医療機関向けSaaS市場展望

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医療機関向けSaaS市場展望

はじめに 医療機関向けのSaaS市場のプレイヤーが少しずつ増えてきています。 これまでは、医療機関向けのシステム関連市場は国内の大手ITベンダーを中心にした電子カルテ市場によって構成されてきました。 しかし、昨今医療機関向けのSaaSサービスなどで、電子カルテ以外の部分での参入が増えてきています。 本稿では救急・地域医療連携・病棟支援・手術支援領域の新興の医療機関向けサービス提供事業者について紹介していきます。

救急領域

株式会社アルム

事業概要

  • 様々なサービスを行なっている会社ですが、今回はその中でも救急領域系サービスである「Join」について説明します。サービス内容について簡単に説明すると「医療関係者が、セキュリティの保たれた環境下で、コミュニケーションをすることを可能としたアプリ」です。
  • 夜勤帯の医師不足、専門医師への相談ハードルの高さ等の課題が医療現場ではあり、そこへの解決ソリューションとして生まれたと推測されます。
  • 夜間休日などに院外にいる医療者間のコンサルテーションツールとしての活用や、救急患者が別の病院へ移動となる際に行う病院間連携や情報共有などに利用されています。
  • ビデオ通話やスタンプ機能も搭載した文字チャット機能など多様なコミュニケーションツール、病院カルテシステムと連携し画像も使用可能、集中治療室等の厳密な管理を要する状態でのリアルタイム動画配信、セキュリティへの配慮等の特徴があります。

実績

  • Joinは日本においてプログラム医療機器として日本薬事クラスⅡ認証され、保険適応も得ています。2019年報告時点で12ヶ国450の医療機関に導入されています。
  • Allm製品は世界8カ国(米国、ドイツ、アラブ首長国連邦、ブラジル、チリ、台湾、マレーシア、ルワンダ)に拠点を持ち、23カ国へ医療ICTソリューションを提供しています。Join以外にも、Join triage、team、Kaigo、Kangoなどのソリューションを生み出しています。

会社概要

  • 2001年創業、東京に本社があり、代表は坂野 哲平氏です。「すべての医療を支える会社(All Medical)」として、「Shaping Healthcare」をコーポレートメッセージに掲げ、医療・福祉分野におけるモバイルICTソリューションの提供しています。
  • 医療関係者間コミュニケーションアプリ「Join」を始めとした医療ICT事業では、グローバル展開に積極的に取り組んでいます。2021/04に出したプレスリリースではシリーズAとして総額約56億円の資金調達を完了しています。

引用、参考文献

  • 企業HP https://www.allm.net/
  • 2019 年度医工連携事業化推進事業 成果報告書 「病院前救急医療 ICT システムの事業化・海外展開」

TXP Medical株式会社

事業概要

  • 種々の事業の中から、今回は「NEXT Stage ER」について取り上げます。サービス内容について簡単に説明すると「カルテ入力業務支援と研究支援を両立する統合プラットフォーム」です。
  • 救急の医療現場では臨床業務とカルテ記載などの事務業務が複雑に入り混じっていること、臨床データの蓄積が難しいことなどの課題解決を目指していると推測されます。NEXT Stage ER は、大病院の救急外来に特化したシステムで、臨床現場における効率的な患者情報記録、スタッフ間の情報共有、研究用データ蓄積を実現しています。
  • 医師や看護師の情報入力はNEXT Stage ERに集約、業務上の情報共有や台帳作成、研究データの蓄積はNEXT Stage ERで実施し、電子カルテメーカーに関わらず導入可能となっています。

実績

  • NEXT Stage ERは32の病院に導入され、その中の24の病院では実際に現在稼働しています。いずれの導入病院も都道府県では救急車搬送台数が上位の病院です。
  • 以下の大学病院とも共同研究パートナーとなっています
    • 東京大学 (次世代病理情報連携講座 病理レポートの構造化解析)
    • 大阪大学 (眼科学講座・救急医学講座 音声コマンドによる医療情報記録)
    • 山口大学 (工学部 へき地のオンライン診療と医療データ二次利用)
    • 宮崎大学 (総合診療医学講座 総合診療・問診)
    • 北海道大学 (集中治療科 心電図画像データを用いた重症患者予後予測)
    • 島根大学 (救急外傷センター 救急隊外傷患者搬送・災害対応クラウドシステム)
    • 東北大学 (高度救命センター 院内急変およびドクターカーのアプリケーション)
    • 信州大学 (高度救命センター 院内急変予測アルゴリズム)。

