世界のオンライン診療の事例
世界ではコロナの影響を受けて遠隔診療が進んでいる。本項では遠隔診療が進んでいるアメリカのオンライン診療ツールや海外で用いられているAI遠隔医療について記載する。また、海外の規制動向や日本の遠隔医療における課題についても挙げる
アメリカではオンライン診療を円滑化する医療機器や多様なプラットフォームが利用されている
アメリカでは家から病院が遠いことやクリニックが混雑することがコロナ前から課題とされており、オンライン診療が進んできた。特に病気の子供を載せて運転し、待機室で長時間待つ間に他の人から感染することへの不安は親のペインポイントである。
以下ではアメリカで利用されているオンライン診療ツールの事例を4つ挙げて説明する。
1. TytoCare (タイトーケア)
TytoCareは口や耳の撮影、聴診器として機能するデバイスである。利用方法としてはTytoAppアプリに症状を記入した後に指定部位を撮影して事前に医師に送る、またライブで医師に見てもらうこともできる。
サービス名 | Tytocare |
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規模 | Google Playstoreでのアプリ導入数が50,000以上 |
価格 | $300 |
入手方法 | オンラインやBestBuyなどの家電量販店、医師処方なし |
2. Amwell (アムウェル)
Amwellはオンライン診療を受けるためのオンラインプラットフォームである。患者はアプリを通して診断を受けたい時に医師を選択して利用することができる。医師は診断しながら過去の患者記録を電子データ等と連携してみることが可能で、GoogleのAPIを介して会話の字幕化と翻訳ができ、英語を母語としない人も利用することができる。
サービス名 | Amwell |
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規模 | アプリの導入件数は300万 |
価格 | 1回での利用は保険適用前で$79 |
対象サービス | プライマリーケア、精神科、小児科等全般 |
3. Teladoc (テラドック)
Teladocはオンライン診療を受けるためのオンラインプラットフォームである。患者はアプリを入れて、診療を受けたい時に医師を選択して、診療を受けることができる。診療後は近くの薬局で薬を受け取ることができる。Teladoc Health社の特徴としては海外への進出も進めており、日本でも2021年に遠隔医療システムを販売していくことを発表した。
サービス名 | Teladoc |
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規模 | 2021年に提供した累計オンライン医療は1500万件 |
価格 | 保険適用前の価格は$75前後 |
対象サービス | プライマリーケア、精神科、小児科等全般 |
4. 98POINT6
98POINT6はオンライン診療をチャットーベースで受けることができるアプリである。問診段階で患者の情報をAIが分析し、適切な医師を選択するのが特徴である。その後医師とテキストベースで診療を受けることができる。
サービス名 | 98POINT6 |
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規模 | Google Playstoreの導入件数は100,000以上 |
価格 | 年会費が$120、1回当たり$1 |
対象サービス | プライマリーケア、精神科、小児科等全般 |
海外の遠隔医療では、言語分析AIだけでなく画像分析やデータ分析のAIが散見される
日本ではUbieのAI問診などがあげられるが、AIの遠隔医療への活用は限定的である。海外では観測・計測、診察、治療等の領域でAIが活用されている。
1. MiiSkin (ミースキン)
MiiSkinは黒子を記録し、肌の経年変化を記録するために設計された、AI搭載スマートフォンアプリである。皮膚(顔、全身等)の撮影をすると、画像をAIが解析する。
サービス名 | MiiSkin |
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規模 | アプリ導入件数は700,000件 |
価格 | 1ヶ月あたり$6 |
対象地域 | EU、アメリカ |
2. VizAi (ヴィズエイアイ)
VizAiは医師と医師での連携に用いる診断プラットフォームである。AIが脳画像を解析し、脳卒中の疑いの早期発見や発生時の正確な情報を医療従事者に提供するトリアージする。脳卒中発生時はいかに迅速に血栓を取り除けるかが回復への、そして死や後遺症を回避するための鍵であり、そのために用いられる。
サービス名 | VizAi |
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規模 | 導入件数は500-1000 |
価格 | 不明 |
対象地域 | アメリカ |
3. iSyncWave(アイシンクウェイブ)
iSyncWaveはAI デジタルブレインヘルスプラットフォームによる診断と治療を提供するデバイスである。主に神経変性疾患、アルツハイマー、認知症患者に利用される。ヘルメットで脳内を診断した上で、分析をもとに脳波を与え治療する。
サービス名 | iSyncWave |
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規模 | 不明 |
価格 | $26,000 |
対象地域 | 韓国 |
地域別ではアメリカの規制緩和が顕著である
(厚生労働省の調べより)
米国におけるオンライン診療の発展は顕著であり、これは国策や学会の後押しに加え、COVID流行禍での規制緩和の影響によるものであると考えられる。
保険点数の差や処方における負担が日本のオンライン診療拡大における課題であると考えられる
日本ではコロナの特例としてオンライン診療と対面診療の保険点数の差が縮まりつつあるが、その差は大きく医療従事者にとっては大きな負担となっている。診療所で初診の場合、対面診療で356点つくのに対してオンライン診療は282点と差がある。さらに、再診の場合対面診療が418点に対してオンライン診療は288点で、金額にすると1300円の差がある。
また処方に関してもコロナで規制が緩和したが、依然として患者に原本を郵送する/処方箋を薬局に FAX を送ることでしか処方箋を受け渡しできず、病院・クリニック側の手間がかかるのも課題となっている。ただし、電子処方箋を導入する動きは出ており、厚生労働省の発表によると、2023年1月に運用開始することを目処に進めている。
現状日本においてオンライン診療は浸透していないが、コロナによる規制緩和や電子化の動きによって徐々に浸透していくと考えられる。特に、今後高齢化が進むにつれて遠隔での医療の需要が高まると思われ、今後の動向には注目である。