GP (General Practitioner) とはどんなお医者さん?
GP(General Practitioner)の定義
GP(General Practitioner)とは地域密着した医師であり、日本語では「一般医」「家庭医」「総合診療医」と訳される。患者は体の不調があった際、その部位や種類に関わらずまずGP(General Practitioner)に罹る。
主にイギリスを始めとしたEU諸国におり、最初にGP(General Practitioner)の代表例であるイギリスの医療制度に注目したいと思う。
イギリスのGPとは日本におけるかかりつけ医のこと
イギリスでは1人につき1人GP(General Practitioner)がつき、自己負担なしで診療を受けることができる。これは1948年に設立されたNational Health Service(NHS)が税金で医療費を負担しているからだ。
基本的にはまずGP(General Practitioner)の診断を受け、専門的な診断が必要と判断された際に専門病院や大学病院に紹介される。
つまり日本でいうかかりつけ医のような役割を担っていることがわかる。
しかしながらかかりつけ医とは給与体系に大きな違いがあり、日本の出来高払いとは異なって診療報酬は人頭払いであるため、利益を産むために「医療処置を行わなければならない」という圧迫感なしに診察を行うことができる。
GPの良さとは「ゲートキーパー」と「重複通院の防止」
GPの良さ①: 大病院に患者を配分する「ゲートキーパー」としての役割
GP(General Practitioner)の大きな役割の一つとして、「ゲートキーパー」が挙げられる。GPが治療できる疾患は治療し、専門的な治療が必要か判断することで限られた「専門・大学病院の圧迫を防ぐことができる。約9割の健康問題はプライマリケアで対応できるとされており、より効率良く国全体に医療を提供するためにGPが鍵となることがわかる。
GPの良さ②: 病院を跨がず診療ができる
ハシゴ受診、重複検査、重複投薬を防げることもメリットの一つだ。現在の日本のようなシステムでは疾患別に異なる医療機関で受診する必要があり、その選択も患者に委ねられている。よって、どの医療機関にかかるか、その責任が患者にあり負担となっていることがわかる。
GP制度の導入により、このような課題を防ぐことができより統合的な観点でその患者を熟知している医師が診断を行うことができる。
そのほかにも
・遠隔診察を取り入れているケースが多く、オンラインでの診察を受けることができる
・対話も重視した診察により、根本的な解決に導きやすい
などの長所が挙げられる。
日本でもGPは導入されるのか?
高齢化社会に伴ってGPのような医師への需要が高まる
日本においても高齢化社会が進む中で、「一貫した医療」の重要性が高まっていることからGPのような医師の需要が高まっている。
慢性疾患を患う人が増加しているが、患者が自身の各疾患について異なる医療機関で継続的に通うことが難しかったり、病気だけでなく患者それぞれの社会的背景から病因を見つけたりすることに起因する。
実は、日本の社会システムとイギリスGPの相性はあまり良くない
しかしながら、イギリスのGPシステムをそのまま日本に取り入れることは、
・フリーアクセスの浸透
・研修システムの違い
により難しい。
イギリスの医療システムでは、大学病院等にGPの紹介なしに受診することは難しい。一方で日本では医療のフリーアクセスによって、誰でも自由に医療機関を受診することができる。
このようなシステムが浸透している日本において、それを制御することに対する抵抗を持つ人は少なくないだろう。
前述の通りフリーアクセスによる患者の責任の増幅は問題点であるが、いつでもどこの病院でも受診することができる、という現状を変えることは現実問題として難しいのではないだろうか。
社会保険構造の違いによって、日本ではGP文化が浸透しにくい可能性が高い。
また、イギリスでは後期研修の際に専門医療か家庭医療かを選択する。このような教育システムによって、国民一人ひとりにGPがつけるだけの人材を確保している。しかし日本では圧倒的に専門医の数が多く、総合診療医の数が少ないのが現状だ。
こよってれらの背景・状況を変えることは難しく、イギリスのGPシステムをそのまま導入することによる日本の医療状況改善の見込みは薄いのではないかと考える。しかしながら医療システムの改善が必要なことは明白である。よって今の「かかりつけ医」システムの応用など日本仕様に調整した医療システムの導入が求められているのではないかと考える。
日本と似ているフランスにおけるGP制度
かつて日本と似た状況にあり、GP制度を導入している国としてフランスが挙げられる。
フランスでは、2005年より担当医の登録制度が誕生した。家庭医だけでなく専門医も多いフランスではどちらの医師でも担当医として登録することができる。
また、フリーアクセスが守られ、かかりつけ医にまず罹ることが義務ではないが、かかりつけ医以外の医師の診療を受けた際には3割の自己負担が5割となってしまう。
このようなシステムは、日本の医療制度構築において参考になるのではないかと考える。
今後の日本の動きは?
日本で現在GPに最も近い存在である「かかりつけ医」について、コロナ禍においてかかりつけ医不足が顕著となってしまったことなどを受け、岸田首相も何度も言及している。
かかりつけ医として登録制で医師に患者を割り当てることで、医師の患者一人一人に対する責任感の向上や患者の医療機関選択における責任の軽減を見込んでいる。
しかしながら、日本医師会や厚生労働省は反対・法案見送りとするなど法案の施行は不明瞭だ。国会提出予定の「全世代社会保障法案」にはかかりつけ医機能に関する制度整備について盛り込まれているため、今後の動向に注目していきたい。
参考文献
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK015XN0R01C22A2000000/
https://www.med.or.jp/nichiionline/article/010627.html
http://sogoshinryo.jp
https://www.yomiuri.co.jp/choken/kijironko/ckmedical/20220328-OYT8T50101/
https://www.tmd.ac.jp/grad/fmed/information/column_why.html
https://diamond.jp/articles/-/49150
https://ncs-gakkai.jp/about_ncs/これからの地域医療のあり方-・・・-gpx2のススメ/
https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/europe/uk.html
https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=1142
https://www.kansai-u.ac.jp/Keiseiken/publication/seminar/asset/seminar11/s192_1.pdf