場は、国内ヘルスケア領域の中でも数少ない成長産業領域である。大前提として国内ヘルスケア産業の中で収益性の高い市場はあまり多くなく、いわゆるスタートアップのような形態で事業成長を実現できる市場は限られている。
そんな中、治験領域はもともとIT導入・業務効率化に対する取り組みがかなり遅れていた領域であり、かつ大きな市場規模が存在する領域であるため、ITによる業務効率化の市場インパクトは大きなものが期待されている。
特にソリューション面においては、ePRO(electorical Patient Reported Outcome: 電子データによる患者自身に入力してもらう症状データ)や、eConcent(電子的同意: 治験参加時に患者に同意を得る際これまでは対面・書面での同意が基本だった)、DCT(Decentralized Crinical Trial: 分散型治験, バーチャル治験とも呼ばれ、これまで対面が基本だった治験を在宅環境でも実施が出来るようにする取り組み)など、様々な新しい概念のツールの導入や業界としての枠組みが切り替わってきており、まさに伸び盛りの市場だと見られている。
治験支援領域は国内大手の参入や外資の参入も目立つ
一方で、これだけ注目の市場であることから国内大手プレイヤーや外資プレイヤーの参入・シェアの拡大なども目立っている。
国内プレイヤーにおいては、エムスリーが子会社CROや治験くんによる被験患者募集や治験業務サポート及び、DCT領域での支援などもCRO企業の買収や前述した3Hグループの買収も含めて積極的な取り組みを見せている。
(参考: エムスリーが3Hグループを買収の衝撃。DCTへの取り組みがより強固なものに。より)
JMDC社も同様の取り組みを始めており、2021年6月にビッグデータを活用した臨床試験効率化サービスの提供開始を発表している。(2021年6月: JMDCビッグデータを活用した臨床試験効率化サービスを開始 ~本件に関するウェビナーを6月30日に開催~より)
また国内大手企業だけでなく、外資の参入も目立っており、IQVIA, Veeva, Medidataなどグローバルで治験支援事業を展開する大手各社も揃って日本国内にも治験業務効率化のためのソフトウェアソリューションを展開している。
治験支援事業の今後
治験及び臨床試験領域は、治験計画から治験完了までの流れやステークホルダーがとても多く、かなり複雑な領域となっているため1サービス・1ソリューションで業界が大きく変わることはない。様々なソリューションを同時並行して利用しつつ、ステークホルダーの意識も変わっていくことでようやく業界全体の業務効率化が進んでいく様な領域であるため、まだまだこれからも様々なソリューションの登場と浸透が期待されている。
そのため今回資金調達を発表したBuzzreach社の事業成長だけでなく、国内・外資様々なプレイヤーが入り乱れながらこれからも市場環境の変化が起こっていくと考えられる。今後の治験支援の市場動向には引き続き注目が集まる。