GAFAMが仕掛けるヘルスケア戦略-Microsoft編

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GAFAMが仕掛けるヘルスケア戦略-Microsoft編

はじめに

  • GAFMAはヘルスケア投資を加速させています。 2020年は、GAFMAのヘルスケア関連の投資が、相次いで発表された年でした。
  • グーグル(アルファベット)、アップル、フェイスブック、マイクロソフト、アマゾンのIT大手5社がヘルスケア市場への進出を加速させており、それぞれが特定の領域に狙いを定めて動いています。 
  • 病気やコストの増加、医療サービスにもスピードと利便性を求める利用者の意識の変化など、医療を取り巻く環境は変化しており、医療関連組織は対応を迫られています。さらにテクノロジーの導入は、医療機関にとってコスト削減や収入増につながります。
  • デジタルトランスフォーメーション(DX)の本格化が必須となっている米国の医療機関や関連組織にとって、データの蓄積と技術力を持つIT大手5社は魅力的な連携先です。普及が進んできた電子カルテ(EHR)を組み込むために、インフラやIT戦略の再構築も求められています。
  • これらのIT企業によるイノベーションは、医療分野の関係者にとって多くのチャンスを生み出す一方で、既存組織の活動領域を侵食する脅威ともなっています。
  • 今回はGAFMAのヘルスケア戦略の中でもMicrosoftについてみていきます。

サマリー

  • Google         :得意の検索エンジン、AI技術で精密医療の研究開発に活用。 
  • Apple   :臨床研究にウェアラブルデバイスを役立てる取り組みを発展。
  • Facebook    :コンシューマー向けのウェアラブルデバイスと健康情報管理システムの開発
  • Microsoft    :医療機関向けのクラウドサービスに注力。
  • Amazon    :医薬品の宅配、医療用品の配送、遠隔医療など。

Microsoft

以前であればWindows、現在はクラウド会社としてのイメージがあるMicrosoftですが、ヘルスケアでも積極的な取り組みをしています。

Cloud for Healthcare

Microsoftは2020年10月、同社初の業界向けクラウド「Cloud for Healthcare」の一般提供を開始しました。 「Microsoft Teams」の予約アプリはCloud for Healthcareで初めて登場し、医療機関がTeams内でリモート診療のスケジューリング管理、診療行為を実施できるようにしています。対面でのケア提供に慣れている企業を念頭に置いたリモート診療機能を中核に据えています。医療チームのメンバーが現場か、リモートワークで勤務しているかにかかわらず、円滑なコミュニケーションを可能にするツール、患者の病歴や病状に関する情報をオンライン診療や対面診療から単一の包括情報としてまとめ上げ、医師に提示するというものもあります。「Healthcare Bot」サービスは患者のトリアージを支援、必要に応じて診療予約取得、人間のオペレーターに接続機能も有しています。 

Azure IoT Connector for FHIR

Cloud for Healthcareと医療用IoTデバイスの連携を実証するために「Azure IoT Connector for FHIR」のプレビュー版を2020年にリリースしています。医療システムやデータソースの間の相互運用性はかなり以前から問題となっていました。Microsoftはヘルスケアシステム間で個人情報を安全に共有するための標準規格であるFast Healthcare Interoperability Resources(FHIR)を推進しています。FIHRは、AIを用いたアナリティクスや、機械学習を含むユーザーのためのシステムによるヘルスデータの取り込みや処理を容易にすることを目的としています。 Cloud for Healthcareが「Azure IoT」を介してサポートしている機能にも役立つと考えられます。Apple Watch、ウェアラブル型の血圧計、体重計、パルスオキシメーター、糖尿病患者向けの血糖値測定機器などから得られた生体情報をいつでも、どこでも、何からでも安全に正確に抽出できることを目指しています。様々な医療情報の互換を可能とする「Azure API for FHIR」が2020 年 9 月に日本で提供を開始しており、医療画像の取り込み (DICOM) など、機能強化を果たしています。

AI-Rad Companion

zure

医療向けクラウドプラットフォームビジネスで連携しているシーメンスヘルスケア株式会社と協業し、Microsoft Azure を基盤として、AI 技術を活用した診断・治療支援サービス「AI-Rad Companion」を展開しています。「AI-Rad Companion」は、胸部や頭部、前立腺における画像診断の支援や放射線治療の計画に貢献できるサービスです。2021 年 2 月の時点で、約 500 施設への導入準備が完了しています。

パーソナルヘルスレコード (PHR) 分野

TIS株式会社と共に、パーソナルヘルスレコード (PHR) 分野におけるデータ活用の基盤を Microsoft Azure ベースで提供を目指す協業が行われています。医療業界における PHR の標準化を推進してデータの有効活用を促進し、医療・産学官と更に連携を強化していく方針です。医療やその周辺のサービスを充実させ、患者さんの地理的・身体的な負担を軽減していくためにも、個人の健康・医療・介護に関する情報を一元的に保存する環境整備が重要と考えられます。

認知症診断支援AIシステム

AI ベンチャーの株式会社 FRONTEOと医療向け IT の分野で協業し、Microsoft Azure 上で会話型認知症診断支援AIシステムを開発に取り組んでいます。5~10 分の日常会話で、認知症の症状の有無を判断できるソリューション開発を目指しており、2021 年に治験を開始する予定となっています。

Nuance Communications買収

2021年4月にAIによるスピーチテクノロジーを手がける企業Nuance Communicationsを197億ドル(約2兆1800億円)で買収すると発表しました。Nuanceは「Siri」をはじめとする製品の舞台裏でも活躍中ですが、売上高の3分の2近くはヘルスケア業界からのものとなっているようです。この買収はMicrosoftの歴史の中で2番目に大きな規模のもので、医療自然言語への投資を強めていることが明らかです。 Nuanceの製品の1つである「Dragon Ambient eXperience」(DAX)によって、医師と患者の会話をテキストに起こし、医師の診察記録の、患者のカルテ入力に用いることができるようになります。 自動化されたアプローチの推進は、医師の作業の重荷を減らし、患者に集中へのエンゲージメント向上に繋がると考えられます。

複合現実 (MR) を活用したオンライン診療実現への実証実験

順天堂大学との共同研究、複合現実 (MR) を活用したオンライン診療の実現にむけた実証実験。実験では、モーションセンサー付きのカメラ「Kinect」と複合現実ヘッドセット「Microsoft HoloLens」を使い、100 人以上のパーキンソン病の患者に対して遠隔診断を実施したところ、対面診療の代わりとして患者の診断評価に使うことができると判断。今後、離島など遠隔地からの診断や、コロナ禍での感染対策として応用を検討。 オンライン診療には、対面診療と比較すると得られる情報が少ないという課題解決のためのソリューション。。

Teamsの活用

オンライン診療システム ”YaDoc Quick” を提供する株式会社インテグリティ・ヘルスケアと提携。”YaDoc Quick” 内でのオンライン診療時の患者と医療従事者間のビデオ通話に Microsoft Teams を採用しています。また、医薬品企業でこれまで対面で行っていた MR (医薬情報担当者) の医療機関への訪問をMicrosoft Teams を使ってバーチャルにしている場合があります。

【参考文献】

まとめ

  • Microsoftのヘルスケア領域について見てきました。
  • デバイス関連を含めて今後も目が離せません。

Healthtech DB編集部です。Healthtech DBは国内のヘルステック領域に特化したビジネスDBです。日々のヘルステック業界の動向に関する記事作成やウェビナー運営、企業・サービスに関するビジネスDBの構築を行っています。