メディカルツーリズム(医療ツーリズム)はタイ、シンガポールを中心にアジア圏で活発におこなわれている。医療という面では欧米地域の方が最先端をいくが、メディカルツーリズムにおいてなぜアジアが活発なのか?についてこの記事では取り上げたいと思う。
現状アジア圏が世界市場の大半を占めており、今後アフリカ圏でも発展すると考えられている
まずはメディカルツーリズムのグローバル市場から見ていきたい。
アジア太平洋地域はグローバル市場の75パーセントを占める
株式会社マーケットリサーチセンターの調べによると、2021年のメディカルツーリズム(医療ツーリズム)市場においてアジア太平洋地域は全体の75%の割合を占めるとされている。具体的な背景は後ほど触れるが、高度な医療を提供しているという国際的な認知度と医療サービスを受けやすいことがあげられる。
今後10年間でアフリカ中東地域でも伸びると予想されている
先程と同じく、株式会社マーケットリサーチセンターの調べによると、欧州・中東・アフリカ(EMEA)の市場は2022年から2031年にかけてCAGR12.2%で発展すると予想されている。特にその中でもトルコがここでの市場の後押しにつながると考えらている。
なぜ世界の中でもアジアのメディカルツーリズムが活発なのだろうか?
海外の医療をメディカルツーリズムを通して受けようと思う患者の行動背景は様々である。初めに、海外で医療を受けたいと思う背景を外観したうえで、アジアにおいてなぜメディカルツーリズムが活発化なのか?について考察する。
そもそもなぜ患者は海外で医療を受けようとするのか?
メディカルツーリズムをする人には様々な要因があり、以下のようなものが挙げられる。
医療コストを抑えたいとき
物価が高い先進国においては医療コストは同質のものでも必然的に高くなる。そのような背景から、自国の近辺の国で比較的物価が安い国に医療を受けに行く人がいる。例えば、アメリカ合衆国の人々はメキシコに歯科領域からがん治療まで様々な医療を受けている。
国内医療が逼迫しているとき
先進国や経済発展が著しい発展途上国で発生しうることが、医療に対する需要に供給が追いついていないということである。このような背景から、治療や検診を受けるために長期間待つ必要があり、結果として海外にサービスを受けに行く場合がある。例えば、中国は近年の経済成長によりミドルアッパー層が増え、医療を受診する人も多くなり医療が逼迫している。そのため、一部の中国人は日本に検診を受けるために来日する。日本のメディカルツーリズムについては以下の記事で詳しく取り扱っているので是非こちらもあわせてみていただきたい。
先端医療が受けたいとき
国内で先端医療が受けられない時に海外に受けに行く場合である。美容整形や臓器移植や卵子凍結など領域に専門性がある分野においては医療観光する人が一定数いる。
国内の法律・規制等で治療が受けられないとき
一部の治療法は国内で法律上禁止されていたり、禁止はされていないが医療を提供している機関が少ない場合である。安楽死などがこれに該当する。
海外旅行とあわせたいとき
これは単純に海外に行くことが元から好きな人であったり、治療をいつもとは違う場所で受けることでリラックスして受けたいといった人が該当する。
アジアで受けることで医療費を55%-70%節約できる
発展途上国では安価な資源を利用できるため、治療の質は損なわれずに安価な治療が受けることができる点が魅力的となっている。例えば、血管形成術の場合、米国では1人あたり約55,000~57,000米ドルかかるのに対し、マレーシアでは約2,500~3,500米ドル済む。米国からタイ、シンガポール、インド、マレーシアに渡航して治療を受けることで、治療費の55%から70%を節約することができる。
他にも歯科領域や美容整形などタイをはじめとするアジア圏の国で治療を受けることで50-90%程治療費を節約することができる。
欧米諸国で治療を行うのに100日以上待たないと受けられないこともある
欧米諸国では医療不足のため治療や診断までに長時間待たされる場合がある。例えば、白内障手術、関節置換手術、冠動脈バイパス手術(CABG)を受ける患者のカナダでの平均待ち時間は、それぞれ112日、182日、71日である。このような長い待ち時間は患者にとって大きな課題であり、それためイムリーな手術を受けるためにアジア圏などの海外へ渡航することを希望する。
まとめ:アジアのメディカルツーリズムが活発な背景には何があるのか?
以上「アジアのメディカルツーリズムが活発な背景には何があるのか?」について考えてきた。まとめると、メディカルツーリズムを受ける要因は様々ある中で、アジアの医療コストの低さと待ち時間の少なさがアジア市場を活発にさせている。