メディカル・バイオ・ヘルスケアVC:その2

投稿日

最終更新日

  • NVCC
  • SARP
  • BNV

メディカル・バイオ・ヘルスケアVC:その2

日本のメディカル・バイオ・ヘルスケア領域のVCの活動状況は??

  • 過去10年強の間で、日本におけるバイオテクノロジーのスタートアップ企業数は約3倍に増加しています(2008年・2018年比)。
  • 過去5年間で、日本の診断・モニタリング技術や医療機器の企業に対するVC投資が4倍以上増加しています。
  • 今回は日本におけるメディカル・バイオ・ヘルスケアVC具体的な投資事例についてまとめていきます。

Beyond Next Ventures株式会社

https://beyondnextventures.com/jp/

●概要 
2014年8月に代表取締役社長である伊藤 毅氏らによって創業しました。「起業家と共に、大学等の高度な技術シーズを実用化し、新産業創出とチャレンジする人材の輩出により社会に貢献する」をミッションとして、日本の高度な研究成果の実用化、グローバルマーケットを狙う大学・研究所発ベンチャーの設立を目指し、事業化に取り組んでいます。技術シーズの段階から、大学、各省庁、協力者、専門家、投資家、事業会社との良質なネットワークを活かすことが可能です。シェア型ウェットラボ「Beyond BioLAB TOKYO」運営やシードアクセラレーションプログラム「BRAVE」も運営しています。ファンドサイズとしてはBNV2号ファンドが総額165億円となっています。

●具体的な投資企業
・リベロセロ株式会社:無細胞膜タンパク質調製技術および非天然型アミノ酸導入技術を用いた創薬を目指すベンチャー。
・MabGenesis株式会社:革新的モノクローナル技術の取得プラットフォーム技術でニーズに合致したヒト及びアニマルモノクローナル抗体を提供する宮崎大学および藤田医科大学発ベンチャー。
・CYBERDYNE株式会社:ロボットスーツHALの開発を行う筑波大学発ベンチャー。
・Spiber株式会社:人工クモ糸、新規タンパク質素材の開発を行う慶應義塾大学発ベンチャー。
・リバーフィールド㈱:手術支援ロボットの開発を行う東京工業大学・東京医科歯科大学発ベンチャー。
・株式会社CureApp:禁煙・脂肪肝治療を行うスマートフォンアプリによる医療機器開発を行う慶應義塾大学関連ベンチャー。

●投資ステージ 
スタートアップおよびアーリーステージの企業を中心に投資し、創業当初から上場まで一貫して支援しています

●参考資料
https://beyondnextventures.com/jp/

日本ベンチャーキャピタル株式会社

https://www.nvcc.co.jp/

●概要 
1996年2月に自らベンチャー企業を興し成功をおさめている事業家や、ベンチャー支援に熱意を持つ大手企業の経営者が創業メンバーとなり設立されました。現在の社長は多賀谷実氏です。創業初期の段階から出資し、リードVCとして参画し、経営に必要な助言や販売面でのアドバイス、上場に関するサポートをはじめ幅広い支援を行うなど、ベンチャーと共に歩みながら、数多くの企業が上場してきました。 ファンドサイズとしてはNVCC9号ファンド(2020年設立)が94億円という規模でした。

●具体的な投資企業
・クオリプス株式会社 
・株式会社Revorf Chordia 
・Therapeutics株式会社 
・株式会社PREVENT 
・KOTAIバイオテクノロジーズ株式会社
・株式会社ペルセウスプロテオミクス
など多数あります。

●投資ステージ 
スタートアップおよびアーリーステージの企業を中心に投資し、創業当初から上場まで一貫して支援しています。

●参考資料
https://www.nvcc.co.jp/

大鵬イノベーションズ合同会社

https://www.taihoinnovations.com/about/

●概要 
2019年5月に谷川 清氏を代表として設立されています。事業内容はインキュベーション事業、ベンチャーキャピタル事業 です。大鵬イノベーションズは大鵬薬品のコーポレートベンチャーキャピタルとして、医療用からコンシューマーヘルスケア領域におけるシードからアーリーステージのスタートアップ投資を行っています。加えて、起業を目指したアカデミア研究者と共同でインキュベーション研究も実施しています。世界の人びとの笑顔のために、起業家や研究者の皆さまと一緒になってイノベーションの創造と社会実装に向けて取り組んでいます。ファンドサイズはネット記事では不明でした。

