Apple Watchをはじめ、ウェアラブルデバイスの活用機会は増えている
様々なヘルスケアビジネスや臨床研究の場面で、Apple watchをウェアラブルデバイスを活用する事例はとても多くなってきています。 一方で、結局どのウェアラブルデバイスが良いのかという比較情報はまだまだ世の中に乏しいです。
ウェアラブルデバイスは腕時計型が過半数を占める
下図のIDCレポートの通り,ウェアラブルデバイスの主軸は腕時計型となってきており,2018年時点では腕時計型がその過半数のシェアを占めている状況です。 近年はAirpodsに代表されるヒアラブルデバイスの市場の成長も著しいです。 本記事では、代表格と言える腕時計型ウェアラブルデバイスを比較し、今後のヘルスケアビジネスの場面での活用が増えそうなデバイスを検討します。
世界ウェアラブルデバイス タイプ別出荷台数予測および年間平均成長率(タイプ別、単位: 百万台)(クリックで拡大) 出典:IDC Japan
取り上げるウェアラブルデバイスの紹介
下に示すリストバンド型ウェアラブルデバイスの市場シェアにおける上位企業の比較を行います。
- Apple watch
- Garmin
- Fitbit
- mi band
- Omron Heart Guide
リストバンド型ウェアラブルデバイスの出荷台数ベースの市場シェア(出典:IDCの公表データをグラフ化)
Apple watch
2020年第4四半期のスマートウォッチ市場のシェア(ソース:https://iphone-mania.jp/news-351875/) 2020年9月16日02:00(JST)に、新シリーズのSeries 6とSEが発表されたこともあり,スマートウォッチ市場においてはAppleが圧倒的なシェアを誇っています。ここでは,新シリーズのSeries6について見ていきます。
値段・発売時期
今回取り扱っているSeries6 に関しては,値段:47,080円(税込)発売日:2020年9月18日です。参考までに,各シリーズの発売日・値段などの一覧を以下に示します。(※Apple watchにはSeries 3以降GPS(ジーピーエス)モデルとGPS+CELLULAR(セルラー)モデルが存在し,後者には携帯電話通信機能が掲載されているのでWiFiなしに通信が出来るというメリットが存在します。)
機能
Apple watchは世代が変わっていく中で様々な機能を兼ね備えてきました。 今回はその内のヘルスケアの領域での測定可能項目についてご紹介します。 GPSを活用したランニングやウォーキングのログ 睡眠時も含めた心拍数のモニタリング(光学式心拍センサー) 心房細動などの不整脈の徴候が見られた際のアラート(電気心拍センサー) 心電図アプリケーションによる波形,診断結果,日時の記録 転倒検出による緊急通報サービス(加速度センサー,ジャイロスコープ) メディカルIDの救急などでの利用 iPhoneのヘルスケアレコード 環境音測定 血中酸素ウェルネスアプリ
論文数
Pubmedで検索したところ,Apple watchの絡む論文件数は178でした。
参考
https://www.apple.com/jp/healthcare/apple-watch/ https://www.nojima.co.jp/support/koneta/26973/
Garmin(vivoactive 4)
もともとGPS機器を手がけるメーカーであったGarminは,気圧センサーなども併せてアウトドアウォッチのメーカーとして定評があります。また,その他アスリート用に特化したForeAthlete や女性用にデザインされたLylyなど,非常に多くの種類のスマートウォッチを出しています。今回はその中でもスマートウオッチとしての機能に優れるとされるGarmin vivoシリーズの最新版vivoactive4について見ていこうと思います。 https://gps-run-watch.com/garmin/
値段・発売時期
値段:43780円(税込) 発売時期:2019年10月〜
機能
以下の様な測定項目がありますが,特にGarminが強みとするのは
エネルギーモニタリング 生理周期トラッキング 水分補給追跡 光学式心拍計 呼吸追跡 スリープモニタリング ストレス追跡
論文数
Pubmedで検索したところ,Garminの絡む論文件数は172でした。
参考
https://www.rakuten.ne.jp/gold/gsx/special/garmin/ https://hashikan.net/archives/garmin_gps_watch.html#index_id5
Fitbit sense
Fitbitはシンプルな機能とデザインが人気のフィットネス向けスマートウォッチです。2019年にはGoogleが買収しています。ここではFitbitシリーズの最新版であるFitbit senseに焦点を当てて見ていこうと思います。
- 値段・発売時期
- 値段:32480円(税込)
- 発売時期:2020年9月〜
機能
以下の様な測定項目がありますが,特に皮膚電気活動,心電図の2点に特徴があると言えそうです。皮膚電気活動測定は,装着者のストレスによって生じる精神性発汗を計測できる機能であり,ストレスが一定値に達するとユーザーに対してストレスを軽減するためのヒントがアプリに表示されるようです。
