「未来の医療をつくる」Medical DAO独占取材~Medical DAOが挑む、理想の医療への挑戦~

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「未来の医療をつくる」Medical DAO独占取材~Medical DAOが挑む、理想の医療への挑戦~

前回の記事では、海外で実際にヘルスケア業界でDAOが導入されている例を挙げた。
本記事では、日本初のヘルスケア業界のDAO組織を目指す"Medical DAO"(HP:https://lit.link/MedicalDAO)を取り上げる。Medical DAOのfounder(Twitter:https://twitter.com/Dr_S000)に独占取材し、プロジェクトの今とこれからについて語ってもらった。

Medical DAOとはどんなプロジェクトか?

「未来の医療をつくる」Medical DAOでは350名以上のメンバーが集まる

Medical DAOのビジョンは、明確に一つ。「未来の医療をつくる」

このビジョンをもとに、9月中旬時点で350名以上の医師、看護師、理学療法士など医療従事者、弁護士やクリエーターなどその他業界の多種多様なメンバーが集まっている。

将来的にMedical DAOの意思決定に参加するために必要なNFT「MedicalDAO Innovators」は毎回即完売を繰り返し、ついに最低販売価格も0.2ETH(9月中旬時点およそ¥42,000)となった。

NFTを保有していなくても「未来の医療をつくる」という共通をビジョンを有するなら誰でもDAOに参加し、新しくプロジェクトを自由に立ち上げることも可能だ。

Medical DAOは日本初のヘルスケア領域のDAOを目指している

Medical DAOのプロジェクトは2022年初旬に始まった。

2022年4月に順天堂大学とIBMがメタバースを用いた医療サービス構築「順天堂バーチャルホスピタル」に向けての共同研究を開始するという報道がweb3.0を絡めたヘルスケアの例として大きな話題となった。(順天堂大学PR

そんな医療業界にweb3.0の風が吹き込み始めた2022年初旬ではあったが、当時国内にヘルスケアでDAOを目指している団体はなく、まずは完全な自律分散型の組織ではなくビジョンに賛同してくれる人とプロジェクトを動かす資金を集めるためのコミュニティとして"Medical DAO"を作ったことが始まりだ。

Medical DAOのコミュニティで行われていること

Medical DAOのコミュニティには以下のようなメリットがある。

  1. 職種フラットに自由な発言ができるコミュニティであること
    Medical DAOのdiscordコミュニティでは日々活発な議論が繰り返されているが、誹謗中傷のコメントなどはなく、職種に優劣なくフラットなコミュニケーションが行われている。
  2. 医療業界の各職種が解決したい課題を議論できる場所があること
    医療業界の多職種・業種のメンバーそれぞれが独自の立場から医療を問題視し解決したい課題を抱えている。医療業界では職種により役割がはっきり分担されている中、それらをオープンに話し、議論や相談できる場は貴重である。
  3. 非医療従事者メンバーともアイデアを深める環境であること
    医療従事者だけではなく、「未来の医療をつくる」ビジョンに共感した他業種の人材が集まる。医療業界は狭い世界と頻繁に言われる中で、普段関わることのない職種の方と共創する場には大きな価値がある。
  4. DAO発のサービスが自律分散的に生まれる環境が整っていること
    上記のように、「未来の医療をつくる」というビジョンを有するなら誰でもDAOに参加し、NFTを保有していなくても新規プロジェクトを自由に立ち上げることが可能である。

現状の課題とこれから描くロードマップ

Medical DAOという名前だが、まだDAOではない

DAO組織の本質は「共通の目標のために働く、志を同じくする個人の集まり」である。その意味では、「未来の医療をつくる」ビジョンをもとに集まっている集団はDAOとも言えるかもしれない。

ただ、DAOはDecentralized Autonomous Organization(分散型自律組織)の名前の通り、人の意志や努力とは無関係にブロックチェーン技術を用いてプロトコルだけで動き意思決定されていくはずである。

"Medical DAO"で進んでいるプロジェクトやNFTの販売などの意思決定はFounderが行なっており、現状のままでは「未来の医療をつくる」というビジョンに共感した中央集権的なコミュニティである。

Medical DAOは2022年内に"Investment DAO"を目指す

上記のように、DAO組織の形をとっていない現状のMedical DAOは、”Investment DAO”を目指すことで、非中央集権的な組織にするを目標としている。

”Investment DAO”とは、一言で言えば投資ファンドのようなものである。
ただ、従来のように投資先をファンドマネージャーが決めるのではなく、ガバナンストークンをもつメンバー全員で投票して、DAOに集まった資金の投資先を決める仕組みになっている。

今openseaで売られているNFT所有者が1人1票持ち、どのプロジェクトにどれだけ資金提供するか、プロジェクトの方向性をどうするか投票で決めていく。この投票システムを年内に導入することがもっぱらの目標だ。

日本のDAOで実際に分散化してInvestment DAOの形で資金提供しているDAOはなく、もし導入できたら医療業界だけではなく、全業界を通して国内初事例となり得る

web2.0のような短期目線のプロジェクトが多いが、長期的には患者の「医療自体の所有」を目指す

Medical DAOはweb3.0をうたっている反面、前回記事で述べたようなVita DAOやLab DAOのようなブロックチェーン技術を用いたweb3.0特有のプロジェクトはなく、あくまでweb1.0やweb2.0の延長線上の短期プロジェクトが多い印象を受ける。

分散化が特徴のweb3.0の本質は、ユーザーベースで見ると「所有」にある。医療業界に当てはめると、患者が「医療自体を所有する」と「医療情報を所有する」ことのどちらにも可能性がある。

そんな中Medical DAOが目指す方向性は、医療業界の構造上、立場が弱いとされる患者が「医療自体を所有」する未来である。今後のどんなプロジェクトが進んでいくが楽しみだ。

DAOの法規制に対処するため海外進出までも視野に入れる

日本では現在、DAOの法的位置付けについて明確な規定がない。資金調達のためにに行うガバナンストークンの発行自体もその法的性質や権利など法令で定められていない。DAOの運営にあたり法律とのせめぎ合いは切っても切り離せない。

現状の法律のままでMedical DAOを理想のDAO組織として機能させる場合、将来的に国内で運営していくのは厳しいと言う結論になっている。ただ、DAO組織が認可されているアメリカの一部の州やドバイ、エストニアにいきなり行くのはハードル高い。まず現実的に、地道なステップを踏んで、日本国内でコミュニティとして大きくしていくことが今は大事だと語る。

Medical DAOでプロジェクトとして走らせる際には、毎回メンバーである弁護士に法規制に関してアドバイスをもらい、実現可能性など踏まえ検討することで法律の一線を超えないよう対処している。法規制への対応の面でも、抜かりがない。

今、どんなプロジェクトが動いているのか?

Medical DAOでは、NFTを保有していなくても誰でもプロジェクトを立ち上げることができる。
そのため、数ヶ月前から進むものから直近で始まったプロジェクトまで様々あるが、今回は中でも活発にすすんでいるプロジェクトをピックアップした。

医療データ管理

このプロジェクトは、今回の独占取材に答えてくれたfounderである@shumonがリーダーとして進めるプロジェクトである。

今の医療データの管理では、「サイロ化」という明確な問題点がある。サイロ化とは、データがさまざまな組織ごとに分散し、お互いのデータを活用できない状態を指す。例えば、医学研究に用いられるビッグデータは保険診療に紐付けられた登録データを用いておこなうことが一般的である一方,患者の保険の変更や患者の移動によって関連付けられなくなり、いわゆる欠損データが増えてしまう。

ブロックチェーン技術の改ざんの難しさや追跡可能性により、縦断的にデータ管理できるようになる。
医療ブロックチェーンの開発を進めるhashpeak社のHPによると、医療データ管理にブロックチェーンが使われることの具体的なメリットとして以下の4点があるとされる。

  1. 医学研究にかかる期間の短縮化と費用削減
  2. 患者の生活習慣データの活用による研究テーマの広範化
  3. 多施設研究の容易化によるより高度なエビデンス創出活動の拡大
  4. ブロックチェーン技術で登録後のデータ改竄の可能性がほぼゼロになる

本来は胎児期から老年期までの医療データを本人が持っている状態が理想であるが、現在は、胎児のデータは保険診療上母体のデータとして紐付けられてしまう。ブロックチェーン技術を用いることで、本人がデータを持つとか持たないを判断する能力がない時期からでも、ちゃんと本人が自分のデータを持てるようなシステムができるかもしれない。

医療ai部屋 

医療者向けのAIを学習するコンテンツが不足していることを課題とし、医療者向けのAI初心者学習サービスを提供するプロジェクトである。医療従事者でAIを知ってる人材を増やすことを目的に、医療におけるAIについて動画配信から始め、本では学べないデータの作り方や基礎の重要な知識を学べるカリキュラムを提供する予定である。

コミュニティ内の検定やコンペの開催、学習のステップごとのNFT発行など学習することで実績化できる学習コンテンツの仕組み作りも検討されている。

また、このプロジェクトには様々なメンバーが参加しており、情報共有の場にもなっている。参考として、これまで議題に上がり情報共有されている例をいくつか挙げる。
全て私見の情報であるため決してエビデンスは高くなく、読者の方々もあくまで参考程度とすることに注意が必要である。

議論されているテーマ例

  1. 医療AIの多くは,補助がメインである
    臨床情報によって構築されたデータベースをもとに解析し、XX%の確率でYYとsuggestしてくれるようなものが多い。
  2. 消化器領域では、内視鏡の胃カメラ・大腸カメラ領域がすすんでいる
    内視鏡画像からリアルタイムに、「ここに早期癌がありそう」と”suggest"したり、ポリープの表面構造から悪性らしさを""suggest""したり、といった支援がすすんでいる
  3. 手術領域では、術者への警告機能がすすんでいる腹腔鏡画像から、「この先に〇〇動脈があるはず」や「もう少し切りすすめると前立腺である」といったアラート機能のような支援がすすんでいる
  4. 術者の操作をAIが分析が資格認定医師の負担を軽減させるかもしれない術者の操作をAIが分析し習熟度や手術の完成度を判定するなどで資格認定制度に応用して資格認定医師の負担を軽減したりする可能性も考えられている
  5. 麻酔のAIは意外と進んでいない?株価予測をはじめとするFinTechとも少し被るところがあるとされている。時系列データであり、出血などのイベントも絡むと結構複雑で意外と難しいのではないか。

なにそれクリニック@harucan

本プロジェクトは、実際に2022年12月1日に開業予定の医師が薦めるプロジェクトである。
新しくクリニックを立ち上げる時に開業までの流れや開業後の様子を閲覧することができると面白いのではということで始まった。NFTを通してクリニック開院・経営の共有体験・情報交換が可能となっており、閲覧に必要な専用のNFTは、直近9/15から発売開始されている。
(https://lit.link/NaniSoreClinic

メタバース講演会

医学系の学会でもメタバース空間で開催され、講演会でもメタバース空間で開催されるものが増えてきた。

今後ヘルスケア領域のweb3を語るMedical DAOにとっては、メタバース空間も大きなトピックになる。「メタバースには慣れていない医療従事者にメタバースに触れるきっかけを作る」ことや、「今後MedicalDAOに参加することの楽しみ/ユーティリティの一つとして定期的な講演会の開催などできないか?」などを視野に入れ立ち上がったプロジェクトである。

2022年9月15日に第一回目として開催されたクラスターでの講演会には、総勢160名以上の参加者が集まった

健診プロジェクト

このプロジェクトは、「病気の治療以上に予防が大事である」という考えのもと、健診受診率向上を目指し日本の健康に寄与することを目標とする。まずはどこに問題があるかを洗い出しすべく、 ヒアリングを行ない課題の抽出を行う予定である。
まずは乳がんや子宮がんの受診率向上に向けた施策として、女性がんに絞って行なう方針である。

アパレルプロジェクト

本プロジェクトは、研修医が同僚メンバーでスクラブを作るように、Medical DAOのスクラブを作るプロジェクトである。
NFTに触れたことのない人にもオフラインでMedical DAOの思想やビジョンを伝えることを目的としている。

不妊治療プロジェクト

男性不妊のリテラシーが高くないことを課題として捉え、NFTとLINEチャットや検査キットを組み合わせることで男性不妊の治療につなげるプロジェクトである。

「ミライの医療をつくる」Medical DAOに今後注目である

プロジェクトが開始してからまだ半年にも関わらずdiscordメンバーは350人を超え、メンバーもここから益々増えていくだろう。本気で「未来の医療をつくる」ビジョンを叶える土壌ができつつある。

課題の山積するこの医療業界で、現場目線から若手医学生が挑戦するこのプロジェクトの影響は医療業界だけに止まらない。今後、注目が集まることは必須だと考える。

このプロジェクトに参加したい方に向けて、以下にdiscordのリンクを掲載しておく。

京都府立医大6年生。アイリス株式会社のインターン業務、USCPA受験、研究室で論文執筆など医ンタープレナーとして楽しい日常を送ってます。趣味は、F1観戦とサイクリング。グルテンフリー6年目です。(Twitter:@Ogu_Yasuhiro6、Researchmap:https://researchmap.jp/OGURA-Yasuhiro)