漢方ECの市場動向ー中国市場への越境EC

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漢方ECの市場動向ー中国市場への越境EC

近年の漢方販売市場の動向

漢方とはそもそも奈良時代以降に日本に伝来した中国起源の伝統的な医学の薬である「中薬」をもとに、日本で発展したものある。年々漢方製剤等の市場は拡大しており、2019年時点で6年前に比較し販売金額が約27%増加した。(注1)また、Report Oceanによると、2027年には世界市場が1219億米ドルに到達すると考えられている。

注1: https://www.intage-healthcare.co.jp/news/release/d20201119/ より

コロナ禍における漢方薬市場

コロナ禍においては、風邪の罹患率の低下による漢方風邪薬の需要が減少したため漢方薬市場規模は2021年度96.7% (注2) と若干低迷した。しかしながら、ストレスや疲労にアプローチする漢方の需要は高まっており消費者の注目も集まっている。また、最近ではダイエットに対する効能も若い女性を中心に注目されているため、漢方薬局に足を運んで処方してもらうよりも、手軽に体の不調に合わせた漢方を求める消費者が増加していると考えられる。

注2: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000072329.html より

オンライン化の傾向

2019年時点で漢方薬のEC化率は14%(注3)とまだまだ低く、自社製造しない限りは参入ハードルは低いと考えられる。
また、2021年8月1日に「改正薬機法」が施行され、医薬品のオンライン購入が可能になった。市販の漢方薬のみならず医薬品漢方薬のECも可能となったのだ。コロナ禍での感染リスクの懸念も相まって、医薬品ECは全体として拡大している。本記事では異なる事業形態をとる漢方ECを紹介する。

注3:https://www.him-news.com/news/view/4580 より

LINE公式アカウントによる健康相談を通じた販売

わたし漢方

https://www.watashikampo.com より

概要

「しなやかに、生きるための知恵を気軽に。」をキャッチフレーズに利用者一人ひとりに合わせた漢方薬を処方するサービスである。20代から40代女性をメインターゲットとし、公式LINEにて妊活や自律神経の乱れ、代謝などの悩みを自動送信で問診し、漢方アドバイザーが最適な漢方を処方する。最短翌日届く。

運営企業

わたし漢方株式会社は2016年に創業し、丸山優菜氏が代表取締役を務め、水沼未雅氏が代表薬剤師、武田卓氏が監修医師を務める。「わたし漢方」の運営を行なっている。

参考文献

https://www.watashikampo.com

YOJO

https://shop.yojo.co.jp より

概要

PharmaX株式会社は、医師の辻とエンジニアの上野の2名で2018年12月に創業した"次世代型オンライン薬局"を運営するスタートアップです。 エンジニア×薬剤師を中心にOne Teamでプロダクト開発する体制を構築しています。 自ら運営する薬局にテクノロジーを積極的に活用することで、患者UX向上と薬剤師の働き方改善の両方を創出し、なめらかで個別最適化された医療体験を実現することを使命としています。

運営企業

+kampo

概要

「生活+kampoで、かろやかに、美しく。」、「あなたが元気だと、みんなが幸せ。自然治癒力を高めて、あなたを強くする漢方を、もっと身近に。」をテーマ・コンセプトとして20-50代女性をターゲットに運営している。LINEを用いたオンライン問診をもとに担当薬剤師が処方した漢方薬を購入することができる。単品購入も可能であるが長期的な服用を推奨しており、定期購入を行うと、「+コンシェルジュサービス」と呼ばれる体調の変化や疑問・不安を定期的に連絡しながらよりサポートを受けられるサービスを展開している。

運営企業

pluskampo株式会社は2021年に設立され、薬剤師である笹森有起氏が代表を務める会社である。+kampoを運営している。

参考文献

https://www.pluskampo.jp 

オンライン診療による漢方のサブスク販売

CLINIC FOR

https://www.clinicfor.life/telemedicine/kampo/ より

概要

CLINIC FORが運営するオンライン漢方処方サービス。様々な年代で不定愁訴に悩む人をターゲットとする。アプリを使用せず、15分のオンラインビデオ通話(通話のみも可)での診察を行う。その後利用者のニーズに合わせた漢方薬を処方し、最短翌日に到着するような仕組みだ。月額5280円〜から利用でき、毎月処方された薬が配送される定期配送である。

運営企業

医療法人社団エムズは2019年に設立され、主にクリニックフォアグループの病院9院やオンライン診療の運営を行なっている。

参考文献

https://www.clinicfor.life/telemedicine/kampo/

おうち病院

概要

「健やかな毎日を送りたいあなたに漢方のある生活」をスローガンにチャットを利用した「オンライン漢方相談」とビデオを通話を用いた「オンライン漢方外来」を展開。経過を踏まえた処方を行え、希望すれば医師への相談を行うことも可能だ。2022年9月28日現在リニューアル中につき利用することはできない。

