世界のメンタルヘルススタートアップ10選

投稿日

最終更新日

  • 産業医
  • 精神科

世界のメンタルヘルススタートアップ10選

メンタルヘルスサービスの活用の場は広がりつつある

  • 新型コロナウイルスの感染拡大で自粛生活が継続し、生活様式も大きく変わってきています。それに伴って、人とのコミュニケーション不足が顕在化し、孤独感やストレスを感じている人が増加傾向となっています。
  • 孤独感やストレスは精神疾患と密接な関係があり、社会問題である精神疾患の対応として重要です。加えて心疾患、認知症のリスク上昇なども関連があるとも言われており、メンタルヘルスケアは精神疾患以外でも重要です。
  • 企業目線で考えると、雇用や生産性の観点からもメンタルヘルスケアは近年ますます重要になってきています。
  • こうした問題に対応するため、オンラインセラピーを始めとしたサービスが注目されています。今回はメンタルヘルスケアに取り組むスタートアップについて紹介していきます。なお、メンタルヘルスケアへの資金調達額が日本企業<<中国<<アメリカのような構図になっているためアメリカ企業を中心に解説していきます。

ソリューションの分類

ざっくりと以下に分類可能です。

アプリケーション(音声、ビデオ通話、テキストなど使用)

  • マインドフルネス(ヨガ、瞑想)
  • 睡眠指導
  • コーチング
  • 呼吸法
  • ストレス解消
  • 臨床心理士へのアクセサビリティ改善のプラットフォーム
  • 臨床医へのアクセサビリティ改善のプラットフォーム
  • ゲーミングによる治療

デバイス

  • 経頭蓋直流電気刺激法(tDCS)による治療
  • 経頭蓋磁気刺激装置(transcranial magnetic stimulation:TMS)による治療
  • VR/ARによる治療

新規製剤

  • マジックマッシュルーム成分を利用した医薬品開発
  • カンナビノイド成分を利用した医薬品開発

マネタイズモデルの分類

ざっくりと以下に分類可能です。

  • B to Cアプリやデバイスによる顧客への直接関与(保険収載の場合は保険料を行政から)
  • B to C to C医療業界へのアクセサビリティ改善プラットフォーム(個人の心理士や開業医へ)
  • B to B to C医療業界へのアクセサビリティ改善プラットフォーム(保険会社や病院へ)
  • B to Bストレスチェックなどビックデータを用いた情報販売や解析
  • B to B(G) to E行政や企業の福利厚生などで社員や住人へ

Lyra Health

企業情報

Facebookの元CFOであったDavid Ebersman氏によって2015年にカリフォルニア州にて設立されています。「人々が質の高いヘルスケアを迅速に見つけられるよう支援する」ことをビジョンに掲げています。 事業としては企業の従業員と、セラピストやメンタルヘルスコーチなどをつなぐデジタルプラットフォームを提供しています。契約企業の従業員は、1対1のビデオセッションや、認知行動療法(CBT)をベースとしたチャットエクササイズ、進捗状況の定期的なモニタリング等を遠隔で受けることができます。 

実績

「Journal of Medical Internet Research」で発表された研究によると、385人の患者を対象に5回度のLara Healthによるセッションを行なった後で不安や抑うつ症状が減少したことが記録されています。さらに同研究において、Lara Healthの遠隔療法モデルが標準的な治療より12~16週間早く結果を出す可能性があることも示唆していると報告しました。同社ではCOVID-19以降80万人以上の新規会員が増加しています。資金調達において、2020年8月25日に1億1,000万米ドルのシリーズDラウンドの調達を完了したことを発表しています。今回の調達はAdditionが主導し、Adams Street Partners、Starbucksの元CEO、Howard Schultz氏、Casdin Capital、などの既存の投資家が参加していました。3月に完了した7,500万米ドルのシリーズCラウンドに続く調達となり、同社はこれまでに約2億7,500万米ドルを調達しています。2020年12月にはシリーズEで1億7500万ドル(約180億円)の資金調達を行なった可能性が報道されています。