●具体的な投資企業
・GAIA BioMedicine
・Myrodia Therapeutics株式会社
など多数

●投資ステージ 
①ベンチャー投資 投資ステージ:Seed~Series A/ 前臨床~Phase 1 
②インキュベーション 起業を視野にしたアカデミアとの共同研究(1~1.5年):疾患動物モデルでのPOC取得、初期の安全性試験、CMC、知財強化/戦略策定、対象疾患選定、開発/ビジネスプラン策定 等 新会社を設立する 
③アクセラレーションプログラム:アカデミアのシーズ発掘・商業化に向けたメンタリング・起業支援 等

●参考資料
https://www.taihoinnovations.com/

アクシル・キャピタル・アドバイザーズ株式会社

https://www.axilcapital.com/

●概要 

みずほ、日本政府、グローバル製薬会社、国内外の投資家らによる協力の下、フレデリック・シェイン氏が2017年にみずほから独立して東京都にて設立しました。日本と世界のバイオテクノロジーエコシステムとの間に相乗効果を生み出し、企業と投資家に大きな利益をもたらすことを目標としています。 ​ バイオメディカル&ヘルスケア技術投資を専門とし、早期ベンチャーの成長を支援します。 支援分野は再生医療や標準的な治療法、将来の医療(AI、ロボット工学、分散コンピューティングなど)の根幹となる分野横断的な技術まで、ライフサイエンスのあらゆる分野に及びます。ファンドサイズはネット記事では不明でした。 

●具体的な投資企業
・ペルセウスプロテオミクス
・C4 Therapeutics
・Frequency Therapeutics
など多数

●投資ステージ 
バイオメディカル&ヘルスケア技術投資を専門とし、早期ベンチャーの成長を支援します。 再生医療や標準的な治療法、将来の医療(AI、ロボット工学、分散コンピューティングなど)の根幹となる分野横断的な技術まで、ライフサイエンスのあらゆる分野に及びます。

●参考資料
https://www.axilcapital.com/

東京大学協創プラットフォーム開発株式会社

https://www.utokyo-ipc.co.jp/

●概要 
2016年1月に東京で設立、代表取締役は大泉 克彦氏が行なっています。東京大学のイノベーションエコシステム拡大を担う会社で、起業支援、投資事業、コーポレートイノベーション支援という3つの活動を通じ、東大から世界のイノベーションを加速します。ベンチャー投資だけでなく、「東大IPC 1stRound」という 創業3年以内の起業家や起業前のチームに対し、 事業資金・ハンズオン支援・東大やパートナー企業のリソースをZero Equityで提供するプログラムを提供しており、採択先に対しては、ビジネス推進から資金調達まで東大IPCが並走して支援しています。ファンドサイズとしては、1号ファンドが240億円の規模で運営されています。

●具体的な投資企業
・株式会社クリュートメディカルシステムズ:ヘッドマウント型自動視野検査装置
・アキュルナ株式会社:核酸医薬の薬物輸送システム
・タグシクス・バイオ株式会社:人工的DNAアダプまー創薬
・アドリアカイム株式会社:急性心筋梗塞後の重症化を減らす治療機器開発
など多数あります。

●投資ステージ 
スタートアップおよびアーリーステージの企業を中心に投資し、創業当初から上場まで一貫して支援しています。ベンチャーキャピタルから外部調達をする前のチームあるいは設立3年以内のベンチャーが 理想的な形で最初の資金調達を達成できる環境を提供するプログラムである「1stRound 」が特徴的です。

●参考資料
https://www.utokyo-ipc.co.jp/

合同会社SARR

https://sarr-llc.com/

●概要 
2011年4月に設立し、代表執行社員は松田一敬氏です。科学技術の商業化、起業家支援、地域おこし、の3つを活動の中心に掲げています。ビジネスメンタリング、スタートアップサポート、起業家精神のトレーニングなどを事業としています。ファンドサイズはネット記事では不明でした。 

●具体的な投資企業
・AlzMed,Inc.:従来のアミロイドβ・タウ仮説とは全く異なるドレブリンを用いたアルツハイマー治療薬および早期診断薬を開発中。 
・AWAKENS:個人がゲノムデータを保有し、健康、性格等をチェックするパーソナルゲノムサービスを展開 
・Melody International 本社:そばに医師がいなくても胎児の健康状態を診ることができるモバイル胎児モニターiCTGを開発・製造。
・SkySea Pharma (SSP) :世界に1億人いると言われる自閉スペクトラム症(ASD)治療薬を開発中。

