母子手帳の改訂内容はどんなもの?

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母子手帳の改訂内容はどんなもの?

Twitterで母子手帳の改訂が話題に

神奈川県鎌倉市議の藤本麻子氏が、鎌倉市で使用されている母子健康手帳に記載された内容について異議を唱えたツイートが話題となった。
「鎌倉市の母子手帳、『父になる』の項目ひどくない?」

問題となった記載内容とは以下の通りだ。

父親は、はじめのうちは何もできませんが、子どもの成長につれて、父親の役割は、日に日に増し、子どもが青年期を迎えるころ、最も重要になります。」

この父親の役割についての記載が物議を醸したのだ。多様な家族の形が生まれ、変化していく社会において、家族の役割について明記することは難しくなっている。

本記事では、この様な社会背景をもとに、令和5年度から改訂される母子健康手帳の内容について説明したいと思う。

母子手帳とはそもそも何なのか?

母子手帳(正式名称:母子健康手帳)は、母子健康法によって各自治体から交付されており、戦時中の妊産婦手帳が原型とされている。

そのため、各自治体によって母子手帳の内容は異なるが、大まかには妊娠の経過や乳幼児期の健康診査の記録、予防接種の記録、身長と体重の「発育曲線」等を記録する。また、妊娠や子育てに役立つような情報も掲載されている。

母子手帳の改訂内容は?

主に検討された内容

今回の改定にあたり、母子健康手帳、母子保健情報等に関する検討会では以下の4点が主な論点となった。

1. 母子健康手帳やその他ツールの電子化について
2. 母子健康手帳の役割
3. 多胎児や障害のある子ども、外国人等の多様な子どもと父親の在り方についてどの様な情報発信を行うか
4. 反映されるべき近年のエビデンスについて

デジタル化は令和7年度を目標に、「母子手帳」から名称変更はなし。

議論の末、主に2点の決定がなされた。

まず、母子手帳のデジタル化マイナンバーを活用し、令和7年度を目標時期として推進する方針となった。

また、父親の育児参加により母子手帳の名称変更が議題となっていたが、現在の名称が定着していることから変更しないこととなった。一方で、各自治体は「親子手帳」などの名称を独自に併記することができる。

その他にも
・子育て世代包括支援センター等への相談を促す記載
産後ケア事業に関する記録
父親や家族が記入する
学童期以降の健康状態の記録欄
などの項目が追加され、多言語での表記相談窓口への連絡先等も掲載されるよう改定された。

父親の育児参画、どの様に進めていく?

父親の育児参画が促進される一方で、妊娠しているのは母親であるため、母子手帳の中で父親に配慮できる点には限りがあるのではないかと考える。

検討会の中でも「妊婦自身の記録」といった欄が設けられていることから、父親は記入しづらいという意見が挙がった。
しかしながら、だからといってその欄を削除することが不適当であることは明確であり、多様化する家族の形に合わせて「保護者」という表現への変更や父親・家族が記入する欄を増やすなどの工夫が妥当であるとしている。

先に紹介したツイートに対しても鎌倉市は、
「母体の変化や胎児の成長など、身をもって親になることを徐々に実感していく妊婦さんとは違い、父親(パートナー)は赤ちゃんが生まれるまでなかなか実感が持てないと言われています。」「実際の父親(パートナー)の役割が、自宅に戻ってから、日に日に増していくこと自体は、誤った記載ではないと考えます。」としており、筆者もこの意見には一理あるのではないかと考える。

一方で鎌倉市は、「『子どもが青年期を迎えるころ、最も重要になります』という記載に関しては、たしかに父親(パートナー)との役割分担のあり方や、その重要度、時期等については、家族ごとに異なるものなので、異議のある方もいらっしゃると認識しています。」としており、令和5年度から改定された母子手帳を採用する予定だ。

父親と母親では、その身体的な違いにより役割の差が出てしまうことは防ぎようのないことではないかと考える。母乳を生産できるのは母親だけであり、全ての役割を平等に分担することは難しい。
しかしながら、どのような家族の形であっても、子供の保護者が子供に対して負う責任は等しくあるべきであり、その責任を全うするために全ての保護者が育児に参画することは必須ではないだろうか。

母子手帳がその責任を負う上で手助けとなるようなツールとして、時代に応じて常にアップグレードされることを期待する。

慶應義塾大学医学部2年生。今ある技術で救えるはずの命を救いたく、医療を多角的な視点から見たいと思いつつも、未だ興味分野は模索中。起業も視野に入れながら勉強中です。韓国文化、スイーツ、かき氷が大好きです。