GAFAMが仕掛けるヘルスケア事業-Apple編

投稿日

最終更新日

  • Apple

GAFAMが仕掛けるヘルスケア事業-Apple編

はじめに

  • GAFMAはヘルスケア投資を加速させています。 2020年は、GAFMAのヘルスケア関連の投資が、相次いで発表された年でした。
  • グーグル(アルファベット)、アップル、フェイスブック、マイクロソフト、アマゾンのIT大手5社がヘルスケア市場への進出を加速させており、それぞれが特定の領域に狙いを定めて動いています。 
  • 病気やコストの増加、医療サービスにもスピードと利便性を求める利用者の意識の変化など、医療を取り巻く環境は変化しており、医療関連組織は対応を迫られています。さらにテクノロジーの導入は、医療機関にとってコスト削減や収入増につながります。
  • デジタルトランスフォーメーション(DX)の本格化が必須となっている米国の医療機関や関連組織にとって、データの蓄積と技術力を持つIT大手5社は魅力的な連携先です。普及が進んできた電子カルテ(EHR)を組み込むために、インフラやIT戦略の再構築も求められています。
  • これらのIT企業によるイノベーションは、医療分野の関係者にとって多くのチャンスを生み出す一方で、既存組織の活動領域を侵食する脅威ともなっています。
  • 今回はGAFMAのヘルスケア戦略の中でもAppleについてみていきます。

サマリー

  • Google         :得意の検索エンジン、AI技術で精密医療の研究開発に活用。 
  • Apple   :臨床研究にウェアラブルデバイスを役立てる取り組みを発展。
  • Facebook    :コンシューマー向けのウェアラブルデバイスと健康情報管理システムの開発
  • Microsoft    :医療機関向けのクラウドサービスに注力。
  • Amazon    :医薬品の宅配、医療用品の配送、遠隔医療など。

Apple

iPhoneやApple Watchといった世界中で使用されているデバイスを基盤に、ヘルスケア事業を立ち上げようとしています。モルガン・スタンレー証券はアップルのヘルスケア事業の売上が、2021年に150億ドル(約1兆5,600億円)、2027年までに最大3,130億ドル(約32兆5,520億円)になると予測しています。これは2019年度のアップルの総売上の2,745億ドル(約28兆5,400億円)を超える数字であり、「アップルはヘルスケアの企業に変身する」と予測しているような状況です。

Fitness+

https://www.apple.com/jp/newsroom/2020/09/apple-fitness-plus-a-personalized-fitness-experience-comes-to-life-with-apple-watch/

2020年後半からオーストラリア、カナダ、アイルランド、ニュージーランド、イギリス、およびアメリカでリリースされています。Fitness+は、自宅などの好きな場所でインストラクターの指導を得ながらさまざまな運動を体験できる新しいサービスです。料金は月額9.99ドル(約1030円)または年額79.99ドル(約8280円)です。「Apple Watch」を使用して画面にさまざまな測定値を表示し、ユーザーがフィットネスの目標を達成できるように支援してくれます。運動はサイクリング、トレッドミルでのランニングとウォーキング、筋力トレーニング、体幹トレーニング、ローイング、ダンス、ヨガ、高強度インターバルトレーニング(HIIT)、クールダウンの10種類が用意されています。利点としてはインストラクターがさまざまな経歴をもつ多様なグループで構成されていること、心拍数と「リング」を大画面で確認できること、Apple Watch、iPhone、Apple TVがシームレスにつながっており音楽・生体情報が利用可能なことです。欠点としては、Apple Fitness+を利用するには「Apple Watch Series 3」以降が必要でiPhoneも所有していることが前提になること、運動機器は別途必要なこと、屋外のウォーキングやランニング向けのコーチングもないこと、ソーシャルネットワークとも連携していないことなどがあげられます。オンラインフィットネスメーカーとして先行企業のPeloton 社や Calorie Technology 社と比較すると未熟な部分がありますが、今後の動向は注目されます。

Apple Watchの機能拡張

https://support.apple.com/ja-jp/HT211851

Apple watchは日を追うごとに機能が拡張していっています。現在可能なことを列挙すると、高心拍の通知、低心拍通知、不規則な心拍の通知、心電図アプリケーション、転倒の検出、血中酸素濃度の測定、睡眠アプリケーション、騒音通知アプリケーション、手洗いタイマー、座りすぎ防止タイマー、月経の周期記録とリマインダー、呼吸アプリ(マインドフルネス関係)などできることは多数あります。以下に今までのApple watchの歴史も列挙しておきます。