運営企業

株式会社アナムネは2014年に設立し、「おうち病院 オンライン医療相談サービス」などのオンラインヘルスケアプラットフォームの開発・運営を行なっている。

製薬企業によるECサイト立ち上げ

Kracie

https://kamposhop.kracie.co.jp より

概要

クラシエが運営する漢方のオンラインショップであり、クラシエが発売している漢方を購入することができる。60秒で行える簡単な体質自己診断で体質に合った漢方を提示するサービスもある。

運営企業

クラシエホールディングス株式会社は、1887年に創業した「東京錦商社」が前身である。東京錦商社はさらに2007年に「カネボウ」から社名を変更し、現在はコスメティックス、薬品、食品事業などを展開している。

参考文献

https://kamposhop.kracie.co.jp
https://www.kracie.co.jp/company/info/

海外展開している企業

DAYLILY

https://daylily.com.tw より

概要

台湾発の女性向け漢方ブランド。利用者を「Sister」とし、ライフスタイルに寄り添うよう、漢方そのものではなく茶葉や化粧品に配合し販売している。もともとは台湾にある漢方薬局から始まり、2019年から日本での実店舗販売を開始した。現在オンラインでも購入することが可能である。

運営会社

DAYLILY JAPAN 株式会社は2018年に設立した。親会社は台湾でMoe Kobayashi氏、Yi-Ting Wang氏、Takeshi Kawano氏が創業したDAYLILY TAIWAN社であり、当社は日本支社である。女性向けに漢方ライフスタイルブランド「DAYLILY」・ヘルスメディア&ブランド「Daylily Healthology」の運営を行なっている。

参考文献

https://daylily.com.tw

ステラ漢方

https://www.stella-s.com より

概要

漢方を用いた「なごみアイ」や「肝パワーE+」健康食品・サプリメントをオンライン販売している。「人々の健康のお役に立つこと」を使命とし、担当スタッフ制度と呼ばれる利用者一人ひとりに担当スタッフを設ける制度や、長期的な利用による効果実感のための定期的な「アフターサポートサービス」を行うことで利用者の生活に寄り添っている。台湾でも2018年から事業を展開している。

運営会社

ステラ漢方株式会社は2010年に創業し、濵中正己氏が代表を務める。漢方関連の健康食品・化粧品等の通信販売を行なっており、2020年には2商品がモンドセレクション金賞を受賞した。

参考文献

https://www.stella-s.com

日本の漢方メーカの新しい動き

 日系企業の越境ECでは、中国への輸出が最も多くその額は2兆1382億円に上る。(注4)阿里巴巴社が運営するTMALL GLOBALやKoala越境ECプラットフォームとして注目され、日系事業者がより手軽に中国へ事業展開ができるようになった。マツモトキヨシや花王はこの方法で中国進出している。日本製品は中国での信頼度が高く、ゆえにその売れ行きは好調で中国消費者への越境ECは日本が一番多い。また、新型コロナウイルスにより健康食品の売れ行きが伸びている。

 アジアにおいては漢方生産量の8割以上を中国が占め、日本は1割ほどである。しかしながら中国より厳格な基準で販売している日本の漢方は、中国のものよりも高品質であると注目され、数年前の「爆買い」のように中国をはじめとした海外からの需要が存在する。
 
 日本企業にとっても、日本では薬事法によって厳格な規制があるのに対し、中国では規制が緩く効能に対する直接的な言及の表示が可能であったり、日本では医薬品とされるものが中国では食品として販売できたりする。ゆえに中国は好条件な市場であると考えられる。

 2018年には医療用漢方大手であるツムラが中国の大手保険会社・中国平安保健グループと提携し中国に合弁会社である平安津村有限公司を設立した。その他にも中国拠点として、津村(中国)有限公司をはじめとした関連会社を4社中国に持ち、本格的な中薬業界への参入を行なっている。

 中国・国家級漢中経済技術開発区主催、日中経済協会後援のもと日中企業が医療産業において協力していけるよう「漢中市 日中介護・健康ビジネスカンファレンス2021」が開催されツムラが登壇するなど日中の協力が図られた。新型コロナウイルスによって健康意識が高まっていく中、今後漢方薬市場の中国での拡大が期待される。

注4:https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220812005/20220812005.html より

参考文献

https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/yakuyou/attach/pdf/190130sinnpojiumu-13.pdf
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000072329.html
https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/feature/00009/052700112/
https://www.jadea.org/houkokusho/yakuyou/documents/R3yakuyou_tokai_kink_k01.pdf
https://www.intage-healthcare.co.jp/news/release/d20201119/
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000907567.pdf
https://s-cubism.jp/dx_omo_trend/5528
https://www.mcsg.co.jp/kentatsu/health-care/12562
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000072329.html
https://www.him-news.com/news/view/4580
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ22I13_S7A920C1TJ1000/
https://www.yubari-tsumura.co.jp/about/group/index.html
https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220812005/20220812005.html
https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/dspace/bitstream/10291/22513/1/keieironshu_69_4_169.pdf
https://www.alibaba.co.jp/service/tmall/
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/0f325ff0aaf3c1b8/20210012.pdf
https://rundo.co.jp/wp-content/uploads/2021/11/201204foodkaihatsu.pdf
https://project.nikkeibp.co.jp/bpi/atcl/column/19/062800187/

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