携帯キャリア企業が挑むヘルスケア戦略

投稿日

最終更新日

  • 携帯キャリア

携帯キャリア企業が挑むヘルスケア戦略

はじめに

携帯キャリア企業のヘルスケア領域の投資や事業参入が相次いでいます。
ここ数年の出来事です。
大規模ユーザーを抱えていること、すでにポータブルデバイスとして確立していることなどは
ヘルスケア領域との相性の良さが伺えます。
一方で、オンライン診療やオンライン薬剤師などでベンチャー企業が増え、
これら大手と共創をする流れもできています、
今回は携帯キャリア企業のヘルスケア戦略を解剖していこうと思います。

概論

携帯キャリア企業と手を組んでいるヘルスケア企業(デジタルヘルス関連企業)の対応関係を下記に列挙していきます。

  • docomo         -株式会社メドレー
  • ソフトバンク -LINE株式会社、ヘルスケアテクノロジーズ株式会社、株式会社MICIN
  • KDDI               -株式会社MICIN
  • 楽天     -なし

NTT docomo

NTTにおけるこれまでのヘルスケア事業への参入歴史は下記になります。プレスリリースを参考に列挙していきます。

  • 2011年12月 NTTドコモとオムロンヘルスケアが健康・医療ビジネスで提携
  • 2012年7月 NTTドコモとオムロンヘルスケアが新会社「ドコモ・ヘルスケア」を設立
  • 2013年3月 健康プラットフォーム「WM(わたしムーヴ)」の提供開始
  • 2013年6月 女性の体と心を健やかにする新サービス「カラダのキモチ」サービス開始
  • 2014年12月 トレーニング支援サービス「Runtastic for docomo」の提供 
  • 2015年1月「クラウド型12誘導心電図伝送システム」を商用提供開始-ドコモと東大病院による共同研究成果
  • 2016年1月 電子お薬手帳サービス「おくすり手帳Link」を提供-厚生労働省の指針に沿った、安心して電子お薬手帳を利用できる環境を整備
  • 2016年3月 歩くだけでdポイントがたまる!スマートフォンアプリ「歩いておトク」の提供
  • 2016年3月 「dヘルスケアパック」を提供開始-健康に関する4つのサービスをパッケージ化
  • 2016年4月 脈の揺らぎを自己管理するスマホアプリを利用し不整脈と生活習慣病の関連性を解析する臨床研究を東京大学と開始
  • 2016年8月 「ドコモでほけん相談」を開始
  • 2016年10月 特定非営利活動法人ひまわりの会と、妊娠中から子育て中のお客さま向け「母子健康手帳アプリ」を新たに開発し無料提供
  • 2017年1月 神奈川県、株式会社NTTドコモ(以下、NTTドコモ)及びSOMPOケアネクスト株式会社(以下、SOMPOケアネクスト)は、神奈川県の「住宅環境における未病関連商品・サービスの市場化」の実証プロジェクトとして、「未病改善サポートシステム」の実用化に向けた実証事業を開始
  • 2018年2月 「母子健康手帳アプリ」に低出生体重児向けコンテンツを提供開始-「修正月齢のグラフ対応」および「低出生体重児向け子育てQ&A」を追加
  • 2018年10月 ウェルビーとドコモ、ヘルスケア領域での業務提携に向けて基本合意-Welbyマイカルテと母子健康手帳アプリを連携し、妊婦向け疾患管理デジタルサービスとしての価値を向上
  • 2019年2月 東北大学とドコモ、歯周病発見AIの共同研究を開始-スマートフォンを使って歯周病検診の受診率向上をめざす
  • 2019年2月 ドコモとエムスリーが資本・業務提携契約を締結-企業の健康経営をサポートする「株式会社empheal」を設立
  • 2020年8月 「dヘルスケア」有料サービスを「dヘルスケア(300円)」に統合しヘルスケア領域を強化
  • 2020年12月 東京における「MaaS×健康応援」の取組みがスタート-東京メトロ my!アプリの新機能「ひと駅歩く検索」と「dヘルスケア」「あるく保険」が連携開始
  • 2021年4月 ヘルスケア・メディカル事業の強化に向け株式会社メドレーと資本・業務提携に合意
  • 最も昔からヘルスケア領域への取り組みを行なっています。オムロンヘルスケアとの提携を皮切りに、ドコモ・ヘルスケアの設立、WM(わたしムーヴ)」、「カラダのキモチ」、「Runtastic for docomo」、「歩いておトク」のアプリを提供開始していきました。これらのアプリを統合してdヘルスケアを作成し、現在のアプリの原型を作っています。その間に他分野で研究や実証実験を行っています。今年になり、株式会社メドレーと資本・業務提携を結び、ペイシェントジャーニーに沿った一貫したサービス提供を目指している様子です。株式会社メドレーがオンライン服薬指導支援システム、介護施設・老人ホームの検索サイトなどジャーニマップの下流域を開拓しており、相互にとって意味のある連携となりそうです。