  • 2015年4月 Apple Watch発売。歩数・歩行距離、心拍数、睡 眠データなどを計測。 
  • 2018年9月 Apple Watch向けECGアプリケーションが米FDAから承認を受けた。「クラスII」の「一般(OTC)用心電計ソフトウェア」に該当するという判断結果。 
  • 2020年9月 「Apple Watch」に搭載されたアプリ、「家庭用心電計プログラム」「家庭用心拍数モニタプログラム」を医療機器として承認。承認対象は「時計(Apple Watch)ではなく、プログラム(アプリ)」であり、承認するにあたり、前例がなかったため新設。Apple Watchの心電図機能は、家庭用の医療機器として本来であればクラス Ⅱと呼ばれる分類に当てはまる。クラスⅡであれば、本来、販売店には営業所管理者と呼ばれる資格を持つスタッフを配置する必要。しかし、今回「家庭用心電計プログラム」「家庭用心拍数モニタプログラム」というジャンルが新設され、この新ジャンルに該当する場合、営業所管理者は不要とされた。
  • 2020年9月 Apple Watch Series 6では、「Blood Oxygen Wellness(血中酸素ウェルネス)」の測定が可能に。情報提供のみで一般的なウェルネスとフィットネスのためだけに使えますとすることで医療機器認証の必要性を回避。

Apple Watchの臨床研究:Apple Heart Studyなど

https://www.apple.com/newsroom/2017/11/apple-heart-study-launches-to-identify-irregular-heart-rhythms/

Apple Heart Studyが最も代表的なものとしてあげられます。Appleと米スタンフォード大学医学部の共同開発した「Apple Watch」向け医療アプリ「Apple Heart Study」の臨床研究です。40万人が参加した研究調査結果を2019年3月に発表しています。Apple Watchの心拍数脈拍センサーからのデータで心房細動を検出できるかどうかを判断するために実施しています。心房細動は自覚がないことが多く、放置しておくと脳梗塞や心不全などに繋がるため早期の検出が有効な可能性がある。 Apple Watchのセンサーで検出する心臓のリズムに異常があると、Apple WatchとiPhoneの両方でプッシュ通知を表示し、iPhoneでの無料の動画相談を受けられます。この研究で、心臓のリズム異常の通知を受信したのは参加者の0.5%、アプリから通知を受け心電図パッチで追跡調査した参加者の34%が心房細動と診断、参加者の0.5%にAfが診断されており使用した機器の診断アルゴリズムは陽性適中率0.71でした。課題点としては、頻発する期外収縮では陽性適中率を下げること、Af診断率が1%未満でありコスト・パフォーマンスの観点から検討が必要なこと、持続が短いAFをどう治療するのか、抗凝固療法の要否についてはデータが欠如していること、Af以外の不整脈に対する治療の可否などが挙げられます。次には、Apple Women’s Health Studyがあります。Appleとハーバード大学T.H.Chan公衆衛生大学院および国立衛生研究所(NIEHS)との提携による、女性の月経周期と婦人科疾患に焦点を当てた初の大規模な長期研究です。この研究によって、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、不妊症、骨粗しょう症、妊娠、更年期などのスクリーニングや危険性評価に役立つ情報を得ることができます。2021年3月上旬一部データを報告しています。他にはApple Heart and Movement Studyがあります。Appleとブリガム·アンド·ウイメンズ病院およびアメリカ心臓協会との提携による、心拍数および身体機能の兆候(歩行速度、飛行中または階段昇降など)と入院、転倒、心臓の健康、生活の質などとの関連性に関する総合的な研究で、健康的な運動の促進と心臓血管の健康改善を目標としています。最後にApple Hearing Health Studyがあります。これは、長期的なデータ収集を通じて、日々の騒音が聴覚にどのような影響を与える可能性があるか把握するという世界初の研究です。この研究データは、「Make Listening Safe」の取り組みへの貢献として、世界保健機関(WHO)とも共有されます。2021年3月上旬一部データを報告しています。

