医療業界の“今”を理解して、いかにUPDATEするか―。プロダクトで課題を解決するMedUpの描く未来

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医療業界の“今”を理解して、いかにUPDATEするか―。プロダクトで課題を解決するMedUpの描く未来

これまで医療ヘルスケアの共創プラットフォームとして、様々な情報を発信してきた「Healthtech DB」。今回インタビューにお答えいただけるのは、地域医療連携をDXで効率化するメダップ株式会社の創業者/代表取締役CEOの柳内健さんです。

地域連携のために私たちが集めるデータは「病院の情報」

―. はじめにMedUpの事業について教えてください。

私たちは現在、「foro CRM」という地域連携回りのSaaS(Software as a Service)ツールを大きな病院に提供しています。目安としては200床以上になるのですが、こうした病院はいわゆる急性期病院として手術や緊急性の高い医療を必要とする患者を受け入れ、後に転院やかかりつけ医へ繋げていきます。そのために必要なデータを管理して業務を効率化しよう、というのが私たちのプロダクトです。

―. 医療に関わるデータ管理と言うと患者情報を思い浮かべますが、「foro CRM」は病院の情報を扱うのですね。

はい。と言うのも、患者が大きな病院にかかるとき、大抵の場合はかかりつけ医がその施設を選んでいる傾向にあります。「あなたにとってはあの病院が良いんじゃないですか」と、疾患だったりその具合だったりに応じて紹介しているわけです。となると、患者を受け入れる病院にとっては、まず自身の強みや特性を知っておいてもらうこと、然るべき時に然るべき患者を受け入れることができる状態、というのが大事になってくるわけです。

―受け入れ側にとっては、患者だけでなくかかりつけ医となる地域の病院も「顧客」になるわけですね。

その通りだからこそ、顧客管理としての地域の施設情報の収集から、それをアクションに移すまでの活用フォローが必要だと考えています。現状、病院を受診しに来る6割くらいが過去に接点のあるかかりつけ医からの紹介、すなわち一般企業に置き換えると「過半数が既存顧客からの流入」です。それなのに、どこが増えた・減ったという推移を管理していない状態って勿体ないのでは、というのが私たちの見地なのです。

―具体的にどのような使われ方をしているのでしょうか?

具体的には、CRM本来のデータの共有・蓄積、データ分析の自動化、営業・マーケティング活動の効果検証などに使われています。ユーザー病院さんの声をご紹介するとイメージが湧きやすいかもしれません。「前回の訪問時に話した内容なども蓄積されているため、それを踏まえた提案や会話をすることが可能」、「地域の医療機関からの問い合わせ電話にも以前の問合せが共有されており迅速に対応可能」といったデータの共有・蓄積や、「紹介データの分析が自動化され、リアルタイムで連携先の変化が察知できるようになった」、「資料作成に必要なデータも簡単に表示されるおかげで業務の大幅な効率化につながっており、月間30時間分の業務時間が削減された」などデータ分析の自動化で利用されています。

―データ管理の必要性を仮に理解していても、手つかずの病院は多い気がします。こうしたプロダクトの誕生はありがたいですね。

受け入れる側の病院にとっては、単に患者の数が減ったというだけでなく「どこが減ってしまっているんだろう」ということが明らかになることで、発信への注力の仕方も変わってくると思います。それで患者がちゃんと来るようになれば病院はハッピーですし、患者からしても「この病院にかかることができて良かった」という満足に繋がり、かかりつけ医にとっても適切な医療機関を紹介できたことでクレームを防ぐことができます。“三方良し”の状態ですよね。

私たちが「病院の課題解決」に軸足を置く理由

―少し話が変わるようですが、柳内さんはベンチャーのITコンサルティングファームで勤めていたご経歴もお持ちですね。

実は大学時代は全く別の畑にいて、アサリの研究をしていました。ただ、いくらそれで世の中を良くすると言っても、時間がかかりすぎるという現実にも直面して。より早く世の中にインパクトを出したい、ならば起業だろうと思い、まずはスキルを習得しに企業へ就職したんです。

―そこから医療の世界に着眼したきっかけは、どこにあるのでしょうか?