●投資ステージ 
記載なし

●参考資料
https://sarr-llc.com/

NEWTON BIOCAPITAL PARTNERS

https://newtonbiocapital.com/ja/

●概要 
Alain Parthoensを代表とするベルギーで設立されたベンチャーキャピタルで、ベルギー、オランダ、ドイツ、フランスを含むヨーロッパ大陸の主要国と日本において、慢性疾患の予防と治療に関わるバイオテクノロジーやライフサイエンスのプロジェクトに焦点を当てた投資を行っています。 ニュートン バイオキャピタルの使命は、慢性疾患を患っている方のQOLを改善し、革新的でかつ経済的にリーズナブルな解決策の創出を支援することと言っています。ファンドサイズは147億円の規模で運用されています。

●具体的な投資企業
・DIM3:腸や点滴からの栄養をモニターし、それを改善するアプリケーションを開発すること
・EPICS THERAPEUTICS:RNAエピジェネティクスに基づいて、がんにおけるファースト・イン・クラスの医薬品開発 
・SYNERGIA:薬剤耐性のてんかんの患者さんがMRIによる検査の時でも安全に装着できる次世代の小型埋め込み型神経刺激装置を開発
・ChromaCure:がんにおいてファースト・イン・クラスの低分子薬の研究・開発
・Acticor Biotech:INSERM(インサーム)からスピンオフしたベンチャー企業です。虚血性脳卒中や肺塞栓症を含む急性血栓性疾患の治療における革新的な治療法の開発
・Sequana Medical:肝疾患、心不全、悪性腹水症やその他の体液性不均衡障害の管理のための革新的な治療ソリューションの開発に焦点を当てた医療機器
・E4Th:PPR(pentatricopeptide repeat)タンパク質プラットフォーム技術をベースとした独自のDNA/RNA編集技術の研究開発
など多数。

●投資ステージ 
有望なアーリーステージのプロジェクトや、有望な技術が存在していながら顧みられない、過小評価されているレイトステージにあるプロジェクトを支援することです。

●参考資料
https://newtonbiocapital.com/ja/

慶應イノベーション・イニシアティブ

https://www.keio-innovation.co.jp/

●概要 
2015年12月に東京都で山岸 広太郎氏を代表取締役として設立されております。その研究が、その発明が、そのイノベーションが、社会を変えるまで、をミッションに掲げています。株主は株式会社慶應学術事業会 80% 野村ホールディングス株式会社 20%です。一号ファンドが45億円、二号ファンドが103億円となっています。

●具体的な投資企業
・クリングルファーマ株式会社:肝細胞増殖因子の組換えタンパク質の医薬品開発を行う大阪大学発創薬ベンチャー。
・CureApp株式会社:医療機関向けの「CureApp SC ニコチン依存症治療アプリ及びCOチェッカー」の開発
・Heartseed株式会社:iPS細胞を用いた心筋再生医療の実現化を目指している
・ひむかAMファーマ株式会社:改良型アドレノメデュリンの新規創薬シーズの研究・開発。
・AdipoSeeds株式会社:脂肪組織に由来する細胞を用いた再生医療等製品の実用化に向けた研究開発製造パートナーへの技術ライセンス提供。
・IDACセラノスティクス株式会社:抗体医薬品等の研究開発
・株式会社坪田ラボ:近視・ドライアイ・老眼の医療機器及び医薬品等の開発。
・株式会社セルージョン:水疱性角膜症の治療を目的としたiPS細胞由来角膜内皮代替細胞を用いた細胞治療の開発。

●投資ステージ 
研究成果を活用したベンチャー企業の投資育成に取り組んでいます。スタートアップおよびアーリーステージなど創業当初から上場まで一貫して支援しているようです。。

●参考資料
https://www.keio-innovation.co.jp/

まとめ

  • 近年は国内外でヘルスケア領域の投資が増加傾向です
  • しかしながら日本国内企業で海外からの投資を受けている企業は少ない状況です。
  • 今後のグローバル展開を見据える上でも、国内外でのヘルスケア領域投資の動向には注意が必要です。

【参考文献】
https://capimedi.com/20210709pr/
https://capimedi.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/06/Impact-Report-2020_CMV.pdf
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC3127G0R30C21A5000000/
https://fundpress.jp/clumn_vc-investcategoly/
https://www.siif.or.jp/assets/pdf/publication/2019_HNF_repot_final.pdf
https://www.siif.or.jp/assets/pdf/publication/2018_NHF_report.pdf
https://www.shonan-health-innovation-park.com/siteassets/pdfs/news/innovation-quarterly/vol.2_2021-04/2021-04-innovation-quarterly-03_vcreport_j.pdf

脳神経内科医師。予防医療(神経、宇宙、死生観、生活習慣病)が最大の関心事。 産官学民で力を合わせて持続的に楽しく、社会課題の解決ができればと夢見ている。 好きな食べ物は小豆(粒あん派)と果物サラダ。 学生時代に100kmマラソンとガンジス川でのバタフライを友人と達成している。