商社が取り組むヘルスケアビジネス:4大商社のヘルスケア事業まとめ

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商社が取り組むヘルスケアビジネス:4大商社のヘルスケア事業まとめ

商社の取組み領域から俯瞰する、ヘルスケア市場

ヘルスケア産業は2030年には国内で37兆円、海外で525兆円まで市場規模が拡大すると考えられている(政府「日本再興戦略」)。継続的な市場拡大の動きを商社が見逃すはずもない。ここ数年で、商社企業は様々な領域でのヘルスケア事業に手を伸ばしてきている。

本記事では4大商社(*1)がそれぞれ国内外の医療・ヘルスケア分野のどのような事業に出資しているかを分析することで、国内外のヘルスケア事業における商社の展開を考えていく。

(*1):三井物産、三菱商事、住友商事、伊藤忠商事

4大商社のヘルスケア事業への出資案件リスト

まずは、4大商社それぞれの出資先事例についてまとめていく。

社名

案件名

概要

三井物産

CMHヘルスケア

中国を中心とした病院事業、ヘルスケア周辺事業

IHH Healthcare Berhad

アジア最大級の民間病院グループ

コロンビアアジアグループ

アジアの中間層向け最大手病院グループ

株式会社NOBORI

医療画像管理クラウドサービス事業

アカウンタブル社

米国における看護師などのヘルスケア人材派遣サービス

パナソニックヘルスケアホールディングス株式会社

糖尿病患者向けの血糖値測定器の開発・製造・販売

PT チャンピオン・インドネシア

インドネシアの製薬企業への医薬包材を供給

ダビータ・ケア社

アジアにおける人工透析事業

Medica Asia Limited

アジア・オセアニア地域における医療者向け情報プラットフォーム

The Delta Companies

米国における医師・理学療法士などの医療人材の派遣・紹介サービス

アジバデム社

トルコにおける最大規模の民間病院グループ

エムビーエス株式会社

国内の医薬品の製造、販売

インテグレイテッド・ヘルスケア・ホールディングス社

シンガポール、マレーシア、インドにて病院を傘下に持つ、アジア最大手の病院グループ

三菱商事

エム・シー・ヘルスケア株式会社

国内における医療材料の管理、調達、保守、販売

株式会社ケアサプライ

国内における福祉用具レンタル、生活支援物販、食事サービスの提供

住友商事

PM Care社、Health Connect Holdings社

マネージドケア事業(民間医療保険会社,医療機関と連携し医療費の抑制を行う。)

株式会社インテグリティ・ヘルスケア

オンライン診療システムの提供

Genomedia株式会社

ゲノム医療情報ベンチャー(ゲノム医療情報の収集や管理を行う)

DeSCヘルスケア

利用者の健康データの管理・情報提供を通じた予防医学サービス

サスメド株式会社

治療用アプリ開発

株式会社地域ヘルスケア連携基盤(CHCP)

地域包括ケアシステムの基盤を構築することにより、医療・介護事業者への経営支援を行う。

トモズ株式会社

1993年に全国に先駆けて開業した調剤併設型ドラッグストア

株式会社eWeLL

訪問看護事業者向け業務支援システム「iBow」(アイボウ)の開発・運営

伊藤忠商事

エイツーヘルスケア株式会社

全ゲノム解析を含めた医薬品開発支援

株式会社フェーズワン

医療機関、製薬企業等に対するデジタルを活用したプロダクトやサービスの開発、運用、コンテンツ制作

株式会社ベルシステム24ホールディングス

マーケティング領域のDX推進(DX: デジタルトランスフォーメーション)

ウェルネス・コミュニケーションズ株式会社

健診予約手配および清算代行業、健康情報のクラウドサービス事業

株式会社KAKEHASHI

調剤薬局向けの電子薬歴システム

株式会CureApp

疾患治療用プログラム医療機器開発

株式会社クリンタル

日本最大の医師・クリニック検索サイト

株式会社FiNC

オンラインダイエット家庭教師事業

商社各社の出資の特徴

三井物産: アジアの医療機関・医療資材を中心にしたバリューチェーンの構築

アジアにおける病院経営

アジア最大規模の民間病院グループに出資し経営に参画している。IHH Healthcare Berhadをはじめとして、国外のアジアの民間病院グループは民間企業が運営している例が見られる。上場していない医療法人が運営する病院とは異なり、一般企業が参入する障壁が比較的低い。アジア全体で今後のヘルスケア領域の市場規模が拡大することが見込まれるため、国外での病院経営が活発化すると考えられる。

アジアにおける医薬品・医療機器の製造・流通の確立

医薬品やその周辺資材の製造に出資することで病院経営だけでなくアジアの医薬品市場の開拓も行う。

米国をはじめとする国外での医療人材派遣事業

世界最大の医療市場である米国では長期的な人口増加の一方、高齢化も進んでいる。今後ヘルスケア人材需要も高まっていくと考えられている。人材の需給のミスマッチやスキルギャップの解消に挑んでいくと考えられる。また、医療者向けポータルサイト運営事業に出資することで医療人材のネットワーク構築にも参入している。

新規医療機器・治療薬の開発・販売

国内外の医薬品開発、製造、販売、流通に出資することで医薬品市場への参入を試みていると考えられる。

三菱商事: 医療・福祉領域の医療資材の流通網の整備

国内における医療資源の管理、調達、流通

高齢化が進む国内において介護器具や医療機器などの医療資源の流通に参入すると思われる。

住友商事: 地域医療・オンライン診療を中心にした医療サービス圏の構築

オンライン診療システム

オンライン診療の普及・システム機能の拡充を目指すインテグリティ・ヘルスケアに出資をしている。オンライン診療が保険適応になったことから、在宅の患者の継続的な診察に活用されていく。

地域の医療・介護事業者の経営支援事業

医療従事者向け業務支援システムの開発、医療データの管理、医療事業者への経営支援をオンライン上でおこなう。システム面からヘルスケア業界の進出に取り組む。

医薬品・医療機器の開発

医療技術の開発に出資することにより、新規医薬品領域に参入する。

国外のマネージドケア事業

行政主導の保険制度が整っていない国において、医療費の管理、抑制のためのシステムを発展させていく。

伊藤忠商事: 医療データを活用した医療現場のDXの推進

医療サービスのDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進

調剤薬局の薬歴電子化、医師向け情報コンテンツの配信、診療外業務のオンライン上のアウトソーシングなど、情報や作業をデジタル化することで医療の効率化を図る。

新規医薬品開発

ゲノム医療を活用した新規治療・検査技術の開発を行う。

商社が現在注力している領域は?

4大商社のヘルスケア領域の出資例を見てきた。現在これらの商社が注力しようとしているヘルスケア領域は以下の5つであると考えられる。

  • アジアを中心とした海外での医療機関の経営
  • 国内、海外での医療機器・医薬品の製造・販売・流通
  • 海外での医療人材のネットワークの獲得
  • 新規医薬品・医療機器の開発
  • オンライン診療をはじめとした医療のDXの推進

もちろん、各社それぞれの領域選定での違いはあるものの、商社が得意な流通部分を抑えつつ、手堅いビジネス領域の展開をしていることがわかる結果となった。

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