    【参考文献】
    https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2021/04/26_00.html
    https://www.nttdocomo.co.jp/service/dmarket/healthcare/

    SoftBank

    SoftBankにおけるこれまでのヘルスケア事業への参入歴史は下記になります。プレスリリースを参考に列挙していきました。

    • 2011年3月 GEヘルスケア・ジャパンとソフトバンクテレコム医療IT事業で提携。医療画像の低コスト・高セキュリティ管理を目指す
    • 2013年3月   米国Fitbit社とソフトバンクBB、活動量+睡眠計「fitbit」の国内販売を開始
    • 2013年7月   医療・介護関係者向けヘルスケア専用SNSの提供開始。ソフトバンクテレコム、日本エンブレース、JRCエンジニアリングの提携
    • 2015年11月  ヘルスケアとICT領域における新サービスの共同開発の合意について、健康コーポレーション株式会社とRIZAP株式会社と協業
    • 2015年10月 「パーソナルカラダサポート」の提供について 、IBM Watsonを活用したアプリケーションの共同開発を表明
    • 2016年4月 株式会社FiNCとパーソナルデータに基づいたヘルスケアサービス「パーソナルカラダサポート」の提供開始
    • 2017年12月 フィリップスとソフトバンクが協業合意~IoTの技術でヘルスケアを変える~
    • 2018年10月 ヘルスケアテクノロジーズを平安好医生(ピンアン・グッド・ドクター)と合同で設立
    • 2019年1月 LINEヘルスケア株式会社設立(LINE株式会社とエムスリー株式会社出資) 
    • 2019年12月 ヘルスケアを軸としたAIアシスタントに関する共同研究を慶應義塾大学殿町先端研究教育連携スクエアと開始
    • 2020年7月  ヘルスケアテクノロジーズ株式会社が オンライン健康医療相談サービス「HELPO」を提供開始 
    • 2020年11月LINEヘルスケア株式会社が LINEドクターを提供開始
    • 2021年3月  LINE株式会社とZホールディングスが経営統合
    • 2021年6月 ヘルスケアテクノロジー株式会社が、株式会社MICINと協業してオンライン診療サービス機能を提供開始 

    2018年のヘルスケアテクノロジーズ設立から、「HELPO」を提供開始、Lineドクターへ複数の傘下企業による活躍が昨年度から目立っています。
    Lineはメッセージアプリケーションとしては国内最大のユーザーをもっているため、成功すれば大きなチャンスとなります。LINEヘルスケアとHELPOいずれもは「遠隔健康医療相サービス」であり、未病から受診までの部分を現在はターゲットとしていると考えられます。今後は未病領域、医療領域、介護領域などへの進出も目指していると推測されますが、具体的な動き出しについては発表はない状況です。

    【参考文献】
    https://healthcare-tech.co.jp/
    https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/