会社概要

  • 2017年創業、代表取締役は園生 智弘氏です。「複雑性の高い医療現場にテクノロジーを導入し、データに基づく意思決定を当たり前にする」をVisonとしています。
  • 代表取締役が救急専門医/集中治療専門医であり、生の医療現場から出てきた課題解決を目指しています。急性期医療データシステム(NEXT Stage ERシリーズ)の開発と提供 を事業の主軸に、医療Ai開発や医療プラットフォーム事業も手がけています。得られたデータの解析や臨床研究を行うリサーチチームを擁している点が特徴的です。

引用、参考文献

株式会社T-ICU

事業概要

  • 遠隔相談システム「リリーヴ」について説明します。サービス内容について簡単に説明すると「集中治療医および集中ケア認定看護師が24時間待機し、いつでもどこでも急性期診療をサポートする」というものです。
  • 集中治療室とは救急搬送後の重症患者さん、大きな手術を受けた後の患者さんを管理する部屋のことです。その集中治療室で専門的なマネージメントが可能な集中治療専門医の不足という現場課題の解決を目指したサービスです。言い換えるとサービスを通じて提供される医療の質向上と医療従事者の労働環境改善を目標としています。
  • サービス導入まで2ヶ月程度とスピーディーに行え、個人情報にはガイドラインに準拠する形で配慮されています。

実績

  • 2021年3月現在合計32病院で導入、利用されています。以下受賞歴があります、
  • カタパルト・グランプリ優勝(ICCサミット FUKUOKA 2020) 、Microsoft Innovation Lab Award 2019最優秀賞 、2019年経済産業省主催ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト優秀賞。

会社概要

  • 2016年創業、兵庫県に本社があり、代表取締役は中西 智之氏です。代表が救急専門医、集中治療専門医でもあり、「全ての病院に集中治療医を」を理念に掲げて事業展開をされています。
  • 事業内容としては、遠隔での救急・集中治療に関連するサービスおよびシステムの提供、救急・集中治療に関するスタッフトレーニング、病院におけるコンサルテーション(医療安全等)を行なっています。2021/01のプレスリリースではBeyond Next Venturesなどから総額1.53億円の資金調達が完了したと報告があります。

引用、参考文献

バーズ・ビュー株式会社 BIRD’S View

事業概要

  • 救急医療管制・意思決定支援システム e-MATCHについて解説します。一分一秒を争う災害・救急医療の現場の全体像をリアルタイムにとらえ、救急医療管制と、意思決定の支援についての研究とサービス開発を行うサービスです。
  • 救急車で患者を運ぶ救急救命士と病院の医療者の間でコミュニケーションエラーや情報伝達遅延があり、たらい回しや搬送に時間がかかるという課題を解決するために生まれました。他にも可搬型陰圧クリーンドーム、医療現場で使える薬剤情報検索アプリ『麻酔と救急のために』も開発中です。

実績

  • 公立豊岡病院但馬救命救急センターや奈良県での導入があります。

会社概要

  • 2012年創業、東京都に本社があり、代表取締役は夏井 淳一氏です。「情報による鳥の視点で見わたし、1人でも多くの命を救いたい」をキーワードとしています。救急医療管制・意思決定支援システム「e-MATCH」の開発に取り組んでいます。業務課題の発見や実態調査を基に、行政や医療機関における医療 ICT の選定と定着について、既存サービスや自社サービスの垣根なく、最適な ICT 導入をサポートもしています。システムを導入するだけでなく、システム導入を通じた救急医療の質の向上とアウトカムの改善を目指しています。資本金はe-MATCHの設計に携わった医療者、研究者の自己資金のみを元としています。

引用、参考文献

地域医療連携

Medup株式会社

事業概要

  • 病院向け地域連携強化サービス「foro CRM」 について解説します。foro CRMはDPC対象病院に特化した、医療分野での関係構築・マーケティング・データ分析の専門家による伴走と連携先関係管理ツールを組み合わせた、地域連携強化サービスです。
  • DPC対象病院とは厚生労働省から急性期病院として必要な多くの条件を満たしている病院に認められるもので、「包括評価方式(DPC)」という、国が定めた病名と診療行為の組み合わせによる約1,700種類の包括点数から選択する計算で医療費が一括で計算されます。
  • 現場レベルでは、病床機能分化や地域包括ケアシステムに伴って、患者への医療提供や病院経営における医療機関同士や介護施設等との連携の課題がありました。しかしながら、地域連携活動においては多様な活動やデータが存在するため、活動記録の一元管理及び効果検証は困難でした。
  • foro CRMは地域連携活動記録にプラットフォームを提供し、データの一元管理を可能にしています。加えてそれらをDPCデータ、紹介・逆紹介データなどと結び付け、連携活動の戦略立案と効果検証を可能にしています。

