ソフトバンクビジョンのヘルスケアセクター投資先一覧 前編

投稿日

最終更新日

  • VC
  • 投資
  • SoftBank

ソフトバンクビジョンのヘルスケアセクター投資先一覧 前編

はじめに

ソフトバンクの純利益が4.9兆円となり、遂にトヨタの純利益を超えました。 その中でも圧倒的割合を占めるのが,Softbank Vision Fundによる投資利益です。

今回はそのSoftBank Vision Fundのヘルスケア業界の投資先を2回に分けてご紹介します。 本記事はその後編です。

SoftBank Vision Fundとは?

  • ソフトバンクグループの孫正義とサウジアラビアのパブリック・インベストメント・ファンドのムハンマド・ビン・サルマーン副皇太子らによって,2017年5月20日発足した投資ファンドであり,ソフトバンクグループの投資業の中核を担う会社です。
  • Healthtech以外にも,Fintech,Edtechなど,様々な業界のAI Innovationに投資しています。

本記事で紹介する投資先の企業名一覧はこちら

  1. Ping An Good Doctor
  2. Ping An Health Konnect
  3. Relay Therapeutics
  4. Repertoire Immune medicines
  5. Roivant Sciences
  6. Seer
  7. Tempo
  8. Tessera
  9. VIR
  10. Vividion Therapeutics
  11. Xtalpi

Ping An Good Doctor

  • 設立:2014年
  • 国:中国
  • 事業内容:保険,銀行,投資,インターネット金融サービスなどの領域で拡大してきた平安保険グループの子会社に当たる平安医好生(Ping An Good Doctor)。O2Oの健康総合プラットフォームとして,オンライン問診や診療予約などの医療サービス,処方薬の宅配サービス,健康情報メディアなど幅広く個人の健康管理のサービスを提供しています。患者と医師の間で医療事故によるトラブルが多く,また大型の医療機関では人が殺到して待ち時間が長いと言う問題のあった中国で,このサービスはおおきく流行しました。

Ping An Health Konnect

  • 設立:2016年
  • 国:中国
  • 事業内容:同じく平安保険グループの子会社に当たる Ping An HealthKonnect は,これまで紙媒体をベースにした煩雑な手続きを要していた医療保険に纏わる業務を,一括してデジタル化したプラットフォームを提供する会社であり,医療保障庁や商業保険会社など,官民を問わず幅広く活用されています。

Relay Therapeutics

  • 設立:2016年
  • 国:米国
  • 事業内容:Relay Therapeuticsは,分子レベルでのタンパク質を可視化する技術,近年大きな進歩を遂げたゲノムデータ,そして分子レベルでのタンパク質の動きのシミュレーションを可能とする計算科学技術を統合した,Dynamoプラットフォームを開発している企業です。これによって,これまで難易度の高かった,タンパク質を分子レベルでターゲットにした創薬を可能にしています。

Repertoire Immune medicines

  • 設立:2015年
  • 国:米国
  • 事業内容:DECODETMおよびDEPLOYという一連の技術により,T細胞と抗原提示細胞の間の相互作用の詳細な解析をターゲットとし,T細胞に強力な免疫調整物質を結合させる新しい技術を開発している企業です。これにより、T細胞の標的追跡能力を利用して、IL-15やIL-12などの強力なサイトカインを腫瘍に直接送達することを可能としました。

Roivant Sciences

  • 設立:2014年
  • 国:米国
  • 事業内容:Roivant Sciencesは他の製薬会社で失敗とされ,途中で臨床試験を諦めてしまったような薬を買い取り,子会社1つ1つがその開発・臨床試験を引き継いで成功させていき,元の会社と利益を分配するというビジネスモデルでの成長を目指す企業です。膨大な臨床試験の公開データベースから,AIを用いた「薬群マッピング」戦略を通して商業的実用化の可能性を探っていくことで見込みのある薬剤開発の絞り込みを可能としています。

Seer

  • 設立:2017年
  • 国:米国
  • 事業内容:生体内のプロテオームの観察技術を開発している企業です。これにより,個人のプロテオームデータを集積し,その解析によって個人の疾患の罹患リスクの予測を可能とする,いわゆる予防医療への応用や,プロテオームの観察を用いた新たな治療技術の開発などを目指しています。

Tempo

  • 設立:2015年
  • 国:米国
  • 事業内容:パーソナルガイダンスを備えたホームフィットネスプラットフォームを設計・開発している企業です。Tempoのサービスには,3Dモーションセンサーとその解析を行うAIが搭載されており,これらによって重要となる25の関節の動きを分析し,トレーニングフォームをフィードバックが行われます。また,エリートトレーナーによるトレーニングのヘルプも合わせて提供されるサービスです。

Tessera

  • 設立:2018年
  • 国:米国
  • 事業内容:Tessera Therapeuticsは,”Gene Writing”というこれまでにない革新的な技術を通して,新しい治療法の開発に取り組んでいる企業です。遺伝子治療の領域ではCAR-T 細胞治療などの”Gene Therapy”,CRISPERなどの”Gene Editing”という手法がこれまでに開発されてきていましたが,それらに続く第3の遺伝子治療として,Tesseraが開発をしています。

VIR

  • 設立:2016年
  • 国:米国
  • 事業内容:Vir Biotechnology は免疫学における最先端の知見と最新の科学技術を融合させることで感染症の撲滅に取り組む企業です。急速に広まるような感染症や,治療法がなかった感染症に対して,その生存者に生じている希少な抗体を同定したり,多様なT細胞を長期間活性化することで知られるサイトメガロウイルスワクチンの治療応用の開発をしたりするなど,様々な研究開発を行っています。

Vividion Therapeutics

設立:2013年 国:米国 事業内容:これまで解明されていなかったようなレベルでの分子とタンパク質の相互作用の研究を可能にする”Chemoproteome”という独自の技術を通して,未だ適切な治療のないがんや免疫疾患などに苦しむ患者さんに対して,新たな治療を提供することを目指して研究開発に取り組む企業です。

Xtalpi

設立:2014年 国:米国 事業内容:薬剤の結晶化形態を予測するAI技術を活用した薬剤開発の効率・成功率を向上させるようなプログラムを通して,製薬企業と共に新たな薬剤の開発研究に取り組む,米国と中国を拠点とするバイオテック企業です。

まとめ

今回はSoftbank Vision Fundのまとめ記事の前編でした。 今回ご紹介した企業は,平安保険グループのPing An Good Doctor ,Ping An HealthKonnectなどの医療サービス・医療保険の領域の企業や,Tempoのようなフィットネス領域の企業なども見られたものの,大半がプロテオーム解析や遺伝子治療のようなBiotechや,臨床試験データの解析AIといった,製薬業界の企業となりました。 一言にHealthtechと言っても,医療者・保険者・患者のレベルでの医療提供制度を変革する企業や,製薬のプロセスを変革する企業,新しい治療技術を開発するBiotech企業など,様々な分野があり,Softbank Vision Fundの投資先調査を通して,各々でInnovatonを起こすために邁進している企業の存在を知ることができました。 後編では引き続き、残りの11社の概要をまとめていきます。

執筆者: 中西一貴

医学生。医学に留まらない医療に興味があり,国際保健や地域医療でのキャリアを志している。医学の中では精神科が興味分野。好物はチーズで趣味は競技かるた。