    KDDI

    KDDIにおけるこれまでのヘルスケア事業への参入歴史は下記になります。株式会社KDDIプレスリリースを参考に列挙していきます。

    • 2013年2月 健康診断結果データ (以下、健診データ) を活用した健康促進サービスの事業化検討に向けた実証実験。「Karada manegr」はKDDIとネオス株式会社が共同で運営するトータルヘルスケアサービス
    • 2015年3月 セルフ健康チェックサービス「スマホdeドック」の提供開始。
    • 2017年5月  南相馬市、在宅医療の体制強化に向け「オンライン診療」を開始。メドレーとKDDIが安定運用を支えるシステム・タブレット端末を提供。
    • 2018年1月  「KDDI IoTクラウド API Market」の提供を開始。気象情報などのラインアップから、複数のデータを組み合わせた新たなIoTサービスの創出を促進
    • 2018年3月    ソーシャル医療介護連携プラットフォームを提供する日本エンブレースとの資本業務提携
    • 2018年7月  「スマホdeドック」平成30年度事業に全国57市区町村を含む80団体が参加予定
    • 2020年9月 スマホで個々人の暮らしに寄り添い健康・医療をDX、健康管理アプリ「ポケットヘルスケア」を開発
    • 2020年11月   運動を生活習慣に組み込む、エクササイズ支援サービス「auウェルネス」を提供開始
    • 2020年5月  「auウェルネス」の機能を拡張し、株式会社MICIN (マイシン) と協業で、オンライン診療サービス「curon (クロン) for KDDI」を提供開始
    • 2021年6月  auウェルネスを通じたオンライン服薬指導を9月から提供開始予定。「auウェルネス」の機能を拡張し、ホワイトヘルスケア株式会社および株式会社MICIN (マイシン)と連携したオンライン服薬指導サービスを、2021年9月から提供開始予定。

    これを見ると、2015年のセルフ健康チェックサービス「スマホdeドック」が大きな潮目になっている様子が伺えます。セルフ健康チェックサービス「スマホdeドック」は順調に行政との連携を深めていき、現在も継続している事業となっている様子です。KDDI IoTクラウド API Marketは2021年3月にサービス終了となっています。ポケットヘルスケアは2020年に豊島区と共同で実証実験を行なっておりますが、その後の動きは大きくない状況です。
    そして、昨年度末からの「auウェルネス」です。今年に入って、ホワイトヘルスケア株式会社および株式会社MICIN (マイシン)との連携で、顧客や患者の動きをよりスムーズにし、勢いを加速させています。疾患発症前の未病状態から、医療機関受診、服薬、までを一気貫通に行なっています。今後の進展として予想されるものとしては、服薬開始後のコンプライアンス維持に向けた管理サービス、集まった生体データを使用したビックデータ解析と利用、調剤薬局との連携、などが考えられます。

    【参考文献】
    https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2021/06/29/5216.html?fbclid=IwAR2Z5aLMh4FFJfgbHLMNWvHwOs25DytyfvQ6y9E_R6eiy6FMj_YLqLXQ_K0

    楽天

    プレスリリースを参考に歴史を箇条書きします

  • 2019年3月 「楽天アスピリアン社」から「楽天メディカル社」へ社名変更
  • 2020年5月 は、再発頭頸部がんに対する医薬品ASP-1929(治験薬名、一般名:セツキシマブ サロタロカンナトリウム)に対して、厚生労働省より29日(金)付で「条件付き早期承認制度」が適用
  • 2021年1月 自宅で検体採取可能な「新型コロナウイルス唾液PCR検査キット」を提携医療機関のもと個人向けに提供開始 - タカラバイオ株式会社(本社:滋賀県草津市、代表取締役社長:仲尾功一、以下「タカラバイオ」)と共同開発
  • 2021年6月楽天メディカルと島津製作所、イルミノックス®プラットフォームに関わる医療機器の共同開発・製品化契約を締結
  • 光免疫療法のサービス展開を軸にして進めている様子です。現在、患者状況に加えて、施設要件や使用者要件を満たした状態で使用が可能です。

    【参考文献】
    https://corp.rakuten.co.jp/news/press/
    https://rakuten-med.com/jp/
    https://rakuten-med.com/jp/illuminox/
    https://hcp.rakuten-med.jp/product_overview

    まとめ

    多くのユーザーを抱える携帯キャリア会社のヘルスケア領域の参入はベンチャー企業にとって、
    脅威ともなりますが、チャンスともなりうります。ベンチャーだからこそできる領域やスピード感があるからです。
    お互いの利害が一致したところで、共創をすることができれば、大きな社会課題の解決・ビジネスチャンスとなる可能性が出てきます。
    今後もこれら三社の動向には目が離せないでしょう。

    脳神経内科医師。予防医療(神経、宇宙、死生観、生活習慣病)が最大の関心事。 産官学民で力を合わせて持続的に楽しく、社会課題の解決ができればと夢見ている。 好きな食べ物は小豆(粒あん派)と果物サラダ。 学生時代に100kmマラソンとガンジス川でのバタフライを友人と達成している。