GAFAMが仕掛けるヘルスケア戦略-Amazon編

投稿日

最終更新日

  • Amazon

GAFAMが仕掛けるヘルスケア戦略-Amazon編

はじめに

  • GAFMAはヘルスケア投資を加速させています。 2020年は、GAFMAのヘルスケア関連の投資が、相次いで発表された年でした。
  • グーグル(アルファベット)、アップル、フェイスブック、マイクロソフト、アマゾンのIT大手5社がヘルスケア市場への進出を加速させており、それぞれが特定の領域に狙いを定めて動いています。 
  • 病気やコストの増加、医療サービスにもスピードと利便性を求める利用者の意識の変化など、医療を取り巻く環境は変化しており、医療関連組織は対応を迫られています。さらにテクノロジーの導入は、医療機関にとってコスト削減や収入増につながります。
  • デジタルトランスフォーメーション(DX)の本格化が必須となっている米国の医療機関や関連組織にとって、データの蓄積と技術力を持つIT大手5社は魅力的な連携先です。普及が進んできた電子カルテ(EHR)を組み込むために、インフラやIT戦略の再構築も求められています。
  • これらのIT企業によるイノベーションは、医療分野の関係者にとって多くのチャンスを生み出す一方で、既存組織の活動領域を侵食する脅威ともなっています。
  • 今回はGAFMAのヘルスケア戦略の中でもAmazonについてみていきます。

サマリー

  • Google         :得意の検索エンジン、AI技術で精密医療の研究開発に活用。 
  • Apple   :臨床研究にウェアラブルデバイスを役立てる取り組みを発展。
  • Facebook    :コンシューマー向けのウェアラブルデバイスと健康情報管理システムの開発
  • Microsoft    :医療機関向けのクラウドサービスに注力。
  • Amazon    :医薬品の宅配、医療用品の配送、遠隔医療など。

Amazon

そして、アマゾンもヘルスケア分野への投資を本格化しています。「アマゾン薬局」、「アマゾン・ケア」、Amazon HealthLake(アマゾン・ヘルスレイク)」、「Amazon Halo(アマゾン・ヘイロー)」などがあります。

従業員向け診療サービス「アマゾン・ケア」全米企業を対象に拡大

https://amazon.care/

アマゾン・ケアは、もともとアマゾンの従業員とその家族向けの医療サービスです。専用アプリを通じて、ビデオ通話・テキストチャットによるオンライン診療が可能なほか、訪問診療や看護も受けられます。アマゾン内でスタートしたのは2019年9月のことでした。そして2021年3月には、このアマゾン・ケアを全米企業を対象に拡大する、と報じられました。これは、他の企業がアマゾン・ケアを従業員のための総合的な福利厚生パッケージの一部として契約することを目指しています。アプリを通じて医師や医療従事者の到着予定時刻が提供されますが、これはアマゾンのアプリが荷物の配送でやっていることとに似ていて、ヘルスケアにも自社の強みを生かしていることがわかります。

AWSによる医療データ関連サービス「アマゾン・ヘルスレイク」

https://aws.amazon.com/jp/healthlake/

アマゾン・ヘルスレイクは、病院、薬局などから医療データを収集、変換、分析し、医療従事者をはじめ保険会社、製薬会社などに提供するもので、2020年末にローンチされました。アマゾン・ヘルスレイクは、AWSの1つの機能、という位置づけです。その特徴は、これまでバラバラにされていた患者に関する大量の医療データに、AIの自然言語処理などを加えることで、整理・構造化する点にあります。異なる形式やシステムで記録・保存・管理されているカルテや検査結果、保険の請求書、画像、会話など、完全性や一貫性を欠いているデータであっても、利用しやすい形で、医療情報を整理抽出できます。また医療データの傾向や異常を特定し、病状の進行状況、臨床試験の有効性、保険料の正確性、その他多くの用途において、従来よりも正確な予測を行うことが可能となります。また、今後はユーザーの健康情報、医療情報をアマゾン・ヘルスレイクに蓄積させたのちに、健康保険など各種の保険サービスへ向かって行く可能性があります。

ヘルスケア&ウェルネス・プラットフォーム「アマゾン・ヘイロー」

https://www.amazon.com/Amazon-Halo-Fitness-And-Health-Band/dp/B07QK955LS?th=1

2020年8月、アマゾンはフィットネス用ウエアラブルデバイス「アマゾン・ヘイロー」を発表し、アメリカでの提供を開始しました。これは、腕に巻く形のリストバンドに、加速度計、温度センサー、心拍数モニター、2つのマイクを内蔵し、ユーザーの健康データを集めるというものです。このデータを解析し、デバイスと連携するアプリにユーザーの健康状態を表示します。計測されたユーザーの個人情報は暗号化され、AWSに転送、保存・管理されます。リストバンドはアマゾンのECで購入可能です、連携するサブスクリプションサービスとあわせて提供されます。主な機能は5つです。運動の強度や時間によってポイントを付与する「Activity」、心拍数や体温から睡眠を分析する「Sleep」、体脂肪率を測定する「Body」、声の状態を計測する「Tone」、最適なワークアウトを利用できる「Labs」です。今後はこれらの身体情報と保険事業やケア事業が連携していくことが予想されます。

オンライン薬局「アマゾン・ファーマシー」 

https://pharmacy.amazon.com/

アマゾン・ファーマシーは、処方箋のオンライン薬局です。オンラインでの処方薬、医薬品の注文、購入、処方箋の管理、各種保険の登録などが可能です。2020年11月にスタートしました。 もともとアマゾンは、2018年に医薬品ネット通販・処方箋デリバリーサービスのピルバックを買収していました。アマゾン・ファーマシーはピルバックの配送サービスを利用し、慢性病患者向けに薬を30日周期で自動配送するオプションを提供しています。薬剤師による24時間年中無休の電話相談も可能となっています。18歳以上のアマゾン会員が対象で、プライム会員なら、無料配送や提携薬局での処方薬購入に際しての割引などの特典があります。

薬の管理を支援する音声認識AI「アレクサ」のスキル 

https://developer.amazon.com/en-US/alexa/alexa-skills-kit/get-deeper/custom-skills/healthcare-skills

音声認識AI「アレクサ」を通じて、薬の管理を支援するスキルを薬局チェーンGiant Eagle Pharmacyと共同開発しました。「アレクサ」のスキルを通じて、患者の処方箋に基づいて服薬のリマインダーを設定し、必要に応じて補充用の医薬品の注文も可能です。 このスキルは当初、約200店舗を展開するGiant Eagle Pharmacyの薬局チェーンの顧客に提供されていましたが、現在はほかの薬局にも拡大しています。また、薬局向けに投薬及び供給管理サービスを提供するOmnicellと提携し、音声による補充リクエストツールを共同開発しています。

【参考文献】
https://aws.amazon.com/jp/healthlake/
https://amazon.care/
https://pharmacy.amazon.com/
https://developer.amazon.com/en-US/alexa/alexa-skills-kit/get-deeper/custom-skills/healthcare-skills
https://toyokeizai.net/articles/-/433225
https://www.amazon.com/Amazon-Halo-Fitness-And-Health-Band/dp/B07QK955LS?th=1

Healthtech DB編集部です。Healthtech DBは国内のヘルステック領域に特化したビジネスDBです。日々のヘルステック業界の動向に関する記事作成やウェビナー運営、企業・サービスに関するビジネスDBの構築を行っています。