実績

  • 済生会熊本病院、JMAグループ(海老名総合病院・座間総合病院)、宮崎市郡医師会病院で導入実績があります。

会社概要

  • 2017年創業、東京に本社があり、代表取締役は柳内 健 氏です。「医療におけるSDGsの達成に貢献する」をミッションに、医療従事者の労働量や医療費などが持続可能な形で、医療サービスの質が改善される世界を実現することを目指しています。
  • 主要株主は経営陣、REAPRA VENTURES PTE.LTD.、MICイノベーション4号ファンド、DNX Venturesとなっています。病院向け地域連携強化サービス「foro CRM」 を中心に医療系のシステム開発・提供等をしています。

引用、参考文献

株式会社3Sunny(スリーサニー)

事業概要

  • 医療機関向けの業務支援Saas「Carebook」についての解説をします。患者さんが入院した際に退院先として自宅、病院、様々な形態の施設があり、その調整に時間や労力を要する場合が多いことが課題としてあります。多くの病院や介護施設では未だに業務の多くを紙・電話・FAXに依存しているのが現状です。この課題をネット情報を基盤とした一括管理システム、チャット機能、などを駆使して効率化を可能としたものです。

実績

  • 「Carebook」は既に東京を中心地として200を超える大学病院や大規模医療グループなどが導入しています。

会社概要

  • 2016創業、東京に本社があり、代表者は志水文人 氏です。「医療介護のあらゆるシーンを技術と仕組みで支え続ける」をミッションとしています。事業はSaaS型医療・介護機関向けWEBサービスの提供を行なっています。2021年03月までに総額4億円の資金調達を行なっています。

引用、参考文献

リタワークス株式会社 メディグル

事業概要

  • 大病院の広報・営業を支援するサービス「medigle」について解説します。
  • 新型コロナウィルスによる受診控え、外来入院・手術患者の減少、人口減少や医療費抑制政策によって病院経営が打撃を受け、医療機関の統廃合が起きています。したがって、病院経営においてマーケティングを軸にした広報・営業強化が重要となってきているという大病院側の課題感があります。また町のクリニックなどはどこの大病院へ紹介するべきなのか分かりにくいという課題感があります。
  • 「medigle」は「大病院」と「かかりつけ医」の繋がりを強化し大病院への患者紹介を促進させます。 患者側はより多くの選択肢得ることで適切な医療を受けられるようになり、病院側は自院にマッチする紹介患者の増加を見込むことができるようになります。全国の医科・歯科施設データベースが利用、地域の医療機関の新規開業閉院情報を取得、レビュー機能で連携の質向上を実現などが可能です。

実績

  • 慶應義塾大学病院や横浜市立市民病院をはじめ、民間・公立など経営母体問わず全国の病院が導入しています。

会社概要

  • 2008年創業、大阪に本社があり、代表者は佐藤 正隆 氏です。RITAWORKSが運営しています。「利他の想いと行動で、世界をより良くする」という企業理念、「あらゆるソーシャルビジネスに挑戦し、“あしたがよくなる”を実感できる社会をつくる」をビジョンとしています。IT/WEB企業として独自のサービスを展開する会社です。業界に特化したWEB制作・CMS提供に加え、社会課題をビジネスで解決していくITサービス事業を複数提供しています。

引用、参考文献

病棟支援

株式会社OPERe(オペリ)

事業概要

  • 看護師と患者さんとのコミュニケーションを増やしながら接触機会を適正化するツールである「ちょいリク」について解説します。現場の課題感としては、COVID-19患者を受け入れている病院は接触機会の適正化が難しいことと、患者減少による病院経営難があります。
  • このアプリケーションサービスを使用することで、患者さんと看護師のコミュニケーションを増やしながら、接触機会の適正化も行い、多職種での仕事共有も可能となります。

実績

  • TOKYOSTARTUPGATEWAY2019優秀賞、東京都スタートアップ実証実験促進事業(PoC Ground Tokyo Project)の採択などがあります。

会社概要

  • 2020年創業、東京に本社があり、代表取締役 澤田優香 氏です。代表取締役は看護師であり、現場のヒアリングとデータ解析を通じて、確実に医療現場の業務負担の軽減や医療の質の向上を達成するだけでなく、健全な病院経営に貢献することを目標としています。

引用、参考文献

Contrea株式会社

事業概要:

  • 患者さんへの「説明時間の短縮」と「信頼関係の構築」の両立を支援するクラウド型IC支援システム「MediOS」について解説します。患者説明の際に時間がかかること、説明をしても理解を得ることが難しいことなどが現場の課題感としてあります。
  • 患者さんへの定型的な説明を動画で支援、各個人に合わせて動画のセミオーダーできるクラウド型説明支援システムです。患者様へ分かりやすい医療情報を届け、医療者も個別の説明に注力でき、説明時間の効率化を達成できる可能性があります。​

