JMDCの勢いが止まらない。企業価値はこの9年で約200倍にまで増えている。2013年、経営危機に陥っていたオリンパスは、JMDCを含む医療関連企業をノーリツ鋼機に売却した。内視鏡に経営資源を集中投下したいオリンパスと医療分野を強化したいノーリツ鋼機の思惑が重なった。ノーリツ鋼機による買収の際は企業価値が約20億円だったが、近年の時価総額はそれをはるかに上回る4000億円付近を推移している。(参考)なお2022年2月にノーリツ鋼機がオムロンへJMDCの株式33%を売却したいため、現在JMDCはノーリツ鋼機の連結子会社からは外れている。(参考)
JMDCの事業について確認!
JMDCは2002年に創業した会社で、ヘルスビッグデータ活用サービスを中心に事業を展開する会社である。2021年3月期の売上高は167億円で前年比38%の増加、営業利益は36億円で前年比22%の増加である。
MDCは現在、大まかに3種類の事業を展開している。①レセプトデータなどのヘルスビッグデータ活用サービス②遠隔読影を中心とする遠隔医療サービス③調剤薬局支援の3つである。このうち最も業績に貢献しているのはヘルスビッグデータで売上においては約60%、EBITDAそにおいては約75%を占めている。
①ヘルスビッグデータ活用サービスについてはさらに3つ細分化することができる。まずひとつ目は製薬企業や保険企業向けのものである。JMDCが提供するデータを、製薬企業は薬剤の価値を高める解析、保険会社は商品開発などに活用している。2つ目は保険者や生活者向けのもので健康保険組合向けサービスとPep Upを展開している。レセプトや処方履歴などの情報を集積し、医療費抑制の施策立案、健診受診勧奨や重症化予防のほか、特定保健指導事業も行なっている。3つめは医療提供者向けで、医療機関へのコンサルティング、ファイナンスなどを行なっている。
JMDCの過去5年の買収企業リスト
2017年と2022年は該当無し
2018年
企業名 | 事業内容 |
株式会社ドクターネット | 診断画像の遠隔読影(ウェブサイト) |
株式会社ユニケソフトウェアリサーチグループ | 保険薬局や薬剤師を支えるレセコン、電子薬歴、医薬品データベース等のメディカルヘルスケアソリューション(ウェブサイト) |
株式会社クリンタル | 医師検索、健康相談サイト(ウェブサイト) |
2019年
企業名 | 事業内容 |
有限会社エムアイ・コミュニケーションズ | 医療裁判、障害認定に関する鑑定サービス(ウェブサイト) |
2020年
企業名 | 事業内容 |
ミーカンパニー株式会社 | 医療機関、調剤薬局、介護事業所のオープンデータを統合したデータベース「SCUEL」の提供(ウェブサイト) |
エヌエスパートナーズ株式会社 | 資金調達ニーズに応えるための診療報酬 債権ファクタリングに加え、オペレーション改善、マーケティング・集患、採用支援など経営改善を「実装」するコンサルティングサービス(ウェブサイト) |
株式会社 flixy | AI受診相談(診療科と受診のタイミングが分かる)、ウェブ問診(ウェブサイト) |
株式会社医薬情報ネット | 学会データベース事業(学会開催情報、学会演題情報)、医療用医薬品マーケティングサポート事業(ウェブサイト) |
株式会社ハビタスケア | 糖尿病の体質リスク評価と生活習慣リスク評価をもとに、一人ひとりに合わせた予防アクションを提案(ウェブサイト) |
データインデックス株式会社 | 医薬品情報データベース。(ウェブサイト) |
2021年
企業名 | 事業内容 |
株式会社アイシーエム | 床数400床以上の大規模病院を中心に国内70以上の医療機関に対して、病歴、薬歴、検査歴などのカルテ・診療データを集約し薬剤管理指導文書を自動作成するシステムを提供(ウェブサイト) |
アンター株式会社 | 医師同士の学習プラットフォーム。医師同士のQ&A、医師同士のスライド共有など(ウェブサイト) |
今後JMDCの買収活動はどうなるか
2019年時点で、JMDCは以下のように事業を網羅していた。(成長性に関する説明資料 より)
コンサルティング(エヌエスパートナーズ)、医療画像(ドクターネット)、活動量把握(Fitbitの日本での独占販売、オムロンとの資本業務提携)、電子カルテなど、図の白い部分はすでにほとんど網羅は達成している。逆に残っているのはゲノムくらいである。何か新たな分野を開拓するのではなく、既存の事業分野を強化していくのだろう。
加えて、JMDCに関する直近のニュースを見てみると以下の通り3つの傾向が読み取れる
- ヘルスケアデータ収集の加速、予防プラットフォームの構築
- 2022年2月オムロンとの資本業務提携(参考:オムロン株式会社との資本業務提携に関する説明資料)
- 2022年3月ウェアラブルデータを活用したメンタル疾患予兆検知アルゴリズムに関する論文の発表(Pepupや健康保険組合から得たレセプトデータと合わせて予防医療に活用)
- 医師との接点構築、医師の囲い込み
- 医師の学術活動を迅速に分析するクラウドサービス 「Doctorna(ドクターナ)」を提供開始(2021年12月)
- アンターの買収(2021年8月 JMDCにとって最も直近の買収)
- 薬局に関するデータ収集
- 2021年11月 薬局データの提供開始
- 2021年12月 保険薬局に向けた「AI 医薬品需要予測」をリリース
- 2021年12月 健康年齢の保険薬局向け提供開始
経営の意思決定について、上記3つのような傾向が読み取れる。そのほか、オムロンとの提携には海外進出の意図もあるのではないかと推測もできる。実際オムロンは約60%の売り上げを海外であげている。加えて、JMDCは上記オムロン株式会社との資本業務提携に関する説明資料にて、海外進出にも言及している。
以上、直近5年の買収リストまとめでした。今後もJMDC社の買収は大きくヘルスケア業界を盛り上げていくことに違いないでしょう。