【参考資料】

Talkspace

企業情報

2012年にニューヨーク州でOren FrankとRoni Frankによって設立されました。「より多くの人々がより幸せで健康的な生活を送るために、資格を持っている人々とのアクセスを円滑にすること」をミッションとしています。Talkspaceが提供しているサービス価値はメンタルヘルスの患者が臨床医やセラピストと繋がり、ケアや診察を受けることができるバーチャルなプラットフォームです。専用のアプリで完結するリモートケアで、ユーザーは専任のセラピストにテキスト、ビデオ、音声メッセージをいつでもどこからでも送信したり、ライブビデオセッションに参加することができます。

実績

2021年5月の時点で、B to Cとしては200万人以上がTalkspaceを使用しており、保険や従業員支援プログラム、その他のネットワーク行動医療給付プログラムを通じて、5500万人以上が使用していると推定されています。B to BではGoogleやAccentureなど70以上の企業がクライアントとなっています。2021年6月にバーチャルメンタルヘルスケアの会社としては初となるナスダダックに上場も果たしています。BMC Psychiatry やJournal of Technology in Behavioral Scienceなど査読付きの論文を10件以上学術報告し、コロンビア大学やマウントサイナイ医科大学など15以上の研究機関と共同研究も行なっております。

【参考文献】

Eco Fusion

企業情報

2015年にイスラエルのTel AvivでOren Fuerst氏によって設立されました。「一般的な慢性疾患、精神疾患などに対するスケーラブルなサービスを提供することでヘルスケアを変える」をミッションとしています。Eco Fusionが提供しているサービスはAI主導のパーソナライズされたストレス軽減アプリSerenitaです。Serenitaは、スマホカメラをバイオセンサーとして使用してストレスレベルを測定し、個別の呼吸ガイダンスを提供します。

実績

Journal of Medical Internet Researchでの学術論文報告があります。資金調達やユーザー実績などについてはホームページ上での検索ではわからなかったです。

【参考文献】

PEAR Therapeutics

企業情報

PEAR Therapeuticsは、アメリカ合衆国のマサチューセッツ州ボストンにて、2013年にCorey McCann、Stephen Smith、William Greeneによって設立されたデジタル治療処方(prescription digital therapeutics:PDT)を提供するバイオテクノロジーおよびソフトウェア会社です。PEAR Therapeuticsが作成したデジタル治療処方は、精神疾患や神経疾患などにおけるソフトウェアベースの治療となっています。具体的には薬物使用障害や慢性不眠症における治療用アプリケーションが現在サービスとして利用可能です(reSET®︎とSomryst®︎)。食品医薬品局(FDA)からデジタル治療処方において承認を受けた世界初の企業でもあります。

実績

薬物使用障害や慢性不眠症における治療用アプリケーションとしてFDAの認可を得ております(reSET®︎とSomryst®︎)。これら認可の根拠として、JAMA PsychiatryやLancet Psychiatryなどで多数の学術報告を行なっております。2020年12月には8000万ドルの「シリーズD」資金調達ラウンドを行なっており、日本のソフトバンクグループ投資ファンド「ビジョン・ファンド2」も主導しています。2021年2月に追加で2000万ドルの資金調達を行い、シリーズDの総投資額は1億ドルになっています。

【参考文献】

Neuronetics

企業情報

Neuroneticsは、ペンシルベニア州Malvernにて、2004年に設立された経頭蓋磁気刺激装置(transcranial magnetic stimulation:TMS)のNeuroStar®を提供するナスダック上場企業です。Keith J. SullivanがCEOを務めており、「Renewing Lives by Transforming Neurohealth」をミッションとしています。

実績

経頭蓋磁気刺激装置(transcranial magnetic stimulation:TMS)であるNeuroStar®は臨床試験に裏付けされ、薬物治療抵抗性のうつ病に対するTMS治療において、FDAから初めてにして唯一の認可を受けています。これら認可の根拠として、J Clin PsychiatryやArch Gen Psychiatryで多数の学術報告を行なっております。2018年6月にナスダック取引所に上場を果たしています。

【参考文献】

Modern Health

企業情報

Modern Healthは、カルフォルニア州サンフランシスコにて、2017年にAlyson Watsonによって設立された会社です。企業向けに従業員のメンタルヘルスを守るためのアプリを提供しています。競合のTalkspaceが主に個人を顧客とするのとは異なり、Modern Healthは企業顧客にサービス提供を主にしています。具体的にはアプリ内で瞑想や音声セラピーなどのデジタルコンテンツの提供を行なったり、コーチングや専門家によるセラピーが行えます。

実績

同社のツールは60ヶ国以上で利用可能で、Pixar、Nextdoor、Gitlab、Rakutenなどの企業も導入しています。同社は2020年01月のシリーズB資金調達で、総額3100万ドルの資金調達をしています。CEOはForbes Under 30およびFortune Under 40リストに選出されています。

【参考文献】

Unmind

企業情報

Unmindは、イギリスのロンドンにて、2016年にNick Taylorによって設立された会社です、企業向けメンタルヘルス改善プラットフォームを提供しています。従業員のメンタルヘルスを改善するためのツールやトレーニング、精神状態アセスメント、ストレス発散や睡眠改善の特別なプログラムが内蔵されています。

実績

マークス・アンド・スペンサー、米ウーバーテクノロジーズ、韓国サムスン電子、英金融大手TSB、英航空大手ブリティッシュ・エアウェイズなど顧客企業は100社にのぼっています。2021年にはシリーズBで4700万ドルの資金調達を行なっています。

【参考文献】

ginger

企業情報

2011年にカルフォルニア州サンフランシスコにてマサチューセッツ工科大学からスピンアウトする形で、Russell GlassとKaran Singhによって設立されました。「We’re reinventing mental healthcare by coupling data science and virtual delivery to provide immediate, personal support for anyone.」をミッションとしています。Gingerは、データサイエンスと仮想配信を組み合わせて誰にでも即座に個人ごとにサポートが提供されるスマートフォン向けのアプリケーションサービスを展開しています。24時間年中無休で簡単にアクセスし、gingerのチームと接続できることが特徴です。  

実績

現在、cheggやBuzzFeedなど多くの企業で導入されています。2020年夏頃にシリーズDラウンドで5000万ドルの資金調達に成功したことが報道され、累計調達額は1億2000万ドル(約127億円)になっています。

【参考文献】

Ybrain

企業情報

2013年に韓国にて、Kiwon Leeによって設立されました。大うつ病性障害(MDD)などの精神疾患を治療する経頭蓋直流電気刺激法(tDCS)をベースにしたウェアラブルデバイスを構築し、現在韓国で臨床試験を継続しています。ミッションは「革新的な脳科学ソリューションサービスの提供」となっています。

実績

上記写真のデバイスが、臨床試験を経て、韓国食品医薬品安全庁(KMFDS)によって今年度クラスⅠの認可を得ています。今後はFDAへも申請予定です。検索できる限りでは、総資金調達額は2015年が最後で合計410万ドルとなっています。

【参考文献】

Calm

企業情報

2012年にカリフォルニア州サンフランシスコにてAlex Tew & Michael Acton Smithによって設立されました。「To make the world happier and healthier」をミッションとして掲げています。サービスは睡眠・瞑想・リラクゼーションを手伝うアプリケーションを手がけています。

実績

Calmのコンテンツは190ヵ国、7ヵ国語で視聴可能となっています。シリーズCの資金調達で7,500万ドルを調達し、企業評価額が20億米ドルに達したことを2020年12月に発表しています。1億回以上のダウンロード回数を有し、2017年にAppleの年間ベストアプリ賞を受賞しています。

【参考文献】

まとめ

  • 以上、具体的にいくつかのスタートアップを見てきました。
  • コロナウイルス流行が終わっても、高齢社会や核家族化が進む現代においては、今後ますますメンタルヘルスケアの需要は高まってくることが予想されます。
  • 類似サービスも出てきおり、世界の企業間では差別化のステージが始まっている分野もあります。
  • 今後の発展のためにも、日本企業は先行する海外の事例を参考にしつつ、日本らしさを生かした発展があることを期待しています。

脳神経内科医師。予防医療(神経、宇宙、死生観、生活習慣病)が最大の関心事。 産官学民で力を合わせて持続的に楽しく、社会課題の解決ができればと夢見ている。 好きな食べ物は小豆(粒あん派)と果物サラダ。 学生時代に100kmマラソンとガンジス川でのバタフライを友人と達成している。