LumiHealth:シンガポールとのパートナーシップ

https://www.apple.com/jp/newsroom/2020/09/singapore-and-apple-partner-on-national-health-initiative-using-apple-watch/

2020年9月カリフォルニア州クパティーノ — シンガポール政府とAppleは、Apple Watchを利用して健康的な活動や行動を促進するためのパーソナライズ可能なプログラム「LumiHealth」に関するパートナーシップを発表しています。テクノロジーを活用して国民や企業にメリットをもたらすための国家的な取り組みである「スマートネーション」構想の一環として、シンガポールの健康増進委員会がAppleと共同でデザインしたものです。医師と公衆衛生の専門家チームの協力の基に作られたLumiHealthは、テクノロジーと行動学的知見を利用し、Apple WatchとiPhoneを通じてシンガポール国民の健康維持とウェルネスチャレンジの達成を促進します。LumiHealthアプリケーションは、ユーザーのプライバシーとセキュリティに最も重きを置いて設計されています。現在、App Storeで予約受付を開始しており、2020年10月下旬より2年間プログラムが提供されています。

その他

2021年1月に、米BiogenがAppleと共同で、認知症や神経疾患の潜在的な 症状を有する人の認知機能低下の監視に、Apple Watchと iPhoneをどのように役立てるかを調査する研究を開始するとプレスリリースを出しています。
iPhoneでHealth Records関連については、米国では、現在500を超える施設がiPhoneでHealth Recordsを利用可能となっています。apple Healthアプリ内のHealthRecords機能は、イギリスのOxford University HospitalsとカナダのWomen’s College Hospitalは、両国で初めて、この機能を患者が利用できるようにしています。今まで患者の医療記録は複数の場所で保持されていたため、患者は各医療提供者のWebサイトにログインして、自分の健康情報を手動でまとめる必要がありました。Health Recordsは、医療機関と患者のiPhoneを直接接続し、ユーザーが複数の機関にわたるアレルギー歴、検査結果、服薬状況、バイタルなどを確認可能となっています。
買収関連としては、2016年は医療データ関連プラットフォームを提供していたGliimpseを買収、2017年には睡眠モニタリングデバイスを販売するBedditを買収しています。2018年後半に喘息関連のモニタリングデバイスを開発していたTueo Healthを買収しています。
リアル店舗への展開についても計画自体は進めているようですが、あまり上手くいってない状況のようです。Appleは自社で採用した医師により、Appleの経営する診療所で独自のプライマリーケアを提供する計画を立てていたおり、2016年ごろから取り組んでいた様子でした。この計画を進めるため、Appleは従業員に医療を提供していた診療所を買収し、臨床医、エンジニア、製品デザイナーなどからなるチームを結成していました。自社デバイスで生成されたデータを、自社所属の医師が提供するリモートまたは対面の診療と結びつけた医療サービスの提供し、更にはサブスクリプション型のヘルスプログラムを通じて、医療機関や他の国にフランチャイズ展開することを計画しています。しかしながら、まだ実現には至っていない状況のようです。

参考文献

https://www.apple.com/jp/newsroom/2021/06/apple-advances-personal-health-by-introducing-secure-sharing-and-new-insights/
https://www.apple.com/jp/newsroom/2020/09/singapore-and-apple-partner-on-national-health-initiative-using-apple-watch/
https://www.apple.com/jp/newsroom/2019/09/apple-announces-three-groundbreaking-health-studies/
https://www.apple.com/newsroom/2017/11/apple-heart-study-launches-to-identify-irregular-heart-rhythms/
https://www.ebm-library.jp/circ/trial/doc/c2018038.html
https://www.wsj.com/articles/apple-struggles-in-push-to-make-healthcare-greatest-legacy-11623832200
https://www.biogen.co.jp/ja_JP/news-insights/japanaffiliatenews/2021-01-21-news.html
https://www.apple.com/newsroom/2020/10/health-records-on-iphone-available-today-in-the-uk-and-canada/
https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf18/DEN180044.pdf
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T210129I0010.pdf
https://www.pmda.go.jp/files/000155683.pdf

Healthtech DB編集部です。Healthtech DBは国内のヘルステック領域に特化したビジネスDBです。日々のヘルステック業界の動向に関する記事作成やウェビナー運営、企業・サービスに関するビジネスDBの構築を行っています。