医療データにはどんなものがあり、どのように利活用されているのか?

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医療データにはどんなものがあり、どのように利活用されているのか?

近年データヘルス改革が推進されており、医療データ利活用が注目されている

厚生労働省は大規模な健康・医療・介護の分野を有機的に連結したICTインフラを2020年度から本格稼働させるためにデータヘルス改革を推進している。取り組む背景として、予防医療の促進や生活習慣病対策、新たな治療法の開発や創薬、医療経済の適正化、介護負担の軽減や介護環境整備の推進等を進める上で個人の医療データは最適だからである。また令和4年6月7日、「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太方針2022)が閣議決定され、その中で「全国医療情報プラットフォームの創設」、「電子カルテ情報の標準化等」、「診療報酬改定DX」の取組を行政と関係業界が一丸となって進める方針が発表された。このような流れで、今後医療データの利活用に対する理解が必要であるが、そのベースとなる医療データについての理解も不可欠である。本稿では、それぞれの医療データとはどのようなもので、主なデータの流れ、活用方法、関連プレイヤーについて簡潔に説明して行く。

医療データの種類と利活用の方法

レセプトデータ

レセプトデータとは、医療機関が発行する「診療報酬明細書」である。診療報酬明細書には「入院」「外来」「歯科」「調剤」の4種類がある。入院や外来、歯科は傷病名に対する医療行為データを、調剤では傷病名に対して処方した医薬品データが記載される。

主なデータの流れ
医療機関 (レセプトコンピューター)→ 健保/国保, 審査機関が取りまとめ → 健保支援事業者が活用

データを活用することでできること
- 医療機関の経営分析
- 健保の加入者の疾病構造・費用構造
- 加入者の未来の医療費発生リスク
- ペイシェントジャーニー分析
- 医薬品のメーカーごとの売上シェア

データを主に取り扱うプレイヤー
株式会社データホライゾン

DeSCヘルスケア株式会社(DeNAの子会社)

株式会社JMDC

株式会社PREVENT

メディカル・データ・ビジョン株式会社 

電子カルテデータ

電子カルテから得られるデータであるが、診断フロー別に問診データ、検査・診断データ、処方データなどに分けることができる。レセプトデータが診療報酬等の会計管理を主に目的としているのに対して、電子カルテは医療情報の管理を目的としている。

主なデータの流れ
医療機関(電子カルテ)→データ活用事業者

データを活用することでできること
- 医師の臨床研究
- 治験時の患者リクルーティング
- 医療機関の経営分析

主なデータ活用事業者
リアルワールドデータ株式会社

TXP Medical

DPCデータ

DPCとは「Diagnosis Procedure Combination」の略称で、入院患者の病名、症状、行われる治療内容に応じて、入院医療費を計算した結果として生まれるデータである。レセプトデータとの違いとして、手術・治療の費用や研究に特化している点がある。DPCを扱うのは厚生労働省から定められた一部のDPC対象の大病院であるため、大病院、重症患者、入院患者について分析できることがデータの特徴である。

主なデータの流れ
DPC対象病院(電子カルテ、レセプトコンピューター)→厚労省/審査支払い機関/事業会社

データを活用することでできること
- 特定疾患における医薬品のメーカーごとの売上シェア
- 重症疾患における臨床研究
- 大病院での経営分析

主なデータ活用(事業)者
メディカル・データ・ビジョン株式会社


株式会社グローバルヘルスコンサルティングジャパン
企業と大学病院との研究連携(千葉大、神戸大、名古屋大)

健康診断データ

定期健診、特定健診、がん検診、骨粗しょう症検診などの健康診断で得られるデータで、重症化予防のために利活用できるデータとして注目されている。

主なデータの流れ
健診事業者 → 企業 or 健康保険組合(健診の実施母体)

データを活用することでできること
- 個人向けの疾病リスクの提示
- 自治体/企業での疾患の傾向
- 雇用者の重症化予防

主なデータ活用事業者
株式会社JMDC

株式会社iCare

リアルワールドデータ

リアルワールドデータは複数のデータが構造的に蓄積されたデジタルデータである。個別のデータとしては患者登録(patient registry)、保険データベース(急性期入院医療に係る診断群分類別包括)、評価のデータ(Diagnosis Procedure Combination - DPC データ)、特定健診・レセプト情報、介護レセプト情報など)、電子カルテ情報、などがある。

主なデータの流れ
医療機関(レセプトデータ、電子カルテ、介護等) → 医療データベース

データを活用することでできること
- 医師の臨床研究
- 治験データの収集
- 医師の診断・治療の効率化
- 重症化予防

主なデータ活用(事業)者

NDB
MID-NET
NCD
KDB

企業
株式会社JMDC

メディカル・データ・ビジョン株式会社

DeSCヘルスケア株式会社(DeNAの子会社)

リアルワールドデータ株式会社

医療画像

MRI画像、CT画像、X線画像、超音波画像、胃カメラなどの体の部位の画像などが医療画像としてある。これらの画像はPACS(医療用画像管理システム)などに保管されおり、近年では蓄積されたデータとAIを掛け合わせることで診断支援機器の開発が進んでいる。

主なデータの流れ
医療機関(画像機器)→医療機器メーカー/プラットフォーム

データを活用することでできること
- 遠隔診療
- 疾患、感染症等の診断支援

主なデータ活用事業者
株式会社Splink

株式会社オプティム

株式会社エムネス

エルピクセル株式会社

IoTデータ

IoTは「Internet of Things」の頭文字をとった言葉で、「モノのインターネット」意味である。つまり、IoTデータとはウェアラブル機器やスマホ等の物についているセンサーから収集したデータである。歩数、体重、睡眠時間、体温、血圧など様々なデータを集めることができる。

主なデータの流れ
計測機器→医療機関/保険会社

データを活用することでできること
- 健康管理
- 糖尿病・高血圧などの疾患予防、疾患管理
- 不眠症・偏頭痛などの治療

主なデータ活用事業者
サスメド株式会社

メドピア株式会社

株式会社CureApp

PROデータ

PROとは「Patient Reported Outcome(患者報告アウトカム)」の略語である。これまで治験の効果はデータに基づいた客観的な判断軸で評価されてきたが、被験者の主観的な症状にも注目されるようになって活用されているデータである。スマホ、タブレット、パソコンなどで機器で報告されたものをePRO(電子患者報告アウトカム)という。

主なデータの流れ
患者(PHR/ePRO)から生み出されるPRO→医療機関/製薬会社

データを活用することでできること
-患者の満足度を含めた治験
-ワクチン接種後の体調モニタリング

主なデータ活用事業者
株式会社Buzzreach

株式会社Welby

まとめ:医療データにはどんなものがあり、どのように利活用されているのか?

本稿ではそれぞれの医療データがどのようなもので、主なデータの流れやデータ活用可能性、活用事業者について見てきた。冒頭でも述べたように、厚生労働省は医療のDX化を積極的に進めており、医療ビッグデータの利活用される機会が今後急激に増えると考えられる。読者の皆様にも、上記の医療ビッグデータを用いてどのようなビジネスの創生・ソリューションの提供ができるか?について是非考察していただきたいと思う。

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