ITコンサルの後にベンチャーキャピタルへ転職したのですが、そのとき電子カルテに関連した企業へ2社ほど投資をさせてもらいました。そこで病院やクリニックなどの抱える課題感を聞くことができて、自分も何らかのプロダクトでそれが解決できそうだという兆しを感じることができたんです。

―「病院」という場所に軸足があるのもそういった経緯なのですね。

私たちの根本には「病院業界の課題をストレートに解決したい」という思いがあります。その上でリサーチを進めると、地域連携に課題があることがわかりましたし、一般企業のノウハウが使えそうだという点も大きな動機付けになりました。最終的には済生会熊本病院という地域の最先端を担う病院さんが話に乗ってくれて、共同開発という形がとれたのはありがたかったです。

―患者や製薬企業に向けたヘルスケアビジネスが目立つなか、意外と新しいアプローチかもしれませんね。

ただ付け加えておきたいのが、自分たちは決して現状をディスラプトしたいわけではないということ。そもそも一社だけ、一プロダクトだけで変えられるような世界ではありませんし、これまでの慣習なども理解し尊重したいと考えています。医療の世界を知れば知るほど、医師や看護師など医療そのものを提供する方々のバリューがいかに大きいかを気づかされます。AIのように技術の進歩が目覚ましい分野もありますが、一朝一夕で置き換わるものではないはずです。だからこそ、いかに“今”を理解して、いかにアップデートしていくかが問われているように感じます。

―なるほど今言われた言葉に、MedUpの人間性みたいなものが見えたように思います。同じような思考のメンバーが集まっているのでしょうか?

そうですね、色々なプレイヤーと協力することが大事、というマインドは浸透しているかもしれません。自分だけが突出するというよりも、他の人が知っていることをうまくインプットしながら、手を取り合うことで、チームとしてより良いパフォーマンスを出していこうという姿勢ですね。

全職種のパフォーマンスアップへ向けてマルチプロダクトに挑む

―今後もプロダクトを軸にした事業を続けていく想定でしょうか?

MedUpが「一般企業のテクノロジーや最先端のツールを医療機関に組み込んで課題を解決しよう」というコンセプトから始まっていることもありますし、方向としては今もマルチプロダクトを目指しています。幸い社内のメンバーも「いかに仕組みを変えることによって病院の課題を解決できるか」というところに興味を持った人たちが集まっています。ゆくゆくは医療へ関わる全職種のパフォーマンスアップに貢献していきたいですね。

―これから医療・ヘルスケア業界に参入しようとする企業もあると思うのですが、何か先輩としてアドバイスできることはありますか?

よく「ヘルスケアは特殊」というようなことを言われますが、プロダクト開発においてはあくまで定石を押さえることが肝要だと考えています。ユーザーヒアリングは他と同じようにたくさん必要ですし、課題が浮き彫りになってないのにプロダクトアウトしてもうまくいかないのも同じです。当たり前をちゃんとやることの大切さは、業界が異なれども変わらないことだと私自身も実感しています。

―社会全体を見渡しても技術の進歩が目覚ましい最中ですが、このスピードは加速していくと思いますか?

一般的に革新的とされるものは、遅かれ早かれ医療の世界にも入ってくると思います。ただ、AIによる画像解析にしてもSaaSにしても、そのデータを取り扱う基盤がしっかりしていないといけませんし、セキュリティに対するケアも一般企業と変わらず必要です。ここで一つ付け加えるならば、導入を画一的に進めることが求められているというより、地域や属性によるグラデーションがあるべきではということ。少なくとも一定期間は「共存」を受け入れる土壌が必要だと考えています。例えば街に一人しかいない高齢の医師にとって、ファックスを取り上げて電子カルテを導入することがハッピーなのかというと、それは必ずしも病院や地域のためじゃないですから。

―なるほど。今後に向けて柳内さんがやってきたいことはありますか?

まだ医療業界に関わるようになって5年ほどしか経っていません。地域連携についてはだいぶ知見も溜まってきましたが、他の部分はこれからと言っても過言ではありません。より多くの人たちと交流し、協調を図っていきたい。その中で、今より多くの病院で使ってもらえるようなツールを作っていきたいと考えています。プロダクトで世の中を変えていける人になりたいですね。

Healthtech DB編集部です。Healthtech DBは国内のヘルステック領域に特化したビジネスDBです。日々のヘルステック業界の動向に関する記事作成やウェビナー運営、企業・サービスに関するビジネスDBの構築を行っています。