実績

  • 現在シード期でインタネーット検索上では導入実績などは不明でした。

会社概要

  • 2020年創業、東京に本社があり、代表者は川端一広​ 氏です。「未来を描き、一歩進んだ体験を創る」というビジョン、​「医療にかかわる全ての人に安心を」というミッションを掲げています。

引用、参考文献

勤怠管理

Dr.JOY株式会社(ドクタージョイ)

事業概要

  • 様々なサービスを展開していますが、「勤怠管理アプリ」について解説します。医療現場の課題感として、労働時間の管理という視点が他業界と比較して欠落している、職員も労働時間を管理しようと意思に欠けている、業務と自己学習の境界線が難しいというものがありました。
  • このサービスは特許を取得したビーコンを使用して、出勤と退社時間を柔軟に自動検出、超過時間に対してスマホで残業申請、自己研鑽申請を可能としたサービスです。アラート機能や職種に応じた対応、テータ出力など様々な機能も有しています。

実績

  • 大学病院、地域の中核病院、診療所など幅広い施設で2020年11月末時点約5600施設が利用しています。

会社概要

  • 2013年創業、東京に本社があり、代表は石松 宏章​ 氏です。「コミュニケーション・インフラを創り医療の効率化、安全性向上に貢献する」というビジョンを掲げています。代表が医師であり、医療の現場で感じた課題感をビジネスで解決しようと創業しています。勤怠管理アプリをはじめとして、医療分野におけるソフトウェア開発および運用医療機関への医療および医薬品情報の提供を行なっています。

引用、参考文献

手術支援

ここから下2社は、SaaSではないですが、医療機関向けのサービスということでご紹介させていただきます。

Holoeyes

事業概要

  • 様々なサービスを展開していますが、「Holoeyes MD/XR」について解説します。「Holoeyes MD/XR」とは CT・MRIなどから汎用画像診断装置ワークステーションにて書き出した人体の3Dデータを、XRとして3D空間で体験、共有できるサービスです。
  • 医療の高度化に伴い、CT・MRI等のデジタル医用画像による、的確な診断と治療計画が必須となっています。しかし奥行き感のない平面モニタ画面では、立体空間的な理解が不十分であったという現場の課題感がありました。XR技術を使うことで、人体解剖を立体空間的に体験でき、直感的に理解できます。加えて医師同士・医師と患者・メディカルスタッフ・学生間の情報共有も可能となります。

実績

  • J-Starupにも選出、東京都「5G技術活用型開発等促進事業」から採択のアクセラレーションプログラム「TOKYO 5G PROMOTER」第1期にHoloeyesが採択などがあります。

会社概要

  • 2016年に創業、東京に本社があり、代表取締役は谷口直嗣 氏です。医療、医療教育に向けてVRやMRを使ったコミュニケーションサービスを提供しています。2019年にSBIインベストメント株式会社、三菱UFJキャピタル株式会社、みずほキャピタル株式会社、それぞれが運用するファンドより総額約2億5千万円の資金調達を実施しています。

引用、参考文献

RIVERFIELD

事業概要

  • 手術支援ロボット「EMARO(エマロ)」について解説します。外科の手術の1つに患者の体へ複数の穴を開けて器具を挿入し、器具を使って手術を行う内視鏡手術という技法があります。先行プロダクトにある課題としては、二次元画像を見ながらのため質感などが伝わりにくい、柔軟性に欠ける部分がある、画像がぶれるなどがありました。
  • RIVERFIELDが開発する「空気圧駆動型 内視鏡ホルダロボット EMARO(エマロ)」では、世界初となる空気圧駆動の内視鏡ホルダロボットで柔軟で滑らかな動作を実現し、操作術者の頭部に装着したヘッドセンサの動きと連動してホルダが動作し,内視鏡の操作ができ、内視鏡画像はぶれにくいなどの特徴があります。

実績

  • 2018年にJ-スタートアップ企業に選定されています。

会社概要

  • 2014年に創業し、東京に本社があります。代表取締役社長は只野耕太郎 氏です。経営理念は「国立大学発ベンチャー企業として事業の公共性・公益性を重んじ、科学技術に根差した新産業の創出発展に寄与する」というものです。事業内容は手術支援ロボット等の医療機器研究開発および販売です。

引用、参考文献

脳神経内科医師。予防医療(神経、宇宙、死生観、生活習慣病)が最大の関心事。 産官学民で力を合わせて持続的に楽しく、社会課題の解決ができればと夢見ている。 好きな食べ物は小豆(粒あん派)と果物サラダ。 学生時代に100kmマラソンとガンジス川でのバタフライを友人と達成している。