次世代医療基盤法とは?
医療情報データをより活用しやすく
昨年より内閣府において次世代医療基盤法についての議論が行われている。
次世代医療基盤法とは医療分野の研究開発のため、医療情報を匿名加工処理を行なって収集するための法律であり、2018年5月に施行されたこの法律では以下のような2つの特徴がある。
1. 国が認定した基準を満たしている事業者が匿名加工を行う
2. 患者の医療情報提供がオプトアウト方式になった
(https://jilis.org/report/2023/jilisreport-vol5no3.pdf 参照)
この法に基づき、情報収集は医療機関が患者本人にその旨を伝えた上で、提供を拒否されない限りその情報を認定匿名加工医療情報作成事業者(認定事業者)として認可を得た事業者に提供することができる。
民間医療機関が多い日本、情報がバラバラに
医療情報を活用した研究の重要性が顕著となっている中、民間の医療施設が多い日本において情報の収集・記録方法の統一が課題となっている。
よって国から認可を受けた事業者が、病院から情報提供を受けそれらを患者個人が特定できない匿名情報として加工することでデータセットとして研究機関や病院に対して提供することを可能としたのだ。
しかしながら、匿名加工された情報はその情報の少なさが故に活用しきれない場合がある。
創薬や臨床研究等の医療分野においてRWDの発展は必要不可欠である一方、個人情報の取り扱いについても重要視されている。
本記事では「匿名加工情報」と「仮名加工情報」の違いについてそれぞれの特徴に触れながら紹介する。
なぜ改正するのか?
匿名情報の難点
次世代医療加工情報において、各個人の医療情報は匿名加工医療情報となり研究に利用されている。
しかしながら、匿名加工情報は生データ(元の医療情報)と照会できないよう加工する必要があるため元を辿ることができないよう数字に幅を持たせたり、希少疾患など個人が特定されるような情報は伏せられたりする。
ゆえにデータを利用して研究するにあたって以下のような課題が生じる。
・同一患者の他の追加データを得ることができない
・データに幅があることによって影響が生じる場合がある
・データが正しいか再度確認することができない
・希少疾患の研究が難しい
よってデータを収集しても利活用が難しかった。
医療研究のニーズに応えた仮名加工情報とは?
匿名加工情報の課題点を受け、誕生したのが仮名加工情報だ。
仮名加工情報とは他の情報と照会しない限り特定の個人が識別できない情報を指す。
つまり、ID等で氏名を伏せるなどの処置をとりつつ、匿名加工情報とは異なりその他のデータが必要な際には得られるようなデータセットなのだ。このような仕組みは、医療研究のニーズに応えていると言えるだろう。
よって匿名加工情報は個人情報に当たらないのに対し、仮名加工情報は個人情報に該当するため、
・利用目的の変更の制限
・情報漏洩の際の報告・本人への通知
・開示・利用停止等の請求対応
が求められる他、データの当該者を特定することは禁じられている。
(https://j-net21.smrj.go.jp/law/20221228.html 参照)
仮名加工情報の懸念点
前述の通り、仮名加工情報は匿名加工情報とは異なり他のデータと照合することで、個人を特定することができる。
このような行為は禁止されているが、セキュリティーの強化により安全性を確保することは必要不可欠である。
しかしながら、研究において、仮名加工情報は有用であり今後の医療研究の発展に寄与することは間違いない。
今後も注目していきたいと思う。
参考文献
https://www.ldi.or.jp/law
https://www8.cao.go.jp/iryou/gaiyou/pdf/seidonogaiyou.pdf
https://j-net21.smrj.go.jp/law/20221228.html
https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq1-q14-1/
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/data_rikatsuyou/jisedai_iryokiban_wg/dai7/siryou1.pdf
https://jilis.org/report/2023/jilisreport-vol5no3.pdf