皮膚電気活動センサー(ストレス) 心電図 皮膚温度センサー 心拍センサー 運動トラッキング 睡眠の質の測定 Google アシスタントやAlexaの搭載による就寝リマインダーなど (Premiumでは)個別にカスタマイズされた分析や睡眠や栄養状態の改善に向けたガイド付きプログラムなど
論文数
Pubmedで検索したところ,Fitbitの絡む論文件数は799でした。
参考
https://www.fitbit.com/jp/sense
Xiaomi Mi Smart Band 5(日本版)
縦型の大画面が特徴的なシャオミのMi Bandは,Amazon・楽天・Yahoo!ショッピングなど各ECサイトの売れ筋ランキング(2020年12月5日時点)をもとにして作ったとされるこちらのサイトでは栄えある1位に輝いています。 https://my-best.com/5382#toc-2 今回は,そのMi Bandシリーズの中で最新シリーズのSmart Band 5について見ていこうと思います。
値段・発売時期
なんと言ってもMi Bandシリーズはスマートウォッチとしては異例の値段の低さが強みと言えます。
- 値段:4490円(税込)
- 発売時期:2020年1月〜
機能
低い値段ながら,Smart Bandのヘルスケア測定機能としては以下のリストがあるようです。測定している項目としては心拍数,睡眠レベル程度ですが,そこから様々な機能を作り出している点にオリジナリティがあると言えそうです。
11種類の運動メニュー(ただし,測定されるのは心拍数や運動時間くらい) 24時間心拍数モニタリング 24時間睡眠モニタリング PAI(性別、年齢、心拍数などで測定する活動指数) ストレスモニタリング 生理周期トラッキング 呼吸エクササイズ Mi Fitアプリとのデータ連携
論文数
Pubmedで検索したところ,Garminの絡む論文件数は3でした。
参考
https://www.mi.com/jp/mi-smart-band-5/ その他にも,節電モードにしておけば14日ほど電池が持つというその燃費の良さも特徴と言えるでしょう。コストパフォーマンスという視点で見れば申し分ないと言えそうですね。
オムロン ウェアラブル血圧計Heart Guide
オムロンのウェアラブル端末はその名前の通り,あるいは「血圧計」と名に冠している通り,循環機能のフォローアップにその特徴がありそうです。,
値段・発売時期
値段:87,800円(税込) 発売時期:2019年12月〜
機能
以下の様な測定項目がありますが,特に血圧計があると言う点に特徴があると言えそうです。日本高血圧学会発行の「高血圧治療ガイドライン」にて使用が推奨されているオシロメトリック法による血圧測定を25mmの独自のカフ構造により可能にしているようです。
- 血圧
- 脈拍数
- 歩数
- 歩行距離
- 消費カロリー
- 睡眠
- 服薬時間リマインド
- 専用アプリ「Heart advisor」によるデータ管理
- 健康アプリ「OMRON connect」とのデータ連携
論文数
Pubmedで検索したところ,Heart Guideの絡む論文件数は4でした。
参考
https://www.healthcare.omron.co.jp/product/hem/hcr-6900t-m.html
まとめ
以上に見てきたように各社ごとに様々なウェアラブルデバイスを推し進めていますが,これらを見る際にはiPoneとの連携機能という強みを活かして圧倒的シェアを誇るApple watchに対して,各社がどのような差別化を取っているのかと言う視点があると面白いです。
例えば,Omronは「血圧」という所に焦点を当てて,血圧の測定が出来ると言う点で他者にはない特徴を備えたウェアラブルデバイスを作っています。また,Xiaomiは低価格を実現するために限られた測定項目からいかに多くの機能を作り出すかという点で勝負をしています。
このように,特定の利用者のニーズに特化した様々なウェアラブルデバイスが今後も出現してくるのではないでしょうか。
IDCののレポートでは,「the wearables market has benefited from COVID-19 as many vendors have seen an uptick in services.(多くの企業のサービスが増加したように,ウェアラブルデバイスはCOVID-19の恩恵を受けた)」とされており,COVID-19の影響下において,外出自粛の生活を強いられる中で個々人が自らのヘルスケアに関与していく必要が生じたことを受け,ウェアラブルデバイスの需要は格段に上がったと考えられます。
また,同レポートでは「(2020第2四半期を指して)Hearables* grew 32.6% and accounted for 60% of all wearables during the quarter. (ヒアラブルデバイスが32.6%成長し,この四半期においては60%のシェアを占めていた。)」との報告がされており,これまで主軸をはってきた時計・リストバンド型ウェアラブルデバイスだけでなく,新しい型のウェアラブルデバイスの参入も期待されるところと言えるでしょう。