はじめに
携帯キャリア企業のヘルスケア領域の投資や事業参入が相次いでいます。
ここ数年の出来事です。
大規模ユーザーを抱えていること、すでにポータブルデバイスとして確立していることなどは
ヘルスケア領域との相性の良さが伺えます。
一方で、オンライン診療やオンライン薬剤師などでベンチャー企業が増え、
これら大手と共創をする流れもできています、
今回は携帯キャリア企業のヘルスケア戦略を解剖していこうと思います。
概論
携帯キャリア企業と手を組んでいるヘルスケア企業(デジタルヘルス関連企業)の対応関係を下記に列挙していきます。
- docomo -株式会社メドレー
- ソフトバンク -LINE株式会社、ヘルスケアテクノロジーズ株式会社、株式会社MICIN
- KDDI -株式会社MICIN
- 楽天 -なし
NTT docomo
NTTにおけるこれまでのヘルスケア事業への参入歴史は下記になります。プレスリリースを参考に列挙していきます。
最も昔からヘルスケア領域への取り組みを行なっています。オムロンヘルスケアとの提携を皮切りに、ドコモ・ヘルスケアの設立、WM(わたしムーヴ)」、「カラダのキモチ」、「Runtastic for docomo」、「歩いておトク」のアプリを提供開始していきました。これらのアプリを統合してdヘルスケアを作成し、現在のアプリの原型を作っています。その間に他分野で研究や実証実験を行っています。今年になり、株式会社メドレーと資本・業務提携を結び、ペイシェントジャーニーに沿った一貫したサービス提供を目指している様子です。株式会社メドレーがオンライン服薬指導支援システム、介護施設・老人ホームの検索サイトなどジャーニマップの下流域を開拓しており、相互にとって意味のある連携となりそうです。
【参考文献】
https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2021/04/26_00.html
https://www.nttdocomo.co.jp/service/dmarket/healthcare/
SoftBank
SoftBankにおけるこれまでのヘルスケア事業への参入歴史は下記になります。プレスリリースを参考に列挙していきました。
- 2011年3月 GEヘルスケア・ジャパンとソフトバンクテレコム医療IT事業で提携。医療画像の低コスト・高セキュリティ管理を目指す
- 2013年3月 米国Fitbit社とソフトバンクBB、活動量+睡眠計「fitbit」の国内販売を開始
- 2013年7月 医療・介護関係者向けヘルスケア専用SNSの提供開始。ソフトバンクテレコム、日本エンブレース、JRCエンジニアリングの提携
- 2015年11月 ヘルスケアとICT領域における新サービスの共同開発の合意について、健康コーポレーション株式会社とRIZAP株式会社と協業
- 2015年10月 「パーソナルカラダサポート」の提供について 、IBM Watsonを活用したアプリケーションの共同開発を表明
- 2016年4月 株式会社FiNCとパーソナルデータに基づいたヘルスケアサービス「パーソナルカラダサポート」の提供開始
- 2017年12月 フィリップスとソフトバンクが協業合意~IoTの技術でヘルスケアを変える~
- 2018年10月 ヘルスケアテクノロジーズを平安好医生(ピンアン・グッド・ドクター)と合同で設立
- 2019年1月 LINEヘルスケア株式会社設立(LINE株式会社とエムスリー株式会社出資)
- 2019年12月 ヘルスケアを軸としたAIアシスタントに関する共同研究を慶應義塾大学殿町先端研究教育連携スクエアと開始
- 2020年7月 ヘルスケアテクノロジーズ株式会社が オンライン健康医療相談サービス「HELPO」を提供開始
- 2020年11月LINEヘルスケア株式会社が LINEドクターを提供開始
- 2021年3月 LINE株式会社とZホールディングスが経営統合
- 2021年6月 ヘルスケアテクノロジー株式会社が、株式会社MICINと協業してオンライン診療サービス機能を提供開始
2018年のヘルスケアテクノロジーズ設立から、「HELPO」を提供開始、Lineドクターへ複数の傘下企業による活躍が昨年度から目立っています。
Lineはメッセージアプリケーションとしては国内最大のユーザーをもっているため、成功すれば大きなチャンスとなります。LINEヘルスケアとHELPOいずれもは「遠隔健康医療相サービス」であり、未病から受診までの部分を現在はターゲットとしていると考えられます。今後は未病領域、医療領域、介護領域などへの進出も目指していると推測されますが、具体的な動き出しについては発表はない状況です。
【参考文献】
https://healthcare-tech.co.jp/
https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/
KDDI
KDDIにおけるこれまでのヘルスケア事業への参入歴史は下記になります。株式会社KDDIプレスリリースを参考に列挙していきます。
- 2013年2月 健康診断結果データ (以下、健診データ) を活用した健康促進サービスの事業化検討に向けた実証実験。「Karada manegr」はKDDIとネオス株式会社が共同で運営するトータルヘルスケアサービス
- 2015年3月 セルフ健康チェックサービス「スマホdeドック」の提供開始。
- 2017年5月 南相馬市、在宅医療の体制強化に向け「オンライン診療」を開始。メドレーとKDDIが安定運用を支えるシステム・タブレット端末を提供。
- 2018年1月 「KDDI IoTクラウド API Market」の提供を開始。気象情報などのラインアップから、複数のデータを組み合わせた新たなIoTサービスの創出を促進
- 2018年3月 ソーシャル医療介護連携プラットフォームを提供する日本エンブレースとの資本業務提携
- 2018年7月 「スマホdeドック」平成30年度事業に全国57市区町村を含む80団体が参加予定
- 2020年9月 スマホで個々人の暮らしに寄り添い健康・医療をDX、健康管理アプリ「ポケットヘルスケア」を開発
- 2020年11月 運動を生活習慣に組み込む、エクササイズ支援サービス「auウェルネス」を提供開始
- 2020年5月 「auウェルネス」の機能を拡張し、株式会社MICIN (マイシン) と協業で、オンライン診療サービス「curon (クロン) for KDDI」を提供開始
- 2021年6月 auウェルネスを通じたオンライン服薬指導を9月から提供開始予定。「auウェルネス」の機能を拡張し、ホワイトヘルスケア株式会社および株式会社MICIN (マイシン)と連携したオンライン服薬指導サービスを、2021年9月から提供開始予定。
これを見ると、2015年のセルフ健康チェックサービス「スマホdeドック」が大きな潮目になっている様子が伺えます。セルフ健康チェックサービス「スマホdeドック」は順調に行政との連携を深めていき、現在も継続している事業となっている様子です。KDDI IoTクラウド API Marketは2021年3月にサービス終了となっています。ポケットヘルスケアは2020年に豊島区と共同で実証実験を行なっておりますが、その後の動きは大きくない状況です。
そして、昨年度末からの「auウェルネス」です。今年に入って、ホワイトヘルスケア株式会社および株式会社MICIN (マイシン)との連携で、顧客や患者の動きをよりスムーズにし、勢いを加速させています。疾患発症前の未病状態から、医療機関受診、服薬、までを一気貫通に行なっています。今後の進展として予想されるものとしては、服薬開始後のコンプライアンス維持に向けた管理サービス、集まった生体データを使用したビックデータ解析と利用、調剤薬局との連携、などが考えられます。
【参考文献】
https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2021/06/29/5216.html?fbclid=IwAR2Z5aLMh4FFJfgbHLMNWvHwOs25DytyfvQ6y9E_R6eiy6FMj_YLqLXQ_K0
楽天
プレスリリースを参考に歴史を箇条書きします
光免疫療法のサービス展開を軸にして進めている様子です。現在、患者状況に加えて、施設要件や使用者要件を満たした状態で使用が可能です。
【参考文献】
https://corp.rakuten.co.jp/news/press/
https://rakuten-med.com/jp/
https://rakuten-med.com/jp/illuminox/
https://hcp.rakuten-med.jp/product_overview
まとめ
多くのユーザーを抱える携帯キャリア会社のヘルスケア領域の参入はベンチャー企業にとって、
脅威ともなりますが、チャンスともなりうります。ベンチャーだからこそできる領域やスピード感があるからです。
お互いの利害が一致したところで、共創をすることができれば、大きな社会課題の解決・ビジネスチャンスとなる可能性が出てきます。
今後もこれら三社の動向には目が離せないでしょう。