ソフトバンクビジョンのヘルスケアセクター投資先一覧_後編

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ソフトバンクビジョンのヘルスケアセクター投資先一覧_後編

はじめに

  • ソフトバンクの純利益が4.9兆円となり、遂にトヨタの純利益を超えました。
  • その中でも圧倒的割合を占めるのが,Softbank Vision Fundによる投資利益です。
  • 今回はそのSoftbank Vision Fundのヘルスケア業界の投資先を2回に分けてご紹介します。

Softbank Vision Fundとは?

ソフトバンクグループの孫正義とサウジアラビアのパブリック・インベストメント・ファンドのムハンマド・ビン・サルマーン副皇太子らによって,2017年5月20日発足した投資ファンドであり,ソフトバンクグループの投資業の中核を担う会社です。Healthtech以外にも,Fintech,Edtechなど,様々な業界のAI Innovationに投資しています。

10xGenomics

設立:2012年
国:米国
事業内容:大規模な細胞集団を100万個以上の細胞に分割し,細胞1つ1つの遺伝子発現の分析を可能とする,高解像度のシーケンシング・プラットフォームの開発をしている,シングルセル解析分野のトップメーカーです。これによって新たな疾患概念が明らかになる可能性もあり,多くの研究期間やバイオ企業によって用いられています。

Alto pharmacy

設立:2015年
国:米国
事業内容:Alto Pharmacyは米国の薬剤処方システムに課題を感じた二人のエンジニアによって,2015年に創業された会社です。医師がAlto を通して薬剤を処方することで,無料で薬剤のデリバリーを受けることでできるサービスや,Altoを通して薬剤師に薬の相談ができるサービスなどを提供することで,米国の薬剤処方の現状の改善に取り組んでいます。

Biofourmis

国:米国
事業内容:バイオフォーミスは,個別化医療の中核となるデジタルセラピューティクス分野において,急速に成長を遂げる企業です。センサーで集めたデータを通して医療者による遠隔モニタリングを可能とし,さらにそうして集められたデータを元に,患者さんにとって最適な医療を考案するデジタルセラピューティクスの技術などの研究開発を行っています。

Collective Health

設立:2013年
国:米国
事業内容:「ヘルスケアへの取り組み,理解,支払いを楽にする」と言うミッションの元で医療保険の代替となるようなサービスを提供している企業です。従業員1人1人の健康プランを管理できるプラットフォーム「Jiff」,医師紹介サービス「One Medical Group」,医師検索・予約サービス「Better Doctor」などを合わせ,雇用主の医療コストを下げることを目指しています。

Encoded Therapeutics

国:米国

事業内容:人工知能を使って遺伝子治療のターゲットとなるDNAをスクリーニングをする技術の開発に取り組む企業です。遺伝子による疾患の発見や,ウイルスによる遺伝子発現調節を利用した治療の研究開発を行っています。

Forward Health

設立:2016年
国:米国
事業内容:医療の仕組みの改善によって,最も医療を必要としている人の元に医療を低価格で届けるサンフランシスコの企業です。アプリケーションを用いた24時間の対応システムや,保険ではなく受けた医療の質に応じた医療費の請求,遺伝子検査やリアルタイムモニタリングなどの最新技術の使用,サービスではなくアウトカムに対する評価制度など,現在の医療制度の抱える個々の問題に対して的確な解決策を打ち,コスト削減に取り組んでいます。

Guardant Health

国:米国
事業内容:従来,がんに対して適切な治療を選択するためには,がん組織を生検で取ってくる必要があり,その場ですぐに選択をするということができないという課題がありました。Guardant Healthはこのような診断を,血液の遺伝子解析によって,血液を採取するだけで可能とするような分析技術の研究開発を行っています。

Insitro

設立:2018年
国:米国
事業内容:オンライン教育プラットフォーム「コーセラ(Coursera)」の共同創業者であり,スタンフォード大学では情報工学の教授であるDaphne Koller氏が共同創業者の会社です。Insitroは,機械学習によって健康な細胞とそうでない細胞の違いを研究することで,多様な疾患への治療薬開発に取り組む企業です。

Karius

設立:2013年
国:オランダ
事業内容:「Dynamic Single-Molecule and Cell Avidity」という技術によって細胞や分子レベルでの解析を可能とする技術を開発し,この技術によってこれまでに知られなかった疾患の発生機序の解明を目指している企業です。

Pear Therapeutics

設立:2013年
国:米国
事業内容:アプリによる中毒患者への認知行動療法の12週間のプログラム「reSET」「reSET-O」,不眠症の治療用アプリ「Somryst」など,精神神経疾患の治療の補助となるソフトウェアの開発に従事している企業です。

まとめ

Softbank Vision Fundのホームページには「The technologies we are investing in have the potential to profoundly benefit society through radical improvements in products and services, reduced costs, and improved efficiency.(我々が投資している技術は,革新的な製品やサービス,コストの削減,効率化などを通じて社会を根本から改善する潜在能力を秘めています。)」と書かれています。

これらの投資先は各々独自のAI技術によってヘルスケアの領域から社会を改善する力を秘めていると言えます。

10x GenomicsやEncoded Therapeutics,Gurdant Healthのように独自の技術で診療をより正確で効率的なものにすると言う技術が多いですが,Alto pharmacyのような薬剤のロジスティクスにフォーカスした企業や,Collective Healthのような医療アクセスにターゲットをおいた企業なども見られ,AI技術の応用にも幅の広さを感じました。

次回は後半の11社をまとめていきます。

医学生。医学に留まらない医療に興味があり,国際保健や地域医療でのキャリアを志している。医学の中では精神科が興味分野。好物はチーズで趣味は競技かるた。