リフィル処方箋とは何か?普及のためのハードルと薬局DX

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リフィル処方箋とは何か?普及のためのハードルと薬局DX

リフィル処方箋とは何か?

リフィル処方箋とは

 リフィル処方箋とは、「症状が安定している患者について、医師の処方により医師及び薬剤師の適切な連携の下、一定期間内に処方箋を反復利用できる仕組み(リフィル制度)」において使用される処方箋のことを指す。この処方箋があれば、患者は医療機関を受診することなく薬局で繰り返し薬を受け取ることができる。

 リフィル (refill) とは英語で「補充する」「詰め替える」という意味の語であり、まさに「薬がなくなったら薬局に行って補充する」というリフィル処方箋の概念に合致している。

世界各国がどのようにリフィル処方箋を活用してきたか

 海外の一部の国では、10年以上前からリフィル処方箋が導入されている。

アメリカ(カリフォルニア州)

  • 導入時期:1951年
  • 対象患者:制限なし
  • 処方箋の有効期限:法的制限はないが、基本的には2年を超えないように処方する。
  • 業務の流れ / 特徴:患者は薬局にリフィル調剤を依頼。その後の処方箋は薬局が保管、次回以降はその処方箋を基に処方する。処方箋を別薬局に移すことで、途中で調剤薬局を変更することもできる。

イギリス

  • 導入時期:2002年
  • 対象患者:定期的に同薬剤を使用する患者
  • 処方箋の有効期限:原則12ヶ月
  • 業務の流れ / 特徴:紙の処方箋でも対応可能だが、大半の患者が電子的なもの(eRD)を使用している。GP(General Practitioner)薬が不要になった場合は、残りのリピート回数をキャンセルできる。

フランス

  • 導入時期:2004年
  • 対象患者:慢性疾患患者、経口避妊薬を服用する患者
  • 処方箋の有効期限:6ヶ月の期間
  • 業務の流れ / 特徴:対象患者が処方箋を紛失した場合、手元の古い処方箋を薬局に持参し治療薬の証明とすることも可能。同様に、対象患者の処方箋の期限が過ぎた場合、薬剤師が追加で薬剤を出すことが可能。

 オーストラリア、カナダなども慢性疾患患者を対象にリフィル制度を導入している。一方、ドイツや韓国では導入されていない。

日本でも2022年の診療報酬改正から導入が決定

 日本でも、2022年の診療報酬改定を機にリフィル処方箋が導入されることとなった。

 厚生労働省は2015年に発表した「患者のための薬局ビジョン」において、地域包括ケアシステムを実現するために、薬局・薬剤師は服薬情報の一元的・継続的把握に基づいて薬学的管理・指導を行う「かかりつけ」としての役割を果たすのが望ましいとしている。そのためには薬中心の対物業務(処方箋受取・調製・報酬算定など)から患者中心の対人業務(重複投薬や飲み合わせの確認・服薬指導・在宅訪問での薬学管理など)へのシフトが重要という姿勢だ。

図1. 患者のための薬局ビジョン
(令和4年度調剤報酬改定の概要 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000911825.pdf より引用)

 「令和4年度調剤報酬改定の概要」でもこの姿勢が強く打ち出されており、新たに加わった「リフィル処方箋の導入・活用促進による効率化」もその一環として掲げられている策である。「分割調剤とは異なる実効的な方策を導入することにより、最新の効率化につなげ、その効果について検証を行う」としている。

リフィル処方箋の仕組み:分割調剤との違い

 分割調剤は2016年の診療報酬改定で設定された制度で、患者への長期的な処方を何回かに分けて行うという面でリフィル処方箋に似ている。

 しかし、両制度の用途は大きく異なり、リフィル制度は診療機会の効率化を主眼に置いているのに対し、分割調剤は「①薬剤の長期保存が困難な場合、②後発医薬品を初めて使用する場合、③医師による指示がある場合などに行われる」とされている。

 運用にも違いがある。例として、90日分の内服薬を30日分ごとに薬局で調剤して交付したい場合を考えると、それぞれ以下のような運用となる。

リフィル処方箋

  • 医師:30日分の処方箋を発行。所定欄にチェックを入れ反復利用できる回数を記載する。
  • 薬局:当該処方箋を保管し、30日分ずつ調剤。
  • 患者:30日ごとに薬局を訪れ、薬を受け取る。診察は不要で、処方箋も持参しなくてよい。

分割調剤

  • 医師:30日分の処方箋3枚と、受け付けた薬局の名称や所在地等を記録するための別紙を発行。それぞれの投与日数や総投与日数、分割回数等を記入する。
  • 薬局:1回ごとに処方箋を受け取り、30日分ずつ調剤。
  • 患者:30日ごとに全ての処方箋を持って薬局を訪れ、薬を受け取る。診察は不要。

リフィル処方箋のメリット・デメリット:普及するための課題とは

患者さんに対して

 令和3年度に行われた調査では、リフィル処方箋を利用したいと思う患者の割合は54.9%に達しており、複数選択形式でどのような場合に利用したいかを尋ねたところ、選ばれた割合が特に高かったのは「症状が長期に安定しているとき」「忙しくて診察に行く時間が確保できないとき」の2つで、それぞれ75.4%, 63.6%の患者から選択された。

図2. 患者のリフィル処方箋に対する姿勢
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000863579.pdf をもとに作成)

 このように、リフィル処方箋によって患者が得られる最大のメリットは、医療機関を受診する手間が省けることである。薬局へ行く手間は残っているものの、薬局は医療機関と比べて営業時間が長いため行きやすく、また予約が不要で待ち時間も短いため、負担はかなり軽減されると思われる。

 また、2回目以降は処方箋を持参する必要がないことも魅力である。受診直後に薬局へ行く場合は、医療機関で受け取った処方箋をそのまま薬局で差し出せばよいため、「処方箋を忘れる」ということは起きにくい。しかし、分割調剤などにより受診なしで薬局に行く場合は処方箋を忘れる可能性も考えられるほか、前回処方から日数が経つうちに自宅内での処方箋の置き場所を忘れてしまうというケースも起こりかねない。リフィル処方箋は薬局側が保管することになっているため、患者側は処方箋を管理するという面倒から解放される。

 デメリットとしては、薬局が医師に代わって服薬状況や疾患の状況を把握する役割を果たせる確証がなく、特に体調の変化が見過ごされる可能性があることが挙げられる。詳細は後述する。

医療機関・医師に対して

 最大のメリットは、大病院の診療業務を減らせることである。日本では、諸外国とは異なり軽い病気でも大きい病気でも大病院で 診療を行う / 診てもらおうとする 傾向が見られる。病状の安定した慢性疾患患者の診察業務を削減することで、他の急を要する患者に対応するリソースを温存できれば、各患者に最適化された医療を提供しやすくなる。

 分割調剤も慢性疾患患者の診察機会を減らすシステムではあるものの、分割指示を行ったことのある医療機関の割合は10%に満たない(診療所8.5%, 病院で9.1%:令和2年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査)。今回の診療報酬改定を機にリフィル制度や分割調剤を採用する医師・医療機関が増える可能性にも期待したい。

図3. 医療機関における分割指示経験の有無
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000863579.pdf をもとに作成)

 しかし、この診療業務を減らせるというメリットは、医療機関の収入減につながるというデメリットと表裏一体である。毎月来院していた患者が3か月に1回しか来院しなくなると、やはり収益への影響は避けられない。今回の診療報酬改定では、長期投薬に係る減算規定(30日以上の長期処方では所定点数の40/100に相当する点数で算定するというもの)に「リフィル処方箋で1回あたりの投与期間が29日以内の場合に関しては除外する」という内容の記載が追加されたものの、それが導入障壁を取り払うだけのインセンティブにあたるかは疑問だ。

 また、医師が患者の体調の変化や服薬状況を把握しづらくなることも指摘されている。リフィル処方箋に関する経緯として、日本医師会は「症状が安定している慢性疾患の患者さんであっても、定期的に診察を行い疾病管理の質を保つことが重要である」と主張してきた。今回の導入にあたっても、同会中川元会長は「長期処方にはリスクがあり、不適切な長期処方には是正が必要と考えている」との考えを示し、「新しい仕組みを導入する際には、患者さんの健康に大いに関わるため、慎重の上にも慎重に、そして丁寧に始めることが望ましい」と強調していた。

 さらに、リフィル制度の適用を受けられる場合は限定されているということを患者に十分に認知してもらう手間も生じうる。令和4年度調剤報酬改定の概要には、「症状が安定している患者について」という条件のほか、「保険医療機関及び保険医療養担当規則において、投薬量に限度が定められている医薬品及び湿布薬については、リフィル処方箋による投薬を行うことはできない。」という留意事項も記載されている。症状や薬によってはリフィル制度を使えないということを患者に理解してもらう必要がある。

薬局・薬剤師に対して

 薬局にとっては、短期的な視点ではリフィル処方箋の導入はデメリットの方が大きいと思われる。業務が増えるからだ。

 「令和4年度調剤報酬改定の概要」では、リフィル処方箋を受け取った薬剤師に対して次のような業務を求める記述がある。

  • 患者の服薬状況等を確認し、リフィル処方箋による調剤の適切性を判断
    • 不適切と判断した場合:調剤を行わず受診勧奨 + 処方医に速やかに情報提供
    • 適切と判断した場合:調剤後、調剤内容・患者の服薬状況などについて必要に応じて処方医に情報提供
  • 継続的な薬学的管理指導のため、同一の保険薬局で調剤を受けるべきである旨を患者に説明
  • 次回以降他の保険薬局で調剤を受けるとの申し出があった場合:その薬局に調剤状況などの必要な情報をあらかじめ提供
  • 調剤予定時期になっても患者が来局しない場合:電話等で調剤状況を確認

 厚生労働省としては、前述の「患者のための薬局ビジョン」における「かかりつけ薬局」「かかりつけ薬剤師」という概念を実現していくための一歩と位置づけているのであろう。上に列挙した業務はたしかに「患者中心の対人業務へ」という流れに合致している。しかし、対人業務が増えている一方で、「薬中心の対物業務」が削減されたかは微妙である。もちろん最大3回分の処方箋を1枚で済ませられるという特徴から、多少効率化される部分はあるかもしれない。しかし、薬局での継続的な保管が必要となるなど、一般的な処方箋と異なる運用となること自体が円滑な業務を妨げる可能性がある。現場の声を見ると、患者のリフィル処方箋についての理解が不十分で説明を要するという例や、システムの対応が追いついておらず2回目以降の残薬調整で日数調整はできるものの削除ができないという例も見受けられ、薬剤師の負担となっている面は否定できないようだ。 

 しかし長期的に捉えれば、リフィル制度は薬局の業務効率化につながる可能性も十分にある。普及が進み、患者・医療機関・薬局がそれぞれリフィル処方箋に慣れていくことができれば、処方箋の枚数削減が真の効果を発揮するだろう。その先に、医師による無駄な診療機会の代わりとして「かかりつけ薬局・薬剤師」が機能するという、医療資源が効率化された未来が待っているかもしれない。

リフィル処方箋の普及がもたらす未来図とは

2か月での普及状況:17.6%の薬局がリフィル処方箋の受付実績あり

 日本保険薬局協会が2022年6月に発表した調査結果では、リフィル処方箋を受け取ったことがあると回答した薬局は17.6%(2,087/11,882)で、回数としては0.053%(9,831/1,870万)であった。

図4. リフィル処方箋の応需実績がある薬局の割合を、法人ごとに尋ねた結果
https://secure.nippon-pa.org/pdf/enq_2022_06.pdf をもとに作成)

 普及途中の段階ではあるものの、分割調剤を行ったことがある薬局が12.1%(93/767)という調査結果(令和3年度 薬局の機能に係る実態調査)も踏まえると、リフィル制度は着々と拡大していると言えるだろう。特に、リフィル処方箋発行のきっかけとして「患者からの要望が多い」が「医師から患者への提案が多い」の3倍近く選択されていたことも考えると、患者の中でのリフィル処方箋の認知度・理解度は徐々に高まっていると言える。

リフィル処方箋の普及によって起こりうる影響・変化

 リフィル処方箋が普及するためには、患者・医療機関・薬局のデメリットを解消していく必要もあるのは事実であるが、前述の通り患者からの注目度は高く、徐々に普及していくことが予想される。その中で、リフィル制度の拡大は今後どのような変化をもたらすだろうか。

 大きな可能性として、オンライン服薬指導とリフィル処方箋の併用が考えられる。服薬指導をオンラインで行うことのメリットは、患者が薬局に行く必要がなくなることだ。家に居たまま、2回目以降に処方された薬剤を受け取ることが可能となる。分割調剤での処方を経験した患者のうち45.5%が「残薬の相談がしやすい」点を「良かった」とし、18.2%が「何度も薬局に行く必要がある」点を「良いと思わなかった」としていたことからも、リフィル処方箋にICTを組み合わせることで分割調剤の魅力を残しながら課題を解消できる可能性が示唆される。

 実は「令和4年度調剤報酬改定の概要」でも、リフィル処方箋の仕組みは「ICTの活用」という章において「情報通信機器を用いた服薬指導の評価の見直し」の次に記載されている。在宅患者オンライン薬剤管理指導に対する評価の向上や、オンライン資格管理システムを活用した調剤に対する評価の新設などが盛り込まれており、リフィル処方箋との併用も視野に入れての対応と推測される。

 このことからもわかるように、今後慢性疾患患者の管理は医療機関・門前薬局ではなく地域の「かかりつけ薬局」主体に移っていくことが想定され、小規模な薬局においてもICTの活用が喫緊の課題となり、患者情報管理システムの導入が求められ始める可能性が高い。

 実際にこの課題への取り組みを開始している企業として、株式会社MG-DX(https://healthtech-db.com/companies/623439564c2d8b60df8e196c)がある。以前より同社が開発・提供していたオンライン服薬指導・処方箋事前送信サービス「薬急便」(https://yqb.jp/)では、リフィル処方箋が交付された患者に向けての新機能が追加された。

図5. オンライン調剤サービス「薬急便」の仕組み
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000093498.html より引用)

 薬急便で薬局にリフィル処方箋を送付した患者に対し、次回来局予定日の7日前に自動で再来店を促すメッセージが配信されるという。他にも、予定日を過ぎても薬局に来なかった患者へのリマインドや服薬期間中の患者へのフォローアップなど、薬局・患者間のコミュニケーションを深める機能の追加が予定されている。

 海外では既に多くの企業がオンラインで薬の補充を注文できるサービスを展開している。日本国内でも、今回リフィル処方箋の制度が導入されたことをきっかけに、そのようなサービスがいくつも登場することが予想される。引き続き今後の動向を注視していきたい。

参考資料

厚生労働省「令和4年度調剤報酬改定の概要」
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000911825.pdf

厚生労働省「平成30年度調剤報酬改定の概要」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000197986.pdf

厚生労働省「保険医療機関及び保険医療養担当規則(平成30年4月1日施行) 様式第二号の二」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000193530.pdf

日本薬剤師会「令和4年度調剤報酬等改定項目③」
https://www.nichiyaku.or.jp/assets/uploads/pharmacy-info/2022/0311-03.pdf

厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第503回)議事次第 個別事項(その8)について 総ー4ー2」令和3年12月8日
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000863579.pdf

日医on-line「オンライン診療リフィル処方に係る診療報酬について - 中川俊夫会長」
https://www.med.or.jp/nichiionline/article/010481.html

一般社団法人 日本保険薬局協会 医療制度検討委員会「リフィル処方箋応需に関する調査報告書」2022年6月
https://secure.nippon-pa.org/pdf/enq_2022_06.pdf

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