JMDCがリアルワールドデータ株式会社の子会社化により医療データ事業を強化

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JMDCがリアルワールドデータ株式会社の子会社化により医療データ事業を強化

JMDCによるリアルワールドデータ株式会社の子会社化の概要

2022年7月12日, 株式会社JMDCは電子カルテデータ由来のRWD(リアルワールドデータ)を取り扱う、リアルワールドデータ社を子会社化することを発表した。買収額は非公表。子会社後の株式保有比率(議決権所有比率)は、92.67%となる。

JMDC社は今回の子会社化によって、臨床試験における患者リクルーティングを初めとする臨床試験に伴う医療機関における業務の効率化や、がんなどの製薬企業からのニーズが高い領域における疫学的アプローチのエビデンスとしてより提供価値を高めることが可能としている。

参考: https://ssl4.eir-parts.net/doc/4483/tdnet/2156384/00.pdf

リアルワールドデータ社について

リアルワールドデータ社は、京都に本社を置く電子カルテ由来の医療データ関連事業を行う企業である。会社名の通り、医療機関の電子カルテの中にあるデータから医学研究に利用可能なRWD(リアルワールドデータ)に関するデータベースの構築と、そのデータベースを活用した疫学研究などを行った事業を展開している。

JMDC社による開示資料によれば、直近3期の売上高は5億 ~ 6億を推移しているが、営業利益は直近2期で赤字となっている。

売上高や営業利益に関する情報だけを見ると、大きく成長している企業という風には見えないが、リアルワールドデータ社は業界内ではとても評価の高い企業となっている。特にRWDの構築とその研究また関連する研究者コミュニティには著名なメンバーが揃っており、日本のリアルワールドデータ市場の先駆者的企業である。

リアルワールドデータ社は現在、大規模医療機関を中心とした225施設から得られる2440万人分のRWDを有しており、また162の自治体とのネットワークも保有している。今回の子会社化により、JMDC社はそうした強力な事業アセットを取得することになる。

RWD(リアルワールドデータ)とは何か?

RWD(リアルワールドデータ)とは、広義としては電子カルテ内の診療情報データや、ウェアラブルデバイスなどから取得されたアクティビティデータ・バイタルデータの事を指し、臨床研究や医薬品マーケティングへの活用が期待されている。電子カルテデータ由来のデータは狭義のRWDに分類され、特に価値が高いものとされている。

一方で、RWDを事業活用するためには様々なハードルが考えられる。1つは医療機関内の電子カルテからデータ抽出部分である。大規模な医療機関ほどオンプレミスの環境下に電子カルテを設置しており、また医療機関毎に導入している電子カルテメーカーが異なる点や、電子カルテメーカーとの交渉が必要になる医療機関も存在することで、電子カルテからのデータ抽出は非常に根気のいるプロセスとなっている。(時間・エンジニアリング・コストいずれの面においても)

RWDを事業活用する上でのもう1つのハードルが、構築したそのRWDが臨床研究を実施するのに値する医療データベースであるかどうかを検証するバリデーション研究というものが必要になる点である。

構築したRWDのデータの母集団に偏りがないか?患者の疾患定義が研究活用するのに適した定義になっているか?など様々な観点から医療データベース自体の品質の評価を第三者が行い、そのDBの価値が認められ始めて、臨床応用が可能なデータベースとなる。

今後のRWD市場およびJMDC社の事業について

こうしたいくつかの事業上のハードルがあることを考えると、参入障壁は高く、事業実施可能なプレイヤーも限られている市場である。

そのため、JMDC社がリアルワールドデータ社を子会社化したことは、日本のヘルスケア市場の情勢に少なからず影響を与えるものだと考えられる。

JMDC社はすでに製薬企業向けに臨床研究・治験の業務プロセスの改善に関する事業や、レセプトデータを中心にした医療DBを活用した製薬企業向けの事業も保有しており、マネタイズで重要になる顧客接点や事業構造は持っており、その価値を大きく向上させる最後のピースを手に入れたことになる。今後のJMDC社の医療データ事業にますます注目が集まる。

株式会社ポテック代表取締役 / ヘルスケア領域の新規事業立ち上げ支援を中心に、スタートアップから大手企業までプロダクトマネジメント支援やビジネス構築支援、コンサルティング